ロバート・ジョーダンが生み出し、ブランドン・サンダースンが引き継いで大団円へ導いた大河ファンタジー「時の車輪(The Wheel of Time)」。
世界累計8000万部超
という規格外の売上を誇る一方で、日本では
「え、まだ全部訳されてないの!?」
と驚かれるほどの未完状態が続き、ファンの心をジリジリ焦がし続けています。
しかもAmazon Prime Videoによるドラマ版はシーズン1・2が公開され、シーズン3までは作られているのに、シーズン4以降はなにやら雲行きが怪しい…?
そこで本記事では、原作小説の“完結したはず”の状況と国内未訳問題、そしてドラマ版が打ち切りの危機にあるのかどうかを、ちょっぴりユーモアを交えつつ超論理的かつ超俯瞰的に深掘り。
輪廻をテーマにする作品ならではの不思議な運命を、現実の商業事情や翻訳事情と絡めながら総合的に解説していきます。
――壮大な世界観、群像劇、仏教やヒンドゥー教由来の輪廻観の導入、そして男性魔力と女性魔力の二元構造など、「時の車輪」が内包するエッセンスはとにかく盛りだくさん。
小説もドラマも気になりつつ、“打ち切り”とか“未訳のまま”というワードが怖くて足踏みしている方は、どうぞこの先をお付き合いください。
ロング記事の濃度の高さでお届けしますが、まるっとこの世界の魅力と現状を押さえれば、あなたも輪廻の車輪に巻き込まれるかもしれません。
――さて、ここから先は時間も空間もゆがむほどに話が広がります。
コーヒーを片手にのんびりお読みいただければ幸いです。
ロバート・ジョーダン(本名ジェームズ・オリヴァー・リグニー・ジュニア)が描き始めた「時の車輪」は、1990年の第一部『The Eye of the World』以来、長らくファンタジー界を牽引してきました。
「あれ、部数が増えすぎて自分はどこまで読んだっけ?」
という読者が出るほどの長編でありながら、世界的には通算14部と前日譚1冊をもってきちんと完結したシリーズとして高い評価を得ています。
ところが日本語版では
肝心の最終2部が未訳
という、ファン目線では
「ウソやろ…!?」
と叫びたくなる状態が、もう何年も続いているのです。
さらに、Amazon Prime Videoで2021年に配信開始となったドラマ版『The Wheel of Time』は、現時点でシーズン3までの制作が決定しているものの、その先シーズン4以降が不透明。
視聴率だの宣伝不足だのと、若干ネガティブな話が聞こえ始めていて、
「あれだけの大作が途中で打ち切りになるかも」
という冷や汗モードです。
英語圏では
「作品自体は完結してるんだから打ち切りも何もないでしょ?」
と思う方もいるかもしれませんが、日本では
「ドラマがコケたら、未訳部が一生出ない可能性もあるのでは…」
と別の意味で心臓に悪いわけですね。
本記事では、そんな
- 打ち切りリスク
- 日本語版未訳
の不安を払拭する(あるいは逆に煽り立てる?)情報を一挙大公開します。
なにせ原作の背景、翻訳事情、ドラマ版の制作状況、海外ファンコミュニティの動向など、気になるポイントが山ほどある。
ここではできるだけ網羅しつつ、さらに超俯瞰的で論理的な視点から、物語のテーマである“輪廻”に絡めた考察も挟んでいきます。
いざファンタジーの深淵へ飛び込みましょう。
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ロバート・ジョーダンの遺志とブランドン・サンダースンの継承
シリーズの起点当初は6部完結の予定が14部に
まずは原作者ロバート・ジョーダン(ジェームズ・オリヴァー・リグニー・ジュニア)の足跡から。
アメリカ出身で元軍人という異色の肩書きを持つジョーダンは、ファンタジー作家として
「トールキンに匹敵する世界観を構築する」
と意気込んで執筆を始めたと言われています。
ヨーロッパ的な中世騎士風モチーフだけでなく、東洋哲学(輪廻転生・陰陽思想など)をガッツリ絡めることで、多文化が融合した独特の作品世界を生み出しました。
当初は「6部くらいで終わる」と言われていたものの、書き進めるうちに登場人物が芋づる式に増え、国同士の政治劇や魔法勢力の暗闘が複雑化し、物語の舞台も果てしなく広がります。
