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【メタルギア】ビッグ・ボスはなぜ「悪」に堕ちたのか?時系列で紐解く英雄の罪と罰と勘違い【徹底分析】

2025年12月。

今年も残すところあとわずかですね。

東京の街はクリスマスイルミネーションで輝き、私の息子(小4)もサンタさんへの手紙に

「ゲームソフトが欲しいです、宿題はちゃんとやります」

なんて、見え透いた嘘を書いています。

 

嘘といえば、メタルギアシリーズのリメイク版『METAL GEAR SOLID Δ(デルタ): SNAKE EATER』、皆さんはもうプレイしましたか?

 

私は家事と仕事の合間を縫って、夜な夜なジャングルに潜伏していました。

夫には

「また匍匐前進してる…」

と白い目で見られましたが、気にしません。

なぜなら、そこには現代社会で生きる私たちが直面する「組織と個人の葛藤」の全てが詰まっているからです。

 

今回は、メタルギアシリーズ永遠の命題、

「ビッグ・ボスはなぜ悪に堕ちたのか」

について語ります。

 

長崎から上京して早20数年、現在は東京の片隅で義両親と同居しながらフルタイム勤務&ライターをこなす私(40代)が、生活感あふれる視点と、なぜか降りてきた超俯瞰的な考察を交えて徹底的に解説します。

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「英雄」が悪役になる時そこには必ず理由がある

あなたは、メタルギアの壮大な物語を追う中で、こんな風に感じたことはありませんか?

  • 「MGS3の純粋なスネークが、なんでMG1であんな冷酷な爺さん(独裁者)になっちゃったの? キャラ変わりすぎじゃない?」と困惑している。
  • 「ネットで考察記事を読んでも、『時系列が複雑』『解釈が分かれる』とか言われて、結局何が決定打だったのかモヤモヤする」と消化不良を起こしている。
  • 「MGSVのエンディングを見たけど、『俺たちがビッグ・ボスだ』ってどういうこと? 結局本物は何をしてたの?」と、置いてけぼり感を味わっている。

その気持ち、痛いほどわかります。

私も最初はそうでした。

シリーズは発売順と時系列がバラバラですし、後付け設定(レトコン)も多い。

何より、この物語は「正義と悪」がコロコロ入れ替わるので、非常に難解なんです。

 

でも、安心してください。

 

最近のゲームはストーリーが複雑化していたり、隠し要素が膨大だったりして、全ての情報を自力で追うのは非常に困難です。

攻略サイトは情報が古かったり、個人の感想レベルの考察が多かったりして、本当に知りたい信頼できる情報にたどり着けないことも多いのが現状です。

 

特にビッグ・ボスの変貌に関しては、ゲーム内の断片的なテープを聞いたり、小説版を読まないと理解できない「心の闇」がたくさんあるんです。

 

そこで、この道20年(プレイ歴)、家庭内での「上司(義母)」との冷戦を生き抜いてきた私が、公式設定資料、開発者インタビュー、そしてファンの集合知である考察の海を泳ぎ切って、一つの

「完全な答え」

をご用意しました。

 

この記事では、

1964年の「スネークイーター作戦」から2014年の最期まで、ビッグ・ボスの半世紀に及ぶ生涯を時系列順に徹底解剖

します。

 

なぜ彼は国を捨てたのか?

なぜ核武装を選んだのか?

そして『MGSV』で明かされた「影武者」の真実とは?

これらを、専門用語には日常的な比喩を交えながら、誰にでもわかるように噛み砕いて解説します。

 

この記事を読むことで、あなたは以下のメリットを得られます。

  • ネットの断片的な情報に振り回されることなく、ビッグ・ボスの「悪堕ち」の全貌を一本の線として理解できます。
  • 「ヴェノム・スネーク」や「アウターヘブン」といった難解な概念がスッキリ腑に落ち、シリーズ全体のテーマである「反戦・反核」のメッセージをより深く味わえるようになります。
  • リメイク版『Δ』や、今後のシリーズ展開を、単なるアクションゲームとしてではなく、重厚な人間ドラマとして10倍楽しめるようになります。

結論を先に言いましょう。

 

この記事を読み終える頃、あなたはビッグ・ボスという男を、単なる「悪役」として憎むことはできなくなっているはずです。

彼の物語は、理想を追い求めるあまりに道を誤った、あまりにも人間臭い

「罪と罰と、壮大な勘違いの記録」

なのですから。

 

さあ、準備はいいですか?

