満員電車の中でふと
「正義ってなんだろう?」
なんて考えたこと、ありますか?
私はあります。
毎朝の通勤ラッシュ、押しつぶされそうになりながら、ふとイヤホンから流れる『HEAVENS DIVIDE』を聴いて涙ぐむ40代主婦、それが私です。
今は2025年12月。
『メタルギアソリッド』シリーズもマスターコレクションやリメイクで再び盛り上がりを見せていますが、その中でも「正史のミッシングリンク」と呼ばれる『ピースウォーカー(MGSPW)』は、ひときわ異彩を放っていますよね。
「携帯機だから」
とスルーした人、
「狩りゲー要素が強くて途中で投げた」
という人も多いかもしれません。
でも、ちょっと待ってください。
この作品を知らずに『MGSV』を語るなんて、出汁を入れずに味噌汁を作るようなもの。
今回は、長崎出身・東京在住、小学生男子の母であり、夜な夜なマザーベースの運営に勤しんだ私が、この物語の「真実」を骨の髄までしゃぶり尽くしたいと思います。
この記事は、こんな「モヤモヤ」を抱えるあなたのための処方箋です
- 「MGSPWのエンディングを見たけど、なぜスネークが『銃を捨てない』と言い出したのか、その心理が理解できなくてモヤモヤしている」
- 「カセットテープ(ブリーフィングファイル)が膨大すぎて全部聴けておらず、パスやカズの裏切りの真相を知らないまま放置している」
- 「『MGSV』をプレイしたけど、マザーベース崩壊の悲劇がいまいちピンと来ない。時系列や伏線を整理して、もっと深く物語に没入したい」
最近のゲームは映像も綺麗だし、説明も親切です。
でも、この『MGSPW』のように、プレイヤーの心に「棘」を残す作品はそうそうありません。
なぜなら、ここには「平和(ピース)」という甘い言葉の裏に隠された、身も蓋もない「現実(リアル)」が描かれているからです。
核抑止、AI兵器、そして信じていた仲間たちの裏切り。
ネット上の攻略サイトを見ても、「Sランクの取り方」や「装備のスペック」ばかりで、一番知りたい
「キャラクターたちの心の闇」
にまで踏み込んでいる記事は、驚くほど少ないのが現状です。
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記事を書いているのは、こんな人間です
手前味噌ですが、私はライターをしつつ、家庭では息子と夫の世話に追われる兼業主婦です。
でも、ただの主婦じゃありません。
独身時代からコジマプロダクション作品を追い続け、『MGSPW』に関してはプレイ時間500時間超え。
全てのミッションをクリアし、全てのカセットテープを聴き込み、なんなら家事のBGMにドラマCDを流すほどのヘビーユーザーです。
長崎県出身ということもあり、「核」や「平和」というテーマには、人一倍こだわりがあります。
そんな私が、主婦目線とゲーマー目線、そしてライターとしての分析力を総動員して解説します。
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この記事を読むと、あなたはこうなります
この記事では、単なるあらすじの羅列ではありません。
- 「なぜザ・ボスAIは自ら沈んだのか?」
- 「パスの日記に隠された、少女の本音とは?」
- 「カズヒラ・ミラーはいつから裏切っていたのか?」
これらを時系列順に、完全ネタバレで徹底的に解剖します。
読み終える頃には、あなたは断片的な情報の海から解放され、
スネークが「ビッグボス」へと変貌した悲劇的な必然性
を、痛いほど理解できているはずです。
そして、次に『MGSV』を起動したとき、その景色の見え方が180度変わっていることをお約束します。
結論:これは「英雄」が死に、「修羅」が生まれるまでのドキュメンタリー
この記事を読めば、『MGSPW』という作品が抱える全ての謎が解けます。
さあ、準備はいいですか?
1974年のコスタリカへ、一緒にダイブしましょう。
そこにあるのは、私たちが信じていた「平和」の終わりと、終わらない「闘争」の始まりです。
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第1章実質的な「MGS5」としての覚悟

物語に入る前に、少しだけ前提のお話をさせてください。
2010年にPSPで発売された本作ですが、小島監督自身が
「自分の中ではMGS5のつもりで作った」
と公言しています。
これ、例えるなら
「実家の母ちゃんが作るカレー」
だと思っていたら、
「銀座の老舗レストランのシェフが本気で作ったカレー」
が出てきたくらいのギャップがあります。
ナンバリングこそ付いていませんが、物語の重要度はシリーズ最高クラス。
ここを飛ばして『MGSV』をやるのは、映画の冒頭30分を見ずにクライマックスを見るようなものです。
時代は1974年。
- 1964年の『MGS3』で師匠ザ・ボスを殺害し、心にぽっかりと穴が空いたスネーク。
- 1972年に「恐るべき子供達計画」でゼロ少佐と決裂し、国を捨てたスネーク。
そんな彼が、どうやってあの巨大な武装要塞「アウターヘブン」を作るに至ったのか。
そのミッシングリンクが、今ここで繋がります。
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第2章亡霊の誘いと「国境なき軍隊」