気づけば第1部が出てから4部、5部…と増殖していき、最終的には全14部+前日譚1冊の超長編に。
ジョーダン自身が
「この世界を描き切るにはあと何部必要なんだろう…」
と本人が一番驚いたとか驚かなかったとか。
作者急逝とブランドン・サンダースンの登板
第11部『Knife of Dreams』を世に出した後、ジョーダンは2007年に心臓アミロイドーシスで逝去。
絶大な人気を誇る一方で
「物語が完結しないまま終わるのか」
という不安がファンの間を駆け巡りました。
しかし、ジョーダンは詳細なプロットやシーンメモを大量に残していたため、それを妻であり編集者でもあったハリエット・マクドゥーガルが後任作家へ託すことに。
そこで指名されたのが、当時急上昇株だったファンタジー作家ブランドン・サンダースン。
彼は
「ジョーダンが思い描いたラストをできるだけ尊重する」
と述べ、あまりにも膨大なメモを集約しながら執筆を進めました。
結局“最終部”とされていた原稿は3分割され、第12部『The Gathering Storm』(2009年)、第13部『Towers of Midnight』(2010年)、最終となる第14部『A Memory of Light』(2013年) が相次いで刊行されます。
こうしてファン悲願の完結が実現し、「世界観から逃げなかった」サンダースンが拍手喝采を浴びました。
英語圏では「未完」の不安が完全に払拭された
英語で読める人にとっては、「時の車輪」はすでに全14部を揃えて堂々のフィナーレを飾った“大作ファンタジー”として認識されています。
評価はさまざまですが、
「途中の中弛みがキツかったけど最後に盛り返した」
「サンダースンがテンポよく畳んでくれて良かった」
と肯定的な声が多い。
累計8000万部超という売上も示す通り、英語ファンタジー界の金字塔の一つに数えられています。
だからこそ、
「未完かもしれない」
とか
「打ち切りでは?」
と英語圏の人に言うと
「は? もう完結してるけど」
と怪訝な顔をされるでしょう。
ところが日本では、そんな認識が一筋縄ではいかないのが実情。
次章では、その大きな要因である“翻訳の止まりっぷり”に迫ります。
日本語版の宿命最終2部が未訳のまま
ハヤカワ文庫FTが翻訳を手掛けるも途中でストップ
日本語版はハヤカワ文庫FTによって、第1部『竜王伝説』(原題 The Eye of the World) から刊行が始まりました。
当初の翻訳者・斉藤伯好氏の丁寧な訳業によってファンを獲得していき、順次第2部、第3部…と刊行が進みます。
とはいえ原作は1部が分厚いので、
日本語では上下分冊、場合によっては3~5分冊
にしている部もあり、同じシリーズが膨大な数に増える結果に。
斉藤氏の他界後は月岡小穂氏が引き継ぎ、第12部『The Gathering Storm』(邦題『飛竜雷天』)上下までなんとか刊行しました。
しかしその後、最後の2部――第13部『Towers of Midnight』と第14部『A Memory of Light』が一向に出ないまま10年近くが過ぎ、“未訳状態”が固定化されたかのようになっています。
具体的には日本語版第12部刊行時点で既に原書は完結していたにもかかわらず、それ以上刊行されなかったというわけです。
「シリーズ打ち切り」と感じるファンの嘆き
こうなるとファンからすれば、
「こんな大事なクライマックス目前で止めるなんて、事実上の翻訳打ち切りじゃないか」
と叫びたくもなります。
海外ではとっくに読めるのに、日本語しか読まない読者は最大の山場を迎えられない。
ネット上でも
「ハヤカワは責任もって完訳してよ」
「もう英語版買うしかないのか…」
という声が長らく噴出していました。
出版不況もあり、
「売れ行きが見込めないなら出版社として翻訳に踏み切りづらい」
という業界事情も理解はできるけれど、ここまで来たら最後まで行ってほしい! というのがファン心理でしょう。
しかもドラマ化というビッグニュースが2021年に入ってから流れたのですから、普通に考えれば
「この波に乗って未訳部も出すよね?」
と期待しますよね…?
