満員電車の揺れに身を任せていると、ふと思うことがあります。
「私の人生、誰かが適当にサイコロを振って決めてるんじゃないの?」って。
隣のおじさんの新聞が肩に当たる不快感も、今夜の夕飯を何にするかという悩みも、全ては不可避な「運命」なのか、それとも私の「選択」の結果なのか。
おはようございます、あるいはこんばんは。
2025年11月。
世界は相変わらず混沌としていますが、今日はそんな現実から少し離れて、もっと混沌とした、それでいてどこか愛おしい世界へ皆様をご案内します。
そう、発売から10年が経ってもなお、色褪せるどころか輝きを増し続ける『ウィッチャー』の世界です。
新作『Project Polaris』の足音が聞こえてくる今だからこそ、改めてこの物語の「深淵」を覗き込む必要があります。
ただのあらすじ解説?
いえいえ、そんなものはAIに任せておけばいいんです。
ここでは、一人の人間として、妻として、親として、そしてゲーマーとして、ゲラルトの記憶喪失の裏にある心理的メカニズム、シリを縛る「運命」の哲学的正体、そして開発者がひっそりと隠した狂気的な裏設定まで、徹底的に、そしてねちっこく解剖していきます。
この記事は、こんな「呪い」にかかっているあなたに捧げます
- 『ウィッチャー3』をクリアしたけれど、
「結局、あの白い霜って何だったの?」
「ゲラルトはなんで記憶喪失だったの?」
と、ストーリーの核心部分でモヤモヤしたまま過ごしていませんか? - ネット上の考察記事を読んでも、「原作では~」「ゲームでは~」と情報が錯綜していて、結局どれが正史(カノン)なのか分からず、混乱してブラウザを閉じた経験はありませんか?
- 膨大なサブクエストや隠し要素を前に、「本当に重要な伏線を見落としているんじゃないか」と不安になり、ゲームを100%楽しみきれていないような焦燥感を感じていませんか?
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その悩み、ウィッチャーの世界構造そのものが原因です

正直に言いますね。
このシリーズ、話が複雑すぎます。
原作小説、ゲーム三部作、Netflixドラマ……
それぞれが微妙に違う「正義」と「設定」で動いているんですから、混乱するなという方が無理な話です。
特に最近は、ネット上に浅いまとめ記事や、AIが書いたような無味乾燥な攻略情報が溢れていて、本当に知りたい「物語の魂」に触れることが難しくなっています。
「アルヴィンの正体」や「ゴウンター・オーディムの本質」を知らずにウィッチャーを終えるなんて、高級フレンチに行って前菜だけ食べて帰るようなものですよ。
私が案内する理由(ちょっとした自己紹介の代わりに)
私は、この『ウィッチャー』という世界に、人生の貴重な時間の多くを捧げてきました。
原作小説の行間を読み解き、ゲームのマップの端から端まで歩き回り(ローチ、ごめんね)、開発者のインタビューを翻訳ツール片手に読み漁る……
そんな生活を10年以上続けています。
主婦業と仕事の合間を縫って、これだけの時間を費やした情熱(という名の執念)は、そこらへんのポッと出の攻略ライターには負けません。
複雑怪奇なウィッチャーの年表も、私の頭の中では、息子の学校行事スケジュールより整理されていますから安心してください。
この記事であなたが手に入れる「剣」
この記事では、以下の内容を徹底的に、かつ噛み砕いて解説します。
- 完全時系列の整理
原作・ゲーム・映像作品を統合し、どこが繋がり、どこが矛盾しているのかをクリアにします。 - 記憶喪失の全貌
ゲラルトが失っていた「空白の5年間」に何があったのか、トリスやイェネファーとの関係性の裏側にある心理を暴きます。 - 「運命」の正体
抽象的な概念ではなく、具体的なシステムとしての「運命」と、それに抗うキャラクターたちのドラマを紐解きます。 - 深層の裏設定
ゲームを普通にプレイしているだけでは絶対に気づかない、開発者が隠した衝撃の真実(アルヴィン=グランドマスター説など)を解説します。
読了後、あなたの世界は変わります
この記事を読み終えた時、あなたは単なる「ゲームプレイヤー」から、
「ウィッチャー世界の真の理解者」
へと変貌を遂げているはずです。
断片的な情報に振り回されることなく、ゲラルトたちの台詞一つ一つに込められた重みを感じ取れるようになるでしょう。
そして来るべき新作『Project Polaris』を、10倍、いや100倍深く楽しめる準備が整います。
もう、「よく分からないけど雰囲気で楽しんでる」なんて言わせません。
準備はいいですか? 銀の剣を抜いてください
さあ、これから長い旅が始まります。
この記事を最後まで読めば、あなたは必ず、この物語の全ての謎を解き明かし、本当の意味での「エンディング」にたどり着くことができます。
トイレ休憩は済ませましたか?