コロンビアの海岸にて
1974年11月。南米コロンビア。
スネークは相棒のカズヒラ・ミラー(カズ)と共に、「国境なき軍隊(Militaires Sans Frontières = MSF)」という小さな傭兵部隊を率いていました。
「国境なき」なんて聞こえはいいですが、要は「家なき子」たちの集まりです。
私も上京したての頃、東京の狭いアパートで「ここが私の城だ!」なんて強がっていましたが、彼らの孤独感はその比ではありません。
国も、思想も、帰る場所もない。
ただ戦うことでしか自分を証明できない男たち。
そんな彼らの元に、怪しげな二人が現れます。
コスタリカの「国連平和大学」教授を名乗るラモン・ガルベス・メナと、その教え子パス・オルテガ・アンドラーデ。
「軍隊を持たない平和憲法の国コスタリカに、謎の武装集団が進駐している。追い出してほしい」
スネークは即座に断ります。
「政治的な面倒事には関わらない」と。
長年の勘で、ガルベスの赤い義手や雰囲気から、彼がソ連KGBの工作員であることを見抜いていたんですね。
アメリカ(CIA)の勢力圏であるコスタリカに、ソ連(KGB)が楔を打ち込むための代理戦争。
そんな大人たちの事情に利用されるのは御免だ、と。
呪縛のカセットテープ
しかし、ガルベスは切り札を出してきます。
「先日、友人が録音した」
という一本のカセットテープ。
再生ボタンを押すと、ジャングルの鳥の鳴き声に混じって、ある女性の声が。
『ジャック……』
スネークの時間が止まります。
それは、10年前に彼自身の手で殺したはずの師匠、ザ・ボスの声でした。
私も夫の実家で片付けをしている時、ふと昔の写真が出てきて手が止まることがありますが、スネークの衝撃はその数億倍でしょう。
死んだはずの師匠が生きている?
それとも亡霊?
スネークが依頼を受けた理由は、コスタリカの平和のためでも正義のためでもありません。
「師の生存を確かめる」。
ただその個人的な執着、未練、あるいは愛のために、彼は再び戦場へと足を踏み入れます。
報酬として提供されたのは、カリブ海に浮かぶボロボロの廃棄プラント。
彼らはそこを「マザーベース」と名付けました。
これが、後に世界を揺るがす巨大軍事要塞の始まりです。
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第3章ジャングルの幻影とAI兵器群

革命の残党、新しい家族
コスタリカに潜入したスネークは、謎の武装集団がCIAの極秘部隊「ピース・センチネル」であることを突き止めます。
そして現地で協力者と出会います。
ニカラグアの革命ゲリラ「サンディニスタ民族解放戦線(FSLN)」の生き残り、アマンダとその弟チコです。
この姉弟との出会いがまた、泣けるんですよ。
アマンダは死んだ父の跡を継いで気丈に振る舞っていますが、内心は不安で押しつぶされそう。
弟のチコはUMA(未確認生物)好きの普通の少年ですが、拷問を受けたトラウマを抱えている。
スネークは彼らにとって、かつての英雄チェ・ゲバラのような「導く者(コマンダンテ)」として映ります。
ここでのポイントは、スネークが徐々に「個」の戦士から「集団の長(ビッグボス)」へと変貌していく過程です。
生意気盛りの息子を持つ身としては、チコに対するスネークの不器用な優しさにグッときます。
ただ甘やかすのではなく、戦士としての覚悟を問う姿勢。
MSFという組織が、単なる傭兵団から「疑似家族」へと変わっていく重要なシーンです。
鋼鉄の亡霊たち
ジャングルで待ち受けていたのは、人間が乗っていないAI兵器たちでした。
- ピューパ(Pupa)
ホバー移動する不気味な水陸両用戦機。 - クリサリス(Chrysalis)
歌うような駆動音で空を舞う飛行戦機。 - コクーン(Cocoon)
圧倒的な威圧感を持つ巨大要塞戦車。
これらは、核戦争後の放射能汚染下でも稼働できる無人兵器の試作機。
スネークは生身ひとつでこれらを解体していくわけですが、その中枢から「AI記憶板」を引き抜く作業……
あれ、なんだか人の脳みそをいじっているような背徳感があるんですよね。
二人の天才、狂気とコンプレックス
敵の拠点で、スネークは物語の鍵を握る二人の科学者を確保(救出)します。
1. ヒューイ(エメリッヒ博士)
車椅子生活を送る天才工学者。
後のオタコン(ハル・エメリッヒ)のお父さんです。
彼は自分の足で歩けないコンプレックスから、「二足歩行兵器」の開発にのめり込んでいました。
技術への純粋な探究心と、それが兵器として利用されることへの無自覚さ。
科学者の業のようなものを感じます。
2. ストレンジラブ博士
AI研究の権威であり、かつてNASAでザ・ボスと同僚だった女性。
彼女はザ・ボスに対して、尊敬を超えた、もはや恋愛感情に近い強烈な想いを抱いていました。
彼女の目的は、AIでザ・ボスを完璧に再現すること。
そして、
「なぜ祖国を裏切り、愛弟子に殺される道を選んだのか」
という真実を、AIの口から聞くことでした。
スネークが聞いたテープの声は、ザ・ボス本人ではなく、完成間近のAI「ママルポッド」の声だったのです。
亡霊の正体は、データでした。
でも、そこに魂は宿らないのでしょうか?
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第4章ピースウォーカー計画と「平和」のパラドックス