ドラマ化に合わせた“復刊”と今後の見通し
実際にハヤカワ文庫は、ドラマ版の配信を受けて既刊分(第1~12部)を新装版として復刊し始めました。
タイトルも旧『時の車輪』からドラマに合わせて『ホイール・オブ・タイム』表記にリニューアルした部もあり、装丁も新しくなっています。
ただし、これはあくまで既に翻訳済みの部分を印刷し直しているだけであり、問題の「第13・14部翻訳刊行」はまだ公式発表がありません。
もしドラマが大ヒットし、新規ファンが増えて既刊の売れ行きが良ければ、「これはいける」と出版社が判断して最終2部の翻訳が走る可能性は大いにある。
一方、ドラマが微妙に失速し、思ったほど新規読者が増えないとなると
「結局刊行しないまま」
…というリスクも払拭できません。
つまり、ドラマの盛り上がりと原作日本語版の完訳は切っても切れない関係になっているのです。
ドラマ版は打ち切られちゃうの? Amazon Prime Videoの危うい行方
シーズン1 好発進と原作ファンの物足りなさ
Amazon Prime Videoが『The Wheel of Time』の制作を正式発表したのは2019年ごろ。
実際に2021年11月、シーズン1が公開されました。
ロザムンド・パイクがモイレイン役を演じるなど豪華キャストに加え、大規模セットやVFXを投入。
配信初月には
「Amazonオリジナル作品中でも上位の視聴時間を記録した」
という報道があり、まずは好調にスタートしたようです。
しかし、原作ファンからは
「端折りすぎじゃないか」
「ランドが印象薄い」
といった批判や、マットのキャラ描写など細部の改変への苦言が目立ちました。
特にCOVID-19の影響で撮影が一時ストップし、後半エピソードに時間がかけられなかった面もあり、クオリティにばらつきが生まれたとされています。
シーズン2 評価上昇、でも視聴者数は不安?
シーズン2(2023年9月公開)は、批評家や視聴者からの評価がシーズン1より軒並み良くなり、Rotten Tomatoesなどで高い支持率を獲得しました。
キャラクターの成長や世界観の描写が深まっており、
「原作の核心に徐々に近づく感じがたまらない」
「第○話はシーズン1にはなかった圧巻の迫力」
と好意的なレビューが増加。
その一方で、視聴初動がシーズン1より下がっているという報道もあり、
「評価は上がったのに数字が伴わない」
という微妙な状態になったという説があります。
Amazonは視聴データをすべて公表しないため、正確な再生数は不明ですが、
「初週のニールセン推計がシーズン1比で大きく下がった」
といった話が海外ファンコミュニティを賑わせました。
シーズン2後半で持ち直したという話もありますが、トータルではシーズン1の勢いを超えなかった可能性があると言われています。
シーズン3までは確定だがシーズン4以降は?