コーヒーは淹れましたか?
それでは、ケィア・モルヘンの城門を開け放ちましょう。
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第1章:ウィッチャー世界の「時間」と「現実」マルチバースという名の混沌

まず最初に、私たちが足を踏み入れようとしている「大陸」の地盤調査から始めましょう。
ここを理解していないと、後々の考察で確実に迷子になります。
ウィッチャーの世界は、一枚岩の歴史ではありません。
原作小説、ゲーム、ドラマという、それぞれ異なる解釈(カノン)が並行して存在する、まるでミルフィーユのような多層構造を持っています。
1-1. 「天体の合」:すべての元凶にして始まり
この世界の悲劇も、奇跡も、すべては約1500年前に起きた
「天体の合(Conjunction of the Spheres)」
から始まります。
これ、簡単に言うと「宇宙規模の玉突き事故」です。
異なる次元の世界同士がガチャンと衝突し、無理やり融合してしまった。
その衝撃で、本来この世界にいなかったものが大量に流れ込んできました。
- グールや吸血鬼、グリフィンといった「怪物」。
- 「混沌」と呼ばれる、世界を書き換える魔法のエネルギー。
- そして、私たち「人間」です。
ここ、テストに出ますよ。
この世界において人類こそが「エイリアン(侵略的外来種)」なんです。
もともと住んでいたエルフやドワーフたち(古き種族)からすれば、人間はある日突然やってきて、ものすごい繁殖力で世界を我が物顔で支配した、迷惑極まりない存在です。
彼らにとって人間は、生態系を破壊するウシガエルのようなものでしょうか。
そしてウィッチャーとは、この「人間」が、同じく外来種である「怪物」に対処するために、
「毒をもって毒を制す」
という無茶苦茶な論理で作り出した変異体です。
人間を守るために作られたのに、その変異ゆえに人間から差別され、忌み嫌われる。
「守ってやってるのに石を投げられる」
なんて、ブラック企業の社員でももう少し扱いはマシかもしれません。
この根本的な「居場所のなさ」や「矛盾」こそが、シリーズ全体に漂う、あの独特の哀愁とシニカルな空気感の正体です。
1-2. 三つの並行世界(カノン)を整理する
混乱を避けるために、ウィッチャーには3つの異なる「正解」があることを理解しておきましょう。
これらはパラレルワールドのようなものです。
1. 原作小説(絶対的聖典)
アンドレイ・サプコフスキ先生による原点にして頂点。
1240年代から1268年の「リヴィアの虐殺」までを描きます。
ここでのゲラルトは、ゲームよりもずっとお喋りで、哲学的で、そして常に金欠に苦しんでいます。
テーマは「運命の皮肉」と「家族の喪失と再生」。
サプコフスキ先生の皮肉屋な性格が色濃く反映されています。
2. ゲームシリーズ(拡張された正史)
CD PROJEKT RED(CDPR)が、原作への深い愛とリスペクトを持って作った「その後」の物語。
1270年のゲラルト復活から1275年のトゥサンでの隠居まで。
テーマは「主体性(Agency)」と「父性の確立」。
プレイヤーが選択するという構造上、原作よりも「運命を切り開く意志」が強調されます。
正直、原作よりもゲラルトがイケメンになっています(中身も外見も)。
3. Netflixドラマ(再解釈された並行世界)
原作をベースにしつつ、現代的な視点や独自の時系列を取り入れた別ユニバース。
シーズン1の時系列シャッフルで視聴者を混乱の渦に叩き込んだり、ヘンリー・カヴィルからリアム・ヘムズワースへの主役交代劇があったりと、現実世界でのドラマも事欠きません。
今回、私たちが深く掘り下げるのは、物語の密度が最も濃く、多くのファンが「真実」として愛してやまない
「原作からゲームへ至る流れ」
です。
この一本道を歩くことで、見えてくる真実があります。
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第2章:ゲラルトの記憶喪失と「空白の5年間」タブラ・ラサの功罪

ゲーム『ウィッチャー1』の冒頭、ゲラルトは記憶喪失の状態で、パンツ一丁(に近い姿)で発見されます。
「記憶喪失なんて、昼ドラの使い古された設定でしょ?」
と思いましたか?