深呼吸をして、歴史の裏側へ潜入しましょう。

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序章:英雄と悪党は紙一重?「視点」の魔法

まず最初に、少しだけ前提の話をさせてください。

「ビッグ・ボス=悪」

という図式、これはあくまで「ソリッド・スネーク(主人公)」や「西側諸国」からの視点なんですよね。

 

歴史というのは常に勝者が書くものです。

私の家でも、チャンネル権争いに勝った息子が「アニメを見る正義」を主張し、ニュースを見たい夫が悪者扱いされています。

それと同じ(一緒にするなと言われそうですが、構造は似ています)。

 

ビッグ・ボスは、彼なりの「正義」を持っていました。

それは

「兵士が政治家の都合で使い捨てにされない世界を作る」

という、極めて純粋で、ある意味では労働組合の委員長みたいな切実な願いでした。

 

でも、その実現方法がまずかった。

核兵器を持ち、戦争をビジネスにして、世界中を恐怖で縛り付ける。

これはどう見てもアウトです。

 

なぜ、純粋な愛国者だった彼がそこまで歪んでしまったのか。

その原因は、一つの「巨大なトラウマ」と、そこから生じた「壮大な勘違い」にあります。

 

時計の針を1964年まで戻しましょう。

私が生まれるよりもっと前、冷戦真っ只中の時代へ。

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【1964年】 MGS3 Snake Eaterすべての始まりは「上司ガチャ」の失敗から

物語の起点は、1964年のソ連領ツェリノヤルスク。

CIAの特殊部隊FOXに所属するネイキッド・スネーク(後のビッグ・ボス)は、亡命を希望する科学者ソコロフを救出する任務に就きます。

ここでの出来事が、彼の人格形成のすべてを決定づけました。

師匠ザ・ボスとの関係:究極のメンターにして母親

スネークには、頭の上がらない師匠がいました。

その名も「ザ・ボス」。

第二次世界大戦を導いた伝説の兵士であり、スネークに近接格闘術CQCを叩き込み、戦士としてのイロハを教えた女性です。

 

彼女はスネークにとって、師であり、母であり、戦友であり、そして唯一無二の恋人のような存在でした。

10年間、寝食を共にして作り上げられた絆。

 

私で言えば、新入社員時代に手取り足取り仕事を教えてくれて、プライベートでも飲みに行って、人生相談まで乗ってくれた憧れの女性上司みたいなものでしょうか。

いや、もっと深いですね。

魂の片割れ、ツインソウルみたいなものです。

 

ところが、そのザ・ボスが任務中にソ連へ亡命してしまいます。

しかも、手土産に小型核砲弾「デイビー・クロケット」を持って。

その核がソ連の過激派ヴォルギン大佐によって発射され、ソ連国内の研究施設が消滅。

事態は最悪の方向へ転がります。

スネークイーター作戦:究極のパワハラ任務

アメリカ政府は、ソ連に対して身の潔白を証明する必要に迫られました。

「核を発射したのはアメリカの意志ではない、あれは亡命したザ・ボスの単独犯行だ」と。

 

フルシチョフ書記長から突きつけられた条件は、あまりにも残酷なものでした。

 

「アメリカの手で、裏切り者ザ・ボスを抹殺せよ」

 

そして、その実行犯に選ばれたのが、彼女の愛弟子であるスネークでした。

 

これ、想像できますか?

会社の不祥事の責任を取らされて、大好きだった上司を自分の手でクビにしろ(物理的に抹消しろ)と命令されるようなものです。

吐き気がしますよね。

 

それでもスネークは任務を遂行します。

なぜなら彼は「兵士」であり、命令は絶対だから。

そして、白い花が咲き乱れる美しい平原で、彼は愛する師匠をその手にかけます。

自分の愛銃、パトリオットを使って。

明かされた真実:国家という名のブラック企業

任務を終え、傷心のスネークは大統領から「ビッグ・ボス(ボスを超える者)」という称号と勲章を授与されます。

でも、彼の目は死んでいました。

なぜなら、彼はEVA(中国のスパイ)が残したテープによって、真実を知ってしまったからです。

 

ザ・ボスの亡命は、すべてアメリカ政府が仕組んだ狂言だったということを。

 