制作サイドは、視聴者数にやきもきしつつも、既にシーズン3の制作を発表済み。
公開は2025年3月13日を予定しており、撮影やポストプロダクションのスケジュールも進行中とのこと。
ではシーズン4はどうかと言えば、Amazonから公式アナウンスはまだなし。
「シーズン3の結果を見てから判断」
というのが大方の見方です。
ショーランナーのレイフ・ジャドキンスは“全8シーズン程度で完結させたい”と熱意を示していますが、それはあくまで制作続行が認められれば、の話。
もし数字が振るわなければAmazonが途中打ち切りを決断する可能性も否定できません。
ファンタジー大作というとHBOの『ゲーム・オブ・スローンズ』が大ヒットを遂げましたが、一方で競合のNetflixやDisney+が容赦なく人気ドラマをキャンセルする事例は珍しくないため、油断は禁物です。
打ち切りリスクを現実的に捉える
海外ファンフォーラムやリーク情報によると、
「Amazonは『指輪物語: 力の指輪』に莫大な予算を注ぎ込んでいるため、『ホイール・オブ・タイム』にはそこまで広告費をかけていないのでは?」
という指摘もあります。
宣伝が足りず、シーズン2は初動が鈍くなったという分析も多々ある。
もしこのまま観客が増えなければ「採算が合わない」と見なされる可能性は十分ありえるわけです。
とはいえ、まだ“打ち切り決定”ではありません。
シーズン3で物語の面白さがさらに爆発し、新規視聴者が増えることだってあり得ますし、Amazonが長期的視点で投資を継続する戦略を取るなら続行の望みも大いにあります。
要するに「綱渡り状態」といって差し支えないでしょう。
“時の車輪”の輪廻と現実の商業サイクルネタバレ回避しつつ考察
世界観の要輪廻転生と陰陽の力
「時の車輪」は仏教やヒンドゥー教の輪廻思想を大胆に取り込み、
“時は円環であり何度も同じ歴史が回帰する”
という前提が敷かれています。
主人公ランド・アル=ソアは
“竜に生まれし者”
という宿命を背負い、過去の時代でも何度となく現れた伝説の英雄の再来とされる存在。
一方で、男性の魔力「サイディン」は闇の影響で汚染されていて、触れる者はやがて狂気に陥るという呪いがかけられています。
女性の魔力「サイダー」と対をなす構図は陰陽思想を連想させ、光と闇、男と女の力関係が世界を左右する設定になっているわけです。
これはただの設定にとどまらず、物語終盤(特に英語版で読める第13・14部)で
「運命の輪の繰り返し」
「魂の再生」
というテーマが深くクローズアップされ、“最後の戦い”に臨むキャラクターたちが自分の宿命をどう受け止めるのかが大きな焦点となります。
日本では未訳のためネタバレを避けたいところですが、「輪が巡る物語」という点だけでも非常に象徴的です。
輪廻が意味するものファンタジーを超えた普遍性
なぜ『時の車輪』が世界的に支持されたのか? 単なる魔法バトルが面白いというだけでなく、
「運命は繰り返されるが、人の選択が未来を変え得る」
という普遍的テーマを、壮大なスケールで描き切ったからとも言えます。
トールキンの『指輪物語』がヨーロッパ中世と神話の融合で神話的叙事詩を確立したなら、ジョーダンはそこにアジア的輪廻観を加えて、“時間”そのものがキャラクターに干渉するファンタジー世界を作った感じです。
物語中には一見ささやかな選択が、実は大きな輪の歯車を回す運命だったり、過去にも同じ選択をした者がいて…という構造があちこちに散りばめられています。
これが一気に14部分続くため、読者は
「自分の人生も何かの歯車にはまっているんじゃ?」
と考え込むほどの没入感に陥る人もいるようです。
現実のドラマ制作翻訳ビジネスにも“回帰”するものがある?
ここで一歩俯瞰すると、輪廻転生というテーマが奇妙な形で現実とリンクしているようにも見えます。
- ドラマ版が失敗すれば
日本語訳が出ない→ファンが苦しむ→盛り上がらない→やっぱり出ない
という負のスパイラルに陥る。 - 成功すれば
人気上昇→未訳2部が出る→さらに新規ファンが増える→シリーズが評価されドラマも続行→輪が巡る
まるで作品の中で言われている“運命の車輪”が、われわれ現実世界の商業判断にも作用しているかのようで、妙なシンクロを感じる方もいるかもしれません。
ファンコミュニティと打ち切り回避の鍵視聴データが運命を決める?