甘い、甘いです。
岩トロールのスープくらい甘い。
この記憶喪失には、もっと深い、実存に関わる意味があるんです。
彼が行方不明だった1268年から1270年の間に何があったのか。
ここには、涙なしでは語れない壮絶なドラマが隠されています。
2-1. リヴィアでの「死」とアヴァロンの幻影
時計の針を1268年9月に戻しましょう。
場所はリヴィア。
非人間族(エルフやドワーフ)に対する人間の暴動、いわゆる「リヴィアの虐殺」が発生しました。
常に「中立」を謳ってきたゲラルトですが、友人のドワーフたちを守るために剣を抜きます。
しかし、暴徒の数は圧倒的でした。
伝説の剣士、白き狼リヴィアのゲラルトは、名もなき農民が放ったピッチフォーク(ただの農具ですよ? 干し草を刺すやつです)によって胸を貫かれます。
ドラゴンを狩り、吸血鬼を退けた英雄が、パニックになった群衆の前では無力に散る。
この残酷なリアリズムこそがウィッチャーの本質です。
駆けつけた恋人イェネファーは、致命傷を負ったゲラルトを救おうと、自らの生命力を削って禁断の蘇生魔法を行使し、そのまま力尽きました。
二人の英雄は、ここで一度「終わった」のです。
しかし、そこで奇跡が介入します。
時空を超える「古き血脈」の力を持つ娘、シリが現れ、瀕死の二人を霧の向こう側へと運び去りました。
彼らが辿り着いたのは「アヴァラックの島」。
アーサー王伝説でいうところの「アヴァロン」です。
時間の流れが異なるその異界で、ゲラルトとイェネファーは傷を癒やし、つかの間の永遠を過ごしていました。
リンゴの花が咲き乱れる楽園で、二人だけの世界。
政治も、差別も、怪物もいない。
ある意味、これが最高のハッピーエンドだったのかもしれません。
そのままそこで暮らしていれば、よかったのに。
2-2. 魂の交換(The Trade):究極の自己犠牲
けれど、運命の神様というのは性格が悪い。
あるいは、物語を終わらせたくない誰かの意志が働いたのか。
異世界のエルフ「アエン・エル」の王であり、幽鬼の軍勢「ワイルドハント」の統率者エレディンが、シリの力を狙って島を襲撃しました。
シリをおびき寄せる「餌」として、イェネファーが拉致されたのです。
ゲラルトは恋人を取り戻すため、楽園を捨てて異次元を渡り歩く修羅の道へ戻ります(1269年頃)。
想像してみてください。
一度死んで、やっと手に入れた安息を、愛する人のために投げ打つ男の背中を。
最終的に彼はワイルドハントに追いつきますが、軍勢相手に勝てるわけがない。
そこでゲラルトは、究極の取引を持ちかけます。
「彼女を放せ。代わりに俺の魂をくれてやる」
エレディンはこの取引に応じました。
イェネファーは解放されましたが、記憶を奪われ、ニルフガード帝国領内へと追放されます。
一方、ゲラルトはワイルドハントの騎行(Wild Hunt)の一員となり、自我を失った幽鬼として次元を彷徨うことになりました。
愛する人を救うために、自分自身を悪魔に売り渡す。
しかも、自分が誰であるかも忘れて、かつての敵の手先となって永遠に彷徨う。
これ以上の自己犠牲があるでしょうか?