コールドマンの「完璧な論理」
全ての黒幕は、CIA中米支局長ホット・コールドマン。
彼の名前、直訳すると「熱い・冷たい男」。
まさに冷戦の申し子のような名前ですが、彼の提唱する「ピースウォーカー計画」の理論が恐ろしい。
現代の私たちもAIについて議論していますが、コールドマンは1974年の時点でとんでもない結論に達していました。
「人間は、報復核攻撃のボタンを押せない」
相互確証破壊(MAD)とは、
「お前が撃ったら俺も撃ち返すぞ」
という脅しで平和を保つ仕組みです。
でも、人間には感情がある。
倫理観がある。
いざ数億人を焼き殺すボタンを押す段になったら、躊躇してしまうかもしれない。
「報復しないかもしれない」
と思われた時点で、抑止力は崩壊します。
だからコールドマンは考えました。
「感情を持たないAIに、核の発射権限を委ねよう」
攻撃を探知したら、躊躇なく、慈悲もなく、機械的に確実に撃ち返すシステム。
それこそが完全な抑止力を生み出し、逆説的に平和をもたらす。
そのための兵器が、核搭載二足歩行戦車「ピースウォーカー」です。
「平和(ピース)のために歩く(ウォーカー)」兵器。
なんという皮肉でしょう。
平和のために、最も非人道的なシステムを作る。
これは私の勝手な解釈ですが、現代社会で私たちが「便利さ」を求めてAIに判断を委ねていく姿と、どこか重なる恐怖を感じませんか?
狂気の実証実験
コールドマンは、このシステムの有効性を世界に証明するために、狂気のデモンストレーションを画策します。
「実際に核を発射して見せる」
標的は、MSFのマザーベース。カリブ海に核を撃ち込み、「本当に撃てる」ことを証明しようとしたのです。
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第5章ニカラグア湖の奇跡と「Sing」

三つ巴の裏切り合戦
スネークはピースウォーカーの起動を止めるため、ニカラグアの米軍基地へ。
そこでは、コールドマン(CIA)、ガルベスことザドルノフ(KGB)、そしてスネーク(MSF)による三つ巴の争いが勃発。
ザドルノフはコールドマンを撃ち、ピースウォーカーをソ連のために奪おうとしますが、瀕死のコールドマンは最期の執念で核発射シークエンスを起動させます。
しかも、最悪の置き土産を残していました。
ピースウォーカーは、NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)に対し、「ソ連から核ミサイルが発射された」という
偽の弾道データ
を送信し始めたのです。
これを受け取ったアメリカ側は、当然「報復」の準備に入ります。
偽のデータが、本物の第三次世界大戦を引き起こす。
人間がAIに騙され、世界が終わる瞬間です。
届かない声、そして歌
スネークは必死に食い止めようとします。
マザーベースのカズと連携し、アメリカ大統領へのホットラインで攻撃中止を訴えますが、現場の混乱は極限状態。
物理的な破壊も間に合わない。
核発射まで残り数秒。
スネークは絶望の中で、ピースウォーカーのAI
——ザ・ボスの人格——
に叫びます。
「ボス! やめてくれ!」
その時でした。
ママルポッドが黄金色に輝き始め、スピーカーから歌声が流れてきたのは。
『Sing, sing a song...』
カーペンターズの名曲『Sing』。
ザ・ボスの声で歌いながら、巨大な兵器はゆっくりと動き出します。
攻撃のためではなく、自らを葬るために。
ピースウォーカーは、自律的にニカラグア湖へと歩を進め、そのまま深みへと沈んでいきました。
湖水に没することで、強制的に電子回路をショートさせ、偽データの送信を止める。
それはプログラムされた行動ではありません。
かつてザ・ボスが、世界の均衡を守るために自らの命を差し出して死んでいったように、AIもまた、
「自らを犠牲にして世界を救う」
という道を選んだのです。
湖畔に立ち尽くすスネークの目の前で、ピースウォーカーは沈黙しました。
世界は救われた。
……けれど、スネークの心は救われませんでした。
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第6章:考察なぜ英雄は「悪」に堕ちたのか?