Amazonは打ち切りを厭わない可能性も
近年のストリーミングサービスは、容赦なく人気のないドラマを打ち切る文化が広まっています。
Netflixは特にシビアだと有名ですが、Amazonも莫大な資金を投じる大作が多数走っており、視聴率が伸び悩む作品の継続をためらう姿勢は十分考えられます。
シーズン1で一部作品が打ち切られた例もあり、『時の車輪』だって決して安泰とはいえない。
ただし、Amazonは「中長期的に見る」と称して、すぐには打ち切らない場合もあります。
例えばシーズン2で多少落ちても、シーズン3で巻き返す可能性があると判断すれば待ってくれるかもしれません。
要は裏側の視聴データやコスト、宣伝との兼ね合いで決定されるわけで、視聴者としては
「とにかく観て、SNSで声を上げるしかない!」
と気合いを入れている人もいます。
海外ファンの動きSNSキャンペーンや署名
Redditの r/WoTや r/WoTshow といったコミュニティでは、
「シーズン2は後半が特に面白いから最後まで見てね!」
とファン同士で呼びかけあったり、ハッシュタグ #WheelOfTime でSNS拡散を行ったりする活動が盛んです。
視聴者数を上げるには最初の数話だけでなく全話見てもらうことが大事ですし、評価やレビューを投稿するのもプラットフォームの目に留まる一助になるとか。
いわばユーザー側の“草の根運動”が作品の存続を支えている状況です。
日本でもTwitterを中心に
「ホイール・オブ・タイムめっちゃ面白いから観て!」
というツイートが増えたり、ブログや動画サイトでネタバレ感想を共有したりする動きがあり、原作が好きな人ほど危機感をもって盛り上げているように見受けられます。
特に国内ファンは「日本語訳完結」のために必死です。
「シーズン4が実現しなかったら翻訳にも見切りをつけられてしまうのでは…」
という切実な思いが強いのです。
もしドラマが打ち切られても、未訳部が出る可能性は?
打ち切り後でも翻訳が再開される例はある?
過去の海外長編小説では
ドラマ/アニメが打ち切りになったけど原作翻訳はそのまま出た
というケースも存在します。
つまりドラマが失敗しても原作自体に根強いファンがいれば、出版継続の道は残る。
ただし『時の車輪』は最終部がとにかく膨大なボリュームで、翻訳作業も膨大。
出版社としては“ある程度の売れ行きが保証されなければ着手できないリスク”を抱えているはずです。
打ち切り後の翻訳刊行は絶対ないとは言えませんが、ドラマの追い風がなくなると市場を盛り上げにくいため、現実問題としてさらに厳しくなるでしょう。
そうなれば「未訳部が永遠にお蔵入り」という悪夢コースもあり得る。
ファンからすると、やはりドラマが続いて原作人気が底上げされるほうがベストなのは言うまでもありません。
クラウドファンディングや自主翻訳の道は?
一部のファンが
ファン有志でクラウドファンディングを募り、翻訳資金を集める
というアイデアを口にすることもあります。
実際に海外の小説やゲームをファン出資でローカライズした例が皆無ではありません。
ただ著作権や契約上の問題、翻訳権料・専門的な校正作業といったハードルが山盛りで、現実的にはハヤカワ文庫など出版社と協調しなければ動きにくいでしょう。
また、英語が得意なファンなら
「原書で読んじゃうよ!」
という手段もありますが、それでは日本語翻訳の売上には貢献しないため、公式完訳を望むファン同士で温度差が生まれる可能性も。
どのみち、出版ルートで正式刊行されるのがいちばんスムーズかつ、多くの読者が恩恵を受ける形でしょう。
作品としての魅力と大河ファンタジーの“醍醐味”
壮大すぎる群像劇
この作品の見どころとしては、まず“メインキャラは誰?”と聞かれても答えに窮するほど大勢のキャラクターが登場する点でしょう。
ランド・アル=ソア、マット・コーソン、ペリン・アイバラ、エグウェーン・アル=ヴェア、ナイニーヴ・アル=メアラといったエモンドの野出身の若者を中心に、アエズ・セダーイ(女性魔術師団)のモイレインやスワン、闇陣営の強者たち、各国の王族貴族…。
途中から
「誰が誰だか判別不明」
と嘆く声もあるくらい、大河ドラマ状態です。
しかし中盤以降になると、この多層的な人物相関が巨大なパズルとなり、
「あの国で政治クーデターが起こってる裏で、あっちの魔術組織がこんな暗躍を…」
という複数のドラマが同時に転がる。
ハマる人はとことんハマる一方で、中弛み(通称スローグ)を越えられずに挫折する読者も出ます。