この「幽鬼としての隷属期間」こそが、ゲラルトの人格と記憶を完全に粉砕した原因です。
脳みそがスクランブルエッグ状態になってしまったわけですね。
1270年、成長したシリが彼を救出し、こちらの世界へ引き戻してようやく解放されましたが、その代償として彼は「自分」を失い、完全な記憶喪失(タブラ・ラサ:白紙)となっていたのです。
2-3. トリス・メリゴールドの罪と罰、そして愛
ここで一つ、複雑な人間関係にメスを入れてみましょう。
記憶を失ったゲラルトにとって、それはある種の「救い」でもありました。
イェネファーとの複雑怪奇な愛憎(腐れ縁とも言う)、シリを失ったトラウマ、政治的なしがらみ。
それらが全てリセットされ、純粋な「怪物狩り」として生まれ変わったわけですから。
そこで登場するのが、女魔術師トリス・メリゴールドです。
赤毛の美しい彼女、プレイヤー人気も高いですが、同性として、あるいは既婚女性として見ると、彼女の行動はなかなかに「業が深い」と言わざるを得ません。
『ウィッチャー1』『2』において、彼女はゲラルトが記憶喪失であることを知りながら、かつての恋人イェネファーの存在や、養女シリとの関係を意図的に伏せました。
「ねえ、君にはイェネファーっていう、ちょっと怖いけど運命の相手がいるんだよ」
とは言わなかった。
その代わりに、献身的に彼を支え、恋人関係になりました。
これは彼女なりの深い愛情ゆえの行動でしょう。
「記憶のない新しいゲラルト」
となら、イェネファーの影に怯えることなく、一対一で愛し合えると信じたのかもしれません。
けれど残酷な見方をすれば、
「親友の恋人を、彼の障害につけこんで寝取った」
とも言えます。
昼ドラも真っ青の展開です。
『ウィッチャー3』で記憶を取り戻したゲラルトがトリスに向き合う時、そこに浮かぶのは感謝か、それとも欺瞞への怒りか。
プレイヤーである私たちが、この「空白の2年間」の献身と嘘をどう天秤にかけるか。
それが試されているのです。
愛とは、かくも身勝手で美しいものですね。
私だったらどうするかな……
夫が記憶喪失になったら、
「あなたは毎日掃除機をかけるのが趣味だったのよ」
って嘘をつくかもしれません。
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第3章:「運命」の正体それは呪いか、それとも愛の別名か

このシリーズを貫く最大のテーマ、「運命(Destiny)」。
登場人物たちは口を開けば「運命だ」「宿命だ」と言いますが、具体的にこの世界の運命とは何なのでしょう?
物理法則?
神の意志?
それとも脚本家の都合?
