花火を見たあと、アリスたちは人の消えた東京へ迷い込みます。終盤まで読むと、あの夜の光景を思い返してぞっとするんですよね。
麻生羽呂の漫画『今際の国のアリス』は、全18巻で完結しています。
最終回までのネタバレがあります。登場人物の死や自傷を含む内容です。
結末で明かされる今際の国の正体は、隕石災害に遭い、生死の境をさまよう人たちが集まる世界です。
1〜3巻|命懸けのげぇむと、親友を失う「かくれんぼ」

おみくじ、おにごっこ――遊びの名前で命を狙ってくる
有栖良平、通称アリスは高校生。出来のいい弟と比べられ、家に居づらさを感じていました。カルベとチョータは、そんな彼が気を許せる親友です。
三人が飛ばされた東京では、夜になると「げぇむ」が始まります。最初に参加するのは、神社を舞台にした「おみくじ」。問題の答えを外すと火矢が降ってくる、命懸けのクイズでした。おみくじ一枚で、ずいぶん物騒です。
生き残ると発行される「びざ」は、その国に滞在できる日数です。期限が切れた人は、空からのレーザーで殺されます。勝ったあとも、日がたてば次の会場へ向かう暮らしが続くんです。
トランプの数字は難しさを表し、マークによってげぇむの性格も違います。「すぺえど」は体力、「だいや」は知力、「くらぶ」は協力や総合力、そして「はあと」は人の心理を揺さぶる勝負。マンションで銃を持つ鬼から逃げる「おにごっこ」では、アリスは登山の技術を持つ女子高生、宇佐木柚葉ことウサギと出会いました。
最後に隠れたのは、アリスを生かそうとする三人だった
アリス、カルベ、チョータ、現地で知り合ったシブキの四人が挑む「はあとのなな」は、「かくれんぼ」です。参加者は一人の「おおかみ」と三人の「ひつじ」に分かれ、視線が合うとおおかみが移ります。
残酷なのは、制限時間の終わりに生き残れるのがおおかみ一人、という条件でした。首輪を着けた四人は、自分が助かるために争い始めます。
やがてアリスは、友人を死なせてまで勝つことに耐えられなくなります。自分がおおかみのまま、ほかの誰かに生存を譲ろうとしたのです。ところが、カルベたちは彼の前から身を隠しました。
探しても会えないまま、時間が尽きます。カルベ、チョータ、シブキは首輪の爆発で死亡。アリスは三人から生存を託され、一人で取り残されました。「げぇむくりあ」の文字が、こんなにむなしいとは。
立ち上がれなくなったアリスを支えたのは、ウサギです。彼女自身も父を失い、元の世界に居場所を見つけられずにいました。アリスが、それでも生きたいと声を上げたことで、二人は一緒に生きる道を選びます。
4〜8巻|ビーチの希望が、まじょがりで崩れていく
トランプを集める楽園と、ボーシヤの死
カルベの残した「ビーチ」という言葉を頼りに、アリスとウサギは大きなホテルへ着きます。人々が水着で酒や音楽を楽しむ、妙ににぎやかな場所でした。
指導者のボーシヤは、トランプをすべて集めれば出国できると説き、住民をげぇむへ送り出してカードを集めていました。にぎやかなプールまであると、つい安心したくなりますよね。けれど、カードを握る幹部の序列と、裏切り者への制裁が住民を縛っていたのです。
ボーシヤと武闘派のアグニは、現実世界からの親友で、ビーチを作った二人でもあります。人々へ希望を与えようとしたボーシヤは、組織が大きくなるにつれて独裁的になり、自分で掲げた出国の話にすがっていきました。
決別を告げるアグニへ、ボーシヤが銃を向けます。アグニは撃ち返し、親友を殺してしまったのです。ボーシヤの拳銃は、弾を抜いた状態でした。
一方、アリスは幹部のチシヤに利用され、カードを盗もうとした罪で拘束されます。ウサギも武闘派に狙われ、二人が追い詰められたところで、ホテル全体がげぇむ会場に変わりました。
魔女の正体は、自ら命を絶ったモモカ
「はあとのじゅう・まじょがり」の課題は、ロビーで死んでいたモモカを殺した「まじょ」を探し、その身体を火で焼くことです。
アグニと武闘派は、全員を殺して焼けば魔女も焼けると住民を襲います。親友を失ったアグニの怒りと、ニラギらの暴力が重なり、ビーチは殺戮の場になってしまいました。ウサギは混乱の中でアリスを救い出します。
チシヤはニラギを火で撃退し、クイナは刀で襲うラスボスを空手で倒します。やがてニラギの放火でホテルが燃え、ビーチは建物ごと崩壊しました。