ドラマ版でどう映像化するのかが常に注目の的であり、改変への賛否が熱く交わされるゆえんです。
男性魔力の呪いと運命への抗い
もう一つの重要な鍵が、男性魔力の汚染設定です。
輪廻を司る“創造主”が与えたはずの魔力が、闇の意思によって男性側だけ汚されているがゆえに、男性魔術師はいつか発狂してしまう。
歴史上、偉大な男性魔術師が世界を滅ぼしかけたこともあり、アエズ・セダーイは男性魔術師を捕獲して去勢する(魔力を封じる)活動を行うなど、世界に独特の緊張感が漂います。
主人公ランドはその男性魔力を使える存在であり、しかも救世主的役割(竜に生まれし者)を担うという究極の二面性を背負っています。
すなわち“世界を救うかもしれないし、狂気に飲まれ世界を破壊しかねない”という危うさが、物語全体を駆動させるモチーフ。
この要素もまた、輪廻と闇の力が交錯する作品世界を強烈に印象付けています。
ネタバレなしでも漂う“最終決戦”の予感
日本語版が未訳のまま止まっている第13・14部あたりでは、まさに
最後の戦い(The Last Battle)
に向けて物語が結集していきます。
海外で読んだ人からは
「何百ページにもわたる大決戦が圧倒的」
とか、
「これまで散りばめられた伏線が一気に収束してすさまじいクライマックスを迎える」
と評判です。
ここを日本語で読めないままなのは、もはや拷問と言っても過言ではないでしょう。
ドラマ版でも最終的にはこの“大戦”を描くことを目指していると言われますが、そのためには7~8シーズンは欲しいという話。
打ち切りでそこに到達しないとなれば、多くの視聴者が肩透かしを食らうことになります。
英語圏では
「原作を読めば済む」
と言えても、日本では
「え、原作でさえ途中で断念せざるを得ないんですけど?」
となるわけで、余計にショックは大きいかもしれません。
超俯瞰的な視点作品の輪廻が我々に問いかけること
ここであえて超俯瞰的に見たとき、「時の車輪」が扱う輪廻と運命、それに対する登場人物の選択というテーマが、このドラマ打ち切り騒動や翻訳未完問題にも暗示的に重なってきます。
シリーズを救うためにファンが声を上げ視聴数を伸ばすという行動は、物語世界における“運命に抗う英雄たち”の姿とどこか似ているかもしれません。
黙っていたら闇の力(=打ち切り)に呑まれるだけ、という構図です。
また、日本語訳が不安定なことで、読者が
「今から読み始めても最後まで読めるか分からない」
と二の足を踏むというジレンマが発生し、さらに売れ行きが伸びず…という負の循環が起きかねない。
ここを断ち切る一手はドラマのヒットか、それとも出版社の英断か、あるいはファンの積極的な購買や訴えかけかもしれませんが、何らかの“意志ある行動”がなければ車輪は回り続けないのかもしれません。
輪廻が巡り
「いつか同じ歴史が繰り返される」
と言うなら、以前に中断した翻訳が再開される“新たな回転”に期待したいところです。
まるで物語の中と現実がオーバーラップしているような妙な感覚ですね。
時の車輪は回り続けるか、それとも止まるか?まとめ
ここまで、原作の完結状況、日本語版未訳の理由、Amazonドラマの制作・視聴率動向、ファンコミュニティの動きなどを、縦横無尽に語ってきました。
情報が多すぎて頭がクラクラかもしれませんが、最後に論点をまとめましょう。
- 原作小説は全14部+前日譚で完結済み(海外では打ち切りなし)
ロバート・ジョーダン亡き後、ブランドン・サンダースンが完結させたことで、“未完の大作”という懸念は英語圏では解消済み。
すべて読み切れる長編ファンタジーとして人気を博している。 - 日本語版は第12部でストップ、残る第13・14部が未訳
ハヤカワ文庫による刊行が途中で止まり、ファンが
「最後まで読みたいのに…!」
と嘆く状態が長期化。
ドラマ化で復刊は始まったものの、最終2部をいつ出すかの公式発表はなし。 - ドラマ版はシーズン3まで確定、シーズン4未定
シーズン2の評価は上向いたが視聴者数がやや心配されており、Amazonがシーズン4以降を続投するかは未知数。
打ち切りの可能性は否定できず、ショーランナーは8シーズン完結を望むも苦しい立場。 - 翻訳再開はドラマの成功と密接に連動か
ドラマ人気が高まれば原作に注目が集まり、出版社も未訳部を刊行するメリットが大きくなる。
逆にドラマがしぼむと
「やはり出ないか…」
となるリスク増。どちらに転ぶかは視聴データと出版社判断次第。 - 輪廻のテーマが現実のファン活動にも通じる?