彼女は裏切り者ではなかった。

国の命令で「裏切り者のふり」をして潜入し、予期せぬ核発射のせいで「汚名を着て死ぬ」ことまで命令されていたのです。

彼女は、国を守るために、愛する弟子に殺されることさえも任務として受け入れた。

「彼女は死ぬまで兵士だった。誰にも知られることなく、国のために死んだ」

この事実を知った時、スネークの中で何かが音を立てて壊れました。

「国への忠誠? ふざけるな」と。

 

国は、一番優秀で忠実な社員(兵士)を、政治的な帳尻合わせのためにゴミのように捨てたのです。

 

これ、現代社会でも通じる話だと思いませんか?

会社のために身を粉にして働いたのに、業績が悪化したらリストラされたり、トカゲの尻尾切りに遭ったり。

スネークが感じた絶望は、組織に属する人間なら誰しもが感じる恐怖の究極形です。

 

この「国家への不信感」こそが、ビッグ・ボスが悪に堕ちるための最初にして最大のトリガーでした。

彼はここで、

「もう国なんて信じない。俺たちの居場所は俺たちで作る」

と決意してしまったのです。

ある意味、悲しすぎる独立起業の決意ですね。

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【1970年~1972年】 離反方向性の違いで解散するバンドのように

1970年の「サンヒエロニモ半島事件(MGS PO)」を経て、ビッグ・ボスはかつての上官であるゼロ少佐らと共に、秘密組織「愛国者達(The Patriots)」を結成します。

目的は、ザ・ボスの遺志を実現すること。

 

しかし、ここでまたしても悲劇が起きます。

「ザ・ボスの遺志」の解釈を巡って、ゼロとビッグ・ボスが大喧嘩を始めるのです。

仲の良いバンドが「音楽性の違い」で解散するのと同じですが、彼らが巻き込んだのは世界そのものでした。

ザ・ボスの遺志:「世界を一つに」の解釈バトル

ザ・ボスが最期に残した言葉は

「世界を一つにする(The World is One)」

でした。

抽象的すぎますよね。

遺言ならもっと具体的に、「遺産は誰に譲る」とか書いておいてほしかった。

 

この言葉を、二人はそれぞれ全く違う方向に解釈しました。

1. ゼロ少佐の解釈(過干渉なオカン型)

「世界を一つにする」=「全員の意識を統一して、争いが起きないように管理すればいいんだ!」

ゼロは情報統制によって世界を裏から操り、完璧な秩序を作ろうとしました。

これはあれです、子供の行動を全部GPSで監視して、読む本も着る服も全部親が決める過干渉な親みたいな発想です。

「あなたのための平和なのよ」と言いながら自由を奪うタイプ。

2. ビッグ・ボスの解釈(武闘派ヤンキー型)

「世界を一つにする」=「国境とか政治とか関係なく、兵士が必要とされる場所を作ることだ!」

彼は、昨日の敵が今日の友になるような、戦場での純粋な結びつきこそが「一つになる」ことだと考えました。

だから、兵士が戦い続けられる世界を作ろうとした。

これもまた極端です。

恐るべき子供達計画:勝手にクローン作っちゃいました事件

決定的な亀裂が入ったのは1972年。

ビッグ・ボスが自分の元を去ることを恐れたゼロは、彼の最強の遺伝子を勝手に使い、クローン人間を作る計画を実行します。

これが「恐るべき子供達計画(Les Enfants Terribles)」です。

 

自分の許可なく、自分のコピーを作られる。

これ、人権侵害も甚だしいですよね。

私だったら、勝手に私のへそくりを使って夫が高級ゴルフクラブを買った時以上に激怒します(比喩が小さいですが、怒りの質は似ています)。

「私の遺伝子は私のものだ!」と。

 

ビッグ・ボスにとって、これは

「自分もまた、ザ・ボスと同じようにシステム(ゼロ)の道具として扱われた」

という決定的な証拠でした。

 

彼はついにゼロと決別し、カズヒラ・ミラーというチャラいけど腕は立つ相棒と共に、国境なき軍隊「MSF」を設立します。

 