アリスが突き止めた答えは、モモカ自身が、自分を殺した「まじょ」だったというものでした。彼女の遺体を火にくべることで、条件が満たされます。
モモカと友人のアサヒは、運営を手伝う「でぃいらぁ」でした。運営を手伝う側も、担当するげぇむを攻略されると命を失う仕組みです。
人を死に追い込む役目に疲れたモモカは、自分が犠牲になる道を選んでいました。一方、最後まであがくアリスたちに希望を見いだしたアサヒは、自分の身分を明かし、レーザーで死亡します。
数札のげぇむがすべて攻略されると、次の段階を告げる中継が流れます。ビーチの幹部だったミラやクズリューも、今度は対戦相手として姿を現しました。
9〜16巻|絵札を担う国民も、自分の命を懸けている
「ねくすとすてぇじ」で戦うのは、キング、クイーン、ジャックを名乗る「国民」です。彼らは前回のげぇむを勝ち抜き、その国で暮らす永住権を選んだ人たちでした。
アリスは、口の軽そうなキューマから国の秘密を聞き出そうとします。
くらぶのきんぐ「すうとり」――タッタの腕が逆転を生む
アリス、ウサギ、クイナ、ニラギ、タッタの五人は、キューマたちとのチーム戦に挑みます。互いに持ち点を分け、敵との接触や陣地への攻撃で点を奪い合う「すうとり」です。
キューマの仲間は、犠牲者が出る覚悟で陣地へ突撃し、大量得点を奪いました。アリスたちも反撃しますが、逆転まで届きません。そこでタッタが、自分の腕を切断して腕輪を託す作戦を申し出ます。
アリスはその腕輪を隠し持ち、キューマに握手を求めました。タッタの点数が合算される仕掛けによって、接触した相手から点を奪い、逆転します。勝利の代償は大きく、タッタは出血多量で命を落としました。
キューマは敗北を受け入れ、アリスが生きる意味を見つけることを願って最期を迎えます。敵の生き方に触れた直後、味方をまた失う。アリスはげぇむへの参加をやめ、残るびざの間、ウサギと静かに過ごすことにしたのです。
はあとのじゃっく「どくぼう」――ヤバとバンダが仕掛けた逆襲
二人が休んでいる間にも、ほかの参加者の勝負は続きます。刑務所を使う「どくぼう」では、自分からは見えない首輪のマークを、ほかの人に教えてもらい、一時間ごとに答えます。
間違えれば首輪が爆発するうえ、参加者の中には主催者のハートのジャックが紛れていました。人を信じたい。でも、その人が嘘をつけば死ぬ。ちょっとした返事の間まで怖くなる設定です。
ジャックの正体は、催眠療法士のエンジでした。ヤバとバンダは裏で協力し、彼の正体と企みを見抜きます。二人はエンジを追い詰め、国についての情報を聞き出しました。
支配するつもりだった相手から拷問され続ける恐怖に耐えられず、エンジはわざと誤ったマークを答えて死亡。最後に生き残るのはヤバとバンダです。命が助かってほっとするより、この二人が自由になるほうが怖い、と思ってしまいました。
すぺえどのきんぐ――アグニ、ドードー、ヘイヤが守り合う
銃で人を狩るスペードのキング、シーラビのげぇむは、国全体を戦場にします。元傭兵の彼は、生きて苦しむ人を殺して救うという考えから、参加者を襲っていました。
立ち向かう中心になるのはアグニ、中学生のドードー、片脚を失ったヘイヤの三人です。親友を殺した罪に苦しむアグニは、二人を守る中で、自分が生きて戦う理由を持ち始めました。
三人は互いを助けながらシーラビを倒します。重傷のアグニはそこで戦線を離れ、ドードーとヘイヤは最後のげぇむを目指しました。
だいやのきんぐ「びじんとうひょう」――チシヤに残ったもの
チシヤが挑む相手はクズリューです。「びじんとうひょう」では、全員が0〜100から数字を選び、平均値の0.8倍に最も近い数字を出した人が勝ちます。敗者は減点され、限界まで点を失うと死亡する勝負でした。
最後の一対一で、チシヤは自分が出す数字を先に明かします。クズリューは、その情報を利用すれば相手の命を自分の判断で奪える立場に置かれました。
命の価値を平等に考えたいと願ってきたクズリューは、最後までその信念を通し、敗れて死亡します。その生き方に触れたことで、命への関心が薄かったチシヤにも変化が生まれたのです。
16〜18巻|アリスとウサギは、どう最終ゲームを終えた?