作品世界で主人公たちが宿命に抗いながら“最後の戦い”に挑むように、現実世界でもファンが声を上げ、視聴を促進し、翻訳再開を求める運動が起こっている。
輪は回り続けるか否か、まさに今が正念場。
ドラマと原作を楽しむためにいま動くのも一つの選択
「時の車輪」に興味を持ったが、打ち切りの噂や未訳問題が怖くて手を出せない…
という方もいるかもしれません。
しかし、だからこそ今、あえて飛び込むのも手です。
シーズン1・2で映像の雰囲気を掴みつつ、既訳部分を文庫や電子書籍で読んでみるだけでも世界観は十分堪能できます。
もしハマったら、シーズン3や原作の続きがどうしても気になるはず。
そこで一緒にファンコミュニティで盛り上がれば、作品存続の一助にもなれるかもしれません。
「これ以上シリーズ途中で止まる作品は嫌だ!」
と躊躇する気持ちも分かりますが、「輪廻」を扱う物語を“現実でも回す”ために一票を投じる、という考え方もあるわけです。
いつか最終部を日本語で読める日を楽しみに、あるいは英語原書に挑戦してしまうのもアリ。
いずれにしても、熱量を注ぐファンが増えれば増えるほど、時の車輪は勢いを増して回転し続けるでしょう。
車輪は止まらない…と信じたい結び
ロバート・ジョーダンが作り上げ、ブランドン・サンダースンが完結させた偉大なファンタジー「時の車輪」。
すでに英語版では最後まで読めるにもかかわらず、日本語版は最後の2部が宙ぶらりん。
さらにAmazonドラマ版もシーズン4以降が確約されておらず、不安に満ちた状況という“二重苦”が日本のファンにのしかかっているのが実態です。
それでもドラマはシーズン3まではやり切る予定で、シーズン2の評価改善に見るかすかな希望もあります。
SNSで応援すればシリーズが続くかもしれないし、続けば出版社がやる気を出して未訳部を出すかもしれない。
そんな“かもしれない”が巡り巡るところに、輪廻のテーマが重なり合っているのが「時の車輪」の面白いところかもしれません。
繰り返しになりますが、大事なのは
作品が好きなら声を上げる
というごくシンプルな行動です。
時の車輪を回すのは作中キャラだけじゃない。
現実世界でも、私たち読者・視聴者が回す歯車のひとつなのです。
もしあなたがこの作品の行方を気にしているなら、ぜひドラマをチェックし、原作にも手を伸ばし、あわよくば周囲に薦めてみるといいかもしれません。
日本語訳が最後まで揃って、ドラマ版が8シーズンきっちり映像化され、ランドたちの「最後の戦い」が最高の形で描かれる…
そんな未来が訪れれば、ファンタジー史に残る大傑作になることは間違いありません。
運命の輪がどう回るかは、ある意味でファンに委ねられている部分もあるのでしょう。
本記事は情報を網羅的にお届けしましたが、最終的に何をどう楽しむかは読者次第です。
「え、面白そう!」
とワクワクしながらシーズン1を再生するもよし、第1部『竜王伝説』の新装版を読んでみるもよし、海外版を即取り寄せるもよし。
いろんな入り口があっていいのです。
もし輪の中に飛び込んでみて、
“最後まで見届けたい”
という熱が湧いたときこそ、ジョーダン&サンダースンの描いた壮大なファンタジー世界の真髄に触れるチャンスがやってくるのかもしれません。
輪廻は回り続ける――。
その流れがここ日本でも止められないほどの潮流に育っていくことを、願ってやみません。
いつの日か「打ち切りかも」なんて噂が笑い話になり、
「日本語版完結したよ!」
とみんなで乾杯できる日が訪れるように。