3-1. 「驚きの法」:逃れられない因果律の契約
ゲラルトとシリを結びつけた「驚きの法(Law of Surprise)」。
「命を救われた対価として、予期せぬものを差し出す(家に帰って最初に出迎えたもの、あるいは知らぬ間に家にあったもの)」という契約です。
これ、現代日本でやったら法的に完全にアウトですが、ウィッチャーの世界では絶対的な拘束力を持ちます。
シントラの王女パヴェッタの婚約の宴で、ゲラルトが夫ダニー(後のエムヒル皇帝)を救った際、軽い気持ちでこの法を要求しました。
その瞬間、まだ生まれていなかったシリとゲラルトの運命は、ガッチリとロックされてしまったのです。
原作を読むとわかりますが、ゲラルトは当初、この運命を徹底的に拒絶します。
「子供なんて育てられない」
「ウィッチャーにするなんて残酷だ」
と、シリから逃げ回るんです。
でも、逃げれば逃げるほど、運命はより残酷な形で二人を引き合わせようとします。
シントラが滅ぼされ、シリが孤児になり、ゲラルト自身も傷つき……
まるで
「お前ら、いい加減にくっつけよ」
と世界が強制しているかのように。
ここでの運命は、
「拒絶する者を暴力的に引きずり戻す引力」
として描かれています。
ストーカー規制法があったら捕まってますよ、運命さん。
3-2. "Something More":運命のその先にあるもの
しかし、サプコフスキとCDPRが導き出した結論は、もっと人間的で温かいものでした。
それが
「運命だけでは不十分である(Something More is required)」
という哲学です。
原作の短編『Something More』における再会のシーン。
ここでゲラルトは悟ります。
「驚きの法」という契約があるからシリを守るのではない。
「運命」だから一緒にいるのではない。
自分自身の意志で、彼女を娘として愛することを選んだのだと。
運命は二人を出会わせる「きっかけ(強制力)」に過ぎません。
二人が真の家族になれたのは、互いに互いを必要とした「自由意志」、すなわち「運命以上のもの」があったからです。
それはつまり、「愛」と「選択」に他なりません。
親が子供を愛するのは、役所に出生届を出したから(契約)ではありませんよね?
毎日顔を合わせ、世話を焼き、喧嘩をして、それでも大切だと思う「積み重ね」があるからです。
ゲラルトとシリの絆は、運命という土台の上に、彼ら自身の選択で築き上げられた城なのです。
これを理解すると、ケィア・モルヘンでの再会シーンが涙で霞んで見えなくなります。
3-3. 白き霜:不可避の終焉と、それに抗う意志
もう一つ、物理的な「運命」として立ちはだかるのが「白き霜(White Frost)」です。
これの扱い、原作とゲームで大きく違うのをご存知でしたか?
原作小説の解釈
白き霜は、惑星の地軸移動(歳差運動)による自然現象としての氷河期です。
これ、ただの気候変動なんです。
だから剣や魔法で倒せる相手じゃありません。
シリの力は、選ばれた人々を別の世界へ避難させる「箱舟」の扉を開くためのものでした。
人類はいずれ滅びる。
それは変えられない。
だから逃げるしかない。
非常にペシミスティックで、SF的な結末です。
ゲーム版の解釈(主体性の獲得)
一方ゲーム版では、白き霜は世界を侵食する
魔法的な災厄(あるいは別次元のエンティティ)
として再解釈されました。
『ウィッチャー3』の結末で、シリはこの嵐の中に飛び込み、自らの力で打ち砕きます。
なぜ変更したのか?
それはゲームという媒体が「プレイヤーの主体性」を重視するからです。
「どうせ滅びるから逃げよう」ではゲームになりません。
「運命(滅び)」に対して中指を立て、自らの手で未来を勝ち取る。
シリは「運命の被害者」から、「運命を書き換える英雄」へと進化したのです。
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第4章:深淵の知識(ディープ・ロア)開発者が隠した狂気

さあ、ここからは沼の底へご案内します。
酸素ボンベの準備はいいですか?