ここからが、私が一番書きたかった部分です。
普通なら「世界が救われてよかったね」で終わる話です。
でも、このゲームは違います。
スネークの心に、決定的な亀裂が入るのです。
「平和」という名の絶望
マザーベースに戻ったスネークは、ザ・ボスAIの最期の行動を反芻し、ひとつの結論に達します。
彼にとっては、受け入れがたい絶望的な結論です。
「彼女は銃を捨てた。戦うことを放棄し、女として死ぬことを選んだ」
スネークにとって、兵士であること、銃を持って戦い続けることは、アイデンティティそのものです。
彼らは国に捨てられ、居場所を失った兵士たち。
戦うことでしか生を実感できない生き物です。
しかし、師であるザ・ボスは、平和のためにそのアイデンティティ(銃)を捨てて見せました。
スネークはこれを、
「師による、弟子(兵士)への裏切り」
だと解釈したのです。
「彼女は俺を置いていった。俺の生き方を否定した」
「銃を捨てて死ぬことが平和? そんなものは幻想だ」
これ、冷静に考えればスネークの「誤読」かもしれません。
でも、彼の立場になれば痛いほどわかります。
ずっと背中を追いかけてきた親に、
「お前の生き方は間違っている」
と最期に突き放されたようなものですから。
彼は、師の遺志(平和)を継ぐのではなく、師を乗り越え、否定するために生きることを決意します。
「俺は銃を捨てない。戦い続ける」
この瞬間、英雄ネイキッド・スネークは死にました。
世界を敵に回してでも兵士の居場所を作る男、「ビッグボス」が誕生したのです。
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第7章:真の結末(第5章)「アウターヘブン」

物語はまだ終わりません。
むしろここからが本番です。
表向きの平和が戻ったマザーベースで、真の裏切り劇が幕を開けます。
パスの正体とメタルギアZEKE
マザーベースに収容されていたザドルノフが、何度も脱走を繰り返します。
まるでコントのように脱走しては捕まる彼ですが、それは陽動でした。
スネークが7度目の脱走で彼を射殺した直後、真の脅威が牙を剥きます。
警報と共に起動したのは、MSFが極秘裏に開発していた核搭載二足歩行兵器「メタルギアZEKE(ジーク)」。
そのコクピットに乗っていたのは、あの平和を愛する少女、パスでした。
彼女の正体は、16歳の女子学生などではありません。
本名はパシフィカ・オーシャン。
年齢は20代。
CIAでもKGBでもなく、スネークのかつての友ゼロ少佐が創設した秘密組織「サイファー(後の愛国者達)」から送り込まれた工作員でした。
彼女はずっとスネークを監視し、彼を組織に連れ戻す機会を窺っていたのです。
「スネーク、私の言うことを聞いて。組織に戻って」
「断る」
「なら、このZEKEでアメリカ東海岸に核を撃ち込むわ」
平和(Paz)の名を持つ少女が、「平和の維持」を口実に核を突きつける。
なんという皮肉。
なんという残酷さ。
雨の中の決別
激しい雨が降るマザーベースの甲板。
自らが作り上げた兵器、自らが守り育てたはずの少女との殺し合い。
スネークはZEKEを大破させ、パスは爆発の衝撃で海へと吹き飛ばされます。
「平和(Paz)なんてどこにもない!」
という絶叫を残して。
戦いは終わりました。
しかし、MSFが核武装していた事実、そして世界を脅かす力を持った事実は消えません。
スネークは、集まった兵士たちの前で高らかに宣言します。
「俺たちは国を捨てる。故郷を捨てる。だが誇りは捨てない」
「時代がそれを望むなら、俺たちはテロリストにでもなる」
「ここが俺たちの家……天国でも地獄でもある『アウターヘブン』だ!」
スネークは、大切に持っていたザ・ボスの形見のバンダナを空へと放り投げます。
それは師との決別。
そして、終わりのない戦争への突入宣言でした。
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第8章:カセットテープが語る真実の裏側