ニラギとの銃撃を経て、アリスが再び動き出す
アリスとチシヤが再会したところへ、ニラギが現れます。自分の死が近いと悟ったニラギは、二人を巻き込み、殺し合いを始めようとしました。
アリスは拒みますが、そこへ駆けつけたウサギが狙われます。チシヤは彼女をかばって撃たれ、アリスもニラギを撃ちました。重傷を負った二人を前に、アリスは全げぇむの攻略を目指して動き出します。
終わらせた先に、みんなで元の世界へ帰れる可能性がある。その可能性に賭け、ウサギと向かう最後の相手が「はあとのくいいん」のミラでした。
クロッケーの勝敗よりも、途中棄権へ誘う紅茶が怖い
最後のげぇむは「くろっけぇ」。庭で球を打ち、ゲートを通すクロッケーを三セット行います。条件は、勝ち負けにかかわらず三セットを終えることでした。
拍子抜けするほど穏やかですが、ミラはアリスが求めている世界の秘密を餌にします。未来人が娯楽で作った仮想現実だと話しては、嘘だとひっくり返す。こんなお茶会、途中で席を立ちたくなります。それこそが危ないのですが。
さらに紅茶には幻覚剤が入っていました。ミラは、自分は担当医、アリスは精神病棟の患者だと語り、カルベとチョータを失った悲しみから世界を作ったのだと信じ込ませようとします。
アリスはその説明に飲まれ、生きる意欲も、げぇむを続ける気力も失っていきました。病院の話は、ミラが途中棄権させるために作った嘘です。
ウサギは自分の手首を傷つけ、アリスに呼びかけます。目の前で苦しむ彼女を守りたいという思いが、アリスを引き戻しました。
二人は三セットを終え、げぇむをクリア! ミラは空からのレーザーを受けて死亡し、すべての絵札との対決が終わります。
永住権を手にするか――二人が選んだ答え
生存者全員に、その国の国民となる永住権を得るか、放棄するかの選択が与えられます。アリスとウサギは、手にしないと答えました。ヤバとバンダは、国民として残る道を選びます。
18巻の結末|病院での再会と、二年後のアリス

隕石の被害と、帰ってきた人々の傷
アリスが目覚めると、現実の病院でした。東京を襲ったのは隕石群。物語の始まりに花火のように見えた光と、彼らが命の危機に陥った出来事がつながります。
病院のテレビに流れる犠牲者の名前には、げぇむで死んだ人々が重なっていました。カルベとチョータは、現実の災害でも命を落としていたのです。
帰還した人々の身体にも、それぞれ傷が残ります。チシヤとニラギは入院し、ヘイヤは片脚を失った状態で暮らし始めました。アグニも生還し、ドードーとヘイヤは病院で彼を気にかけています。
クイナには、車椅子の母を押す穏やかな時間が訪れます。命のやり取りが続いたあとだと、病院の廊下や中庭で誰かと過ごせること自体が、ずいぶんありがたく見えました。
記憶を失ったアリスとウサギが、もう一度惹かれ合う
生還した二人は、今際の国での出来事を思い出せません。病院の自動販売機の前で顔を合わせ、初対面のように言葉を交わします。
それでも、互いに会ったことがあるような感覚を抱いています。派手な再会より、少しぎこちないやり取りが胸に残るんですよね。
二年後、アリスは大学で学び、臨床心理士を目指しています。ウサギとも現実で関係を育んでいました。
ジョーカーは何者?「中間管理職」という返答の意味
永住権を断ったアリスの前には、帰還の直前に黒い影のようなジョーカーが現れます。
ジョーカーは、自分が神に見えるか、悪魔に見えるかと尋ねました。
アリスが相手を評した言葉は、「中間管理職」でした。あの姿へそんな返事ができる度胸、なかなかです。
私はジョーカーを、生と死の間で人を送り出す渡し守に近い存在として読みました。げぇむで戦う国民のさらに外側にも、役目を持つ存在がいる。そんなふうに感じさせる対話です。
原作の試し読みと、公式アニメCM
小学館eコミックストアには、17巻の試し読みと18巻の試し読みがあります。終盤を漫画で読みたいときは、この二冊で最終ゲームから終幕へ続きます。
週刊少年サンデーTVによる、原作漫画の公式アニメCMです。
FAQ
「今際」は何と読む?
「いまわ」です。死にぎわや臨終を表す言葉で、作品名は「いまわのくにのアリス」と読みます。題名の漢字まで、結末につながっていたんですね。
チシヤのブラックジャックと、ヘイヤの脱出戦は何巻にある?
チシヤの「だいやのろく・ぶらっくじゃっく」は9巻、ヘイヤの「すぺえどのなな・かまゆで」は10巻の特別編に収録されています。チシヤの勝負では滞在時間を賭け、ヘイヤは熱湯が湧く球場からの脱出に挑みました。
まとめ
終幕では、街の人たちが「なぜ生きるのか」と問われ、それぞれの理由を話します。朝、出かけるたびに立派な答えを用意するのは、私にはちょっと大変です。それでも、明日会いたい人がいる。そのくらい身近な理由も大事にしたくなるラストでした。