『ウィッチャー3』をクリアしただけでは気づかない、知ってしまうと背筋が凍るような「裏設定」の話をしましょう。
これを知っていると、2周目のプレイが全く違った景色に見えるはずです。
4-1. アルヴィン = グランド・マスター説:悲劇のウロボロス
『ウィッチャー1』最大の謎にして、最も衝撃的な伏線。
ゲーム中、ゲラルトは「アルヴィン」という魔力を持った孤児を保護します。
彼はシリと同じ「古き血脈」の力を持ち、制御不能なタイムトラベル能力を持っていました。
彼は物語の中盤、怪物への恐怖から能力を暴走させ、時空の彼方へ消えてしまいます。
一方、ラスボスである「炎の薔薇の騎士団」のグランド・マスター、ジャック・ド・アルデルスベルク。
彼は「白き霜による世界の滅亡」を幻視し、人類を救うためには強力な統制と非人間族の排除が必要だと信じ、狂った計画を実行する男です。
実は、
「過去に飛ばされたアルヴィンが成長した姿こそが、グランド・マスターである」
という説が、ほぼ公式の事実として扱われています。
証拠は揃いすぎています。
- ディメリティウムの首飾り
トリスがアルヴィンに渡した特注の魔力制御の首飾り。
これと全く同じデザインの、古びて摩耗した首飾りが、グランド・マスターの死体から見つかります。 - 言葉の鏡写し
グランド・マスターが最期に語る思想や台詞。
これは、幼少期にゲラルトがアルヴィンに説いた教え(プレイヤーの選択によって変化する!)が、長い時を経て歪んだ形で反映されたものです。
もしこれが真実なら、ゲラルトは自らが父のように慈しみ、教え導いた少年を、数十年後の姿とはいえ、自らの手で処断したことになります。
「世界を救うためには、少数の犠牲もやむを得ない」
……そんな冷徹な論理を教えたのは、他ならぬゲラルト自身だったかもしれないのです。
これは、運命の皮肉なんて言葉では片付けられない、あまりにも重い十字架です。
自分の息子が将来グレて悪の組織のボスになって、自分が倒さなきゃいけないとしたら……
想像しただけで胃が痛くなります。
4-2. ゴウンター・オーディムの正体:悪魔を超えた概念
DLC『無情なる心』に登場する「鏡の達人」ゴウンター・オーディム(Gaunter O'Dimm)。
彼のイニシャルはG.O.D.。
しかし彼は慈悲深い神ではありません。
彼は魔法使いでも、単なる悪魔でもない。
「純粋な悪の具現化」あるいは「拘束力のある契約そのもの」と考察されます。
彼は決して嘘をつきません。
ただ、契約の文言を一言一句正確に、そして残酷に履行するだけです。
「月の上でなら魂を奪ってもいい」
という契約に対し、相手を月が描かれた床の上に立たせて魂を奪う。
この屁理屈とも言える論理的残酷さ。
彼が時間を停止させ、スプーンを目に突き刺すシーンは、彼が物理法則の外側にいることを示しています。
ウィッチャーの世界観において、唯一ゲラルトが「剣」で倒せない存在。
彼を退けるには、暴力ではなく知恵と、契約のルールを逆手に取るしかありません。
彼は、私たちの社会における「理不尽な契約社会」や「逃れられない因果」のメタファーなのかもしれませんね。
契約書の小さい文字はちゃんと読まないとダメですよ、本当に。
4-3. オリアンナと「A Night to Remember」:約束された未来
DLC『血塗られた美酒』に登場する貴婦人オリアンナ。
彼女は孤児院を経営していますが、その実態は子供たちを「家畜」として扱い、血を吸う上級吸血鬼(ブルクサ)でした。
ゲーム内でゲラルトは、孤児院の子供たちが彼女に依存している事実と、急ぐべき事情から、彼女をその場では見逃す選択をします。
しかし、去り際にこう告げます。「いつかお前を殺しに来る」と。
ここで思い出してほしいのが、『ウィッチャー3』発売前に公開されたシネマティックトレーラー「A Night to Remember」です。
あの映像でゲラルトは、オリアンナと思われる吸血鬼(同じ子守唄を歌っています)と戦い、苦戦の末に勝利します。
つまり、あのトレーラーは単なる宣伝映像ではなく、「ゲーム本編のさらに未来の出来事」を描いたものだったのです。
ゲラルトは引退した後も、あの夜の約束(契約)を果たすために、老体に鞭打って剣を振るった。
ウィッチャーに本当の引退はないのかもしれません。
なんとも切なく、そしてハードボイルドな結末です。
4-4. ヴィヴィアンの「7年後」の死:魔法の対価
『血塗られた美酒』のキャラクター、鳥の呪いを受けたヴィヴィアン。
呪いを解く方法の一つとして「ウグイスの卵に移す」方法があります。