このゲームの恐ろしいところは、本編のムービー以外に重要な真実が隠されていることです。
クリア後に聴ける膨大な「ブリーフィングファイル(カセットテープ)」。
ここを掘り下げると、物語の景色が一変します。
パスの日記:嘘と真実の境界線
テープの中には、パスがスパイ活動の一環として記録していた音声日記があります。
当初、彼女はMSFの兵士たちを
「汗臭い野蛮人」
「戦争中毒者」
と軽蔑していました。
しかし、マザーベースでの生活、チコとの他愛ない会話、調理場でのパン作り、サッカー大会……
それらを通じて、彼女の心に変化が生じていきます。
「楽しかった。本当はずっとここにいたかった」
彼女がZEKE戦で見せた狂気的な態度は、任務に失敗すれば組織に殺されるという恐怖と、心から愛着を持ってしまった「居場所」を自らの手で破壊しなければならない絶望の裏返しだったのです。
彼女は冷酷なスパイではなく、組織と任務に押し潰された一人の被害者でした。
このテープを聴いてからエンディングを思い出すと、もう涙が止まりません。
カズヒラ・ミラーの「ビジネス」
そして、もう一人の裏切り。相棒のカズです。
彼のテープからは、彼が最初からスネークとは異なる動機で動いていたことが分かります。
彼は裏でゼロ少佐(サイファー)と連絡を取り合っていました。
彼にとってMSFは、スネークというカリスマを利用した「ビジネス」だったのです。
「スネーク、君は実像(アイコン)になれ。俺がそれをビジネスにする」
彼はパスやガルベスの正体に薄々気づいていながら、MSFを拡大するための「養分」として彼らを利用していた。
カズのこの冷徹な経営者視点。
これ、会社勤めをしていると妙にリアルに感じて怖くなります。
情熱だけで動くスネークと、数字と利益で動くカズ。
この二人の亀裂は、最初から埋まらない運命だったのかもしれません。
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第9章:『MGSV』への架け橋崩壊する楽園

MGSPWのエンディングは、決してハッピーエンドではありません。
むしろ、地獄への入り口です。
この作品で私たちが数百時間をかけて築き上げたマザーベース。
集めた兵士たち、開発した装備、仲間との絆。
そのすべてが、次作『MGSV: Ground Zeroes』で無慈悲に破壊されます。
海に落ちたパスは生きていました。
しかし、サイファーに捕まり、キャンプ・オメガで地獄のような尋問を受けます。
彼女を助けに向かったスネークの留守中に、謎の部隊XOFがマザーベースを襲撃。
文字通り、全てが海に沈みます。
MGSPWで描かれた「兵士たちの楽園(日常)」が輝かしいほど、その後に訪れる喪失(ファントムペイン)は深くなります。
小島監督は、私たちプレイヤーに「仲間を集め、基地を作る楽しさ」を体験させた上で、それを理不尽に奪うことで、ビッグボスが抱く「世界への復讐心」を追体験させようとしたのです。
なんて残酷な仕掛けなんでしょう。
でも、だからこそ、この物語は心に深く刻まれるのです。
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おわりに1974年のコスタリカを忘れない
長々と語ってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。
『メタルギアソリッド ピースウォーカー』は、単なるスピンオフ作品ではありません。
一人の男が英雄であることをやめ、修羅の道を選ぶまでの、あまりにも人間臭いドキュメンタリーです。
長崎出身の私としては、「平和」という言葉の重みと、それを維持するための「抑止力」という名の矛盾について、深く考えさせられました。
核があれば平和なのか?
銃を捨てれば平和なのか?
答えは簡単には出ません。
だからこそ、スネークも迷い、間違え、あのような道を選んでしまったのでしょう。
この記事を読んで、「もう一度MGSVをやり直したい」あるいは「PWをプレイしてみたい」と思っていただけたら、これほど嬉しいことはありません。
そして、ブリーフィングテープの最後の1本を聴き終えた時、きっとあなたも満員電車の中で空を見上げたくなるはずです。
「平和」に別れを告げ、時代に喧嘩を売る覚悟はできましたか?
ようこそ、アウターヘブンへ。
メタルギアソリッドポータブル・オプス+(MPO)ストーリー完全ネタバレ解説!正史から消された「サンヒエロニモの真実」と結末まで【2025年完全版】
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