この際、ゲラルトは警告します。
「呪いは解けるが、寿命がウグイスと同じ(約7年)になるかもしれない」と。
ハッピーエンドに見えるこのクエストですが、実際にこのルートを選び、ゲーム内で瞑想機能を使って「7年分」の時間を経過させるとどうなるか。
スケリッジのイェネファーの部屋(または特定の場所)で、ヴィヴィアンが冷たくなっている姿が発見されます。
わざわざ7年分も時間を進めるプレイヤーなんて稀でしょう。
それでもCDPRの開発者は、この狂気的なまでのディテールを仕込みました。
「魔法には常に対価が伴う」。
ウィッチャー世界の鉄則は、どんなに時間が経っても絶対に曲げられないのです。
こういう執念じみた作り込みが、私がこのゲームを愛してやまない理由です。
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第5章2025年の視点から見る、新たなるサーガの予兆

2025年11月現在、ウィッチャーの世界は新たな局面を迎えています。
『ウィッチャー3』でゲラルトの物語は一応の完結を見ました。
コルヴォ・ビアンコの葡萄園で、彼は愛する人々と共に穏やかな余生を過ごしているはずです。
しかし、物語はここで終わりません。
新たなサーガ『Project Polaris(ウィッチャー4)』が、着々とその姿を現そうとしています。
5-1. シリが主人公となる必然性
次回作の主人公として、ファンの間で長年最有力視されているのはシリです。
彼女は物語の構造上、ゲラルトを超えるポテンシャルを秘めています。
剣術だけでなく、時空魔法や瞬間移動を駆使した戦闘システムは、ゲームプレイに革命をもたらすでしょう。
また、イスリンの予言には「シリの子が世界を救う(あるいは滅ぼす)」という節があり、彼女の血脈を巡る物語はまだ完全には終わっていません。
以前公開されたティザー画像には、雪に埋もれた「山猫(Lynx)」のメダリオンが描かれていました。
これは既存の猫流派とは異なる、シリが創設する(あるいは関わる)全く新しいウィッチャーの流派を示唆している可能性があります。
彼女がどんな「道」を選び、どんなウィッチャーになるのか。
親戚のおばちゃんのような気持ちで心配しつつも、楽しみで仕方ありません。
5-2. プレイヤーという名の「運命」
最後に、少しメタ的な、でもとても大切な話をさせてください。
ウィッチャーの世界において、登場人物たちの運命を決定づけてきたのは、実は神々でも予言でも、ましてや白き霜でもありませんでした。
それは、「プレイヤーであるあなた」です。
ゲラルトがシリに対して過保護になるか、自立を促すか。
雪合戦をして笑い合うか、酒を飲んで憂さを晴らすか。
シリが皇帝になるか、ウィッチャーになるか、あるいは死ぬか。
それら全てを決めたのは、あなたの些細な「選択」です。
ゲームにおける
「運命」の正体とは、画面の前のプレイヤーの意志そのもの
なのかもしれません。
私たちはコントローラーを通じて、量子力学の観測者のように、この世界の運命を確定させてきたのです。
ゲラルトが記憶を取り戻し、空白の時を経て、自分の意志でシリを救うことを選んだように。
私たちもまた、数あるゲームの中からこの物語を選び、彼らと共に歩むことを選びました。
その選択こそが、何よりも尊い「Something More」なのだと思います。
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結びコルヴォ・ビアンコにて
『ウィッチャー』の物語は、決してきれいごとだけの英雄譚ではありません。
そこには差別があり、理不尽な死があり、選ばなければならない「よりマシな悪(Lesser Evil)」があります。
通勤電車で押しつぶされ、理不尽な上司に頭を下げ、家庭の問題に悩みながら生きる私たちにとって、この泥臭い世界はどこか他人事とは思えません。
だからこそ、その暗闇の中で輝く「絆」や「愛」が、痛いほどに美しく、眩しく感じられるのです。
ゲラルトは記憶を取り戻し、運命を「愛」で上書きしました。
今、コルヴォ・ビアンコの空の下、彼はようやく剣を置き、安らかな微睡みの中にいることでしょう。
たまには、私たちも自分の人生というRPGのコントローラーを置いて、美味しいワインでも飲みましょうか。
次に物語が動き出すその時まで、しばしの休息を。
"Va fail, Gwynbleidd."(さらばだ、白き狼よ)
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