ここから、彼は「どこの国にも属さない、兵士による兵士のための会社」を作り始めます。

フリーランスの傭兵集団ですね。

でも、それがただの派遣会社で終わればよかったんですが、そうはいきませんでした。

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【1974年】 MGS PW平和(ピース)を捨てた日

1974年、コスタリカで起きた「ピースウォーカー事件」。

ここでビッグ・ボスは、決定的に道を誤ります。

そして、自ら進んで「悪(修羅)」の道を選び取るのです。

AIになった師匠との対話

この事件で彼が対峙したのは、なんと死んだはずの師匠、ザ・ボスの思考を完璧にコピーしたAI搭載兵器「ピースウォーカー(ママルポッド)」でした。

 

AIは、冷戦のパワーバランスを計算し、最終的に「核を発射しない」という選択をします。

そして、自らニカラグア湖に入水し、機能を停止(自殺)することで、世界を核戦争から救いました。

 

「戦わずに死ぬ(銃を置く)」ことで平和を守る。

それは、10年前にザ・ボス本人がやったことの再現でした。

彼女は最後まで、平和を愛していたのです。

バンダナを捨てた理由:逆ギレに近い勘違い

それを見たビッグ・ボスはどう思ったか。

「素晴らしい、さすが師匠だ」と感動したでしょうか?

いいえ、違います。

彼は激怒しました。

 

「彼女は俺を裏切った。戦うことを放棄したんだ」

 

彼は、ザ・ボスの自己犠牲を「兵士としての職務放棄」と捉えたのです。

「生き残って戦い続けることこそが兵士の生なのに、なんで自ら死ぬんだ! 武器を捨てるなんて、兵士への裏切りだ!」と。

 

これ、冷静に考えるとすごい解釈ですよね。

平和のために死んだ人を「戦うのをやめた裏切り者」と呼ぶなんて。

でも、彼は本気でした。

彼にとって「生きる」とは「戦う」ことと同義語だったから。

彼はザ・ボスの形見だったバンダナを湖に投げ捨てます。

 

これは

「俺はあんたみたいに綺麗事のために死んだりしない。俺は銃を捨てない。泥にまみれても戦い続ける」

という決別の宣言でした。

アジテーション:テロリスト宣言

そしてエンディング、彼は部下たちに向かって演説をぶち上げます。

「我々は国を持たない。哲学も思想も持たない。必要とされればどこへでも行く。(中略)時代が必要とすれば、革命家にも、犯罪者にも、テロリストにさえなる。そして、おそらく地獄へ堕ちるだろう。だが、そこが我々の居場所だ。我々の天国であり、地獄だ。ここがアウターヘブンだ」

出ました、「アウターヘブン」。

直訳すれば「天国の外側」。

つまり、天国に行けないならず者たちの楽園という意味でしょうか。

 

ここで彼は明確に宣言しました。

「俺たちは正義のためには戦わない。自分たちのために戦う」と。

これはもう、立派な犯罪組織のトップの発言です。

彼は「兵士の楽園」を守るためなら、世界中を敵に回しても構わないという危険な思想に染まってしまったのです。

 

私が思うに、ここが一番の分岐点でした。

彼がもし、AIの行動を見て

「平和って大事だよね、俺も引退して田舎で農業でもやろうかな」

と思えていたら、歴史は変わっていたでしょう。

でも、彼は戦うことしか知らなかった。

不器用すぎる男の悲劇です。

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【1975年~1984年】 MGSV The Phantom Pain悪魔の証明、あるいはアイデンティティの窃盗

さて、ここからが本題です。

小島監督が

「ビッグ・ボスが悪に堕ちる過程を描く」

と公言した『MGSV』。

ここで彼が犯した罪は、虐殺とか破壊とか、そういう派手なものだけではありません。

もっと陰湿で、人間の尊厳を踏みにじるような行為です。

グラウンド・ゼロズ:すべてを失った日

1975年、MSFのマザーベースは、謎の組織「XOF(スカルフェイス)」の襲撃を受けて壊滅します。

ビッグ・ボスもヘリの爆発に巻き込まれ、9年間の昏睡状態に。

 

そして1984年、彼は目覚めます。

左腕を失い、頭に大きな破片(角のように見える)が刺さった状態で。

彼は復讐のために立ち上がります……

と思いきや、ここでシリーズ最大のトリックが仕掛けられていました。

ヴェノム・スネークの正体:究極の身代わり

『MGSV』のラストで明かされる真実。

プレイヤーが必死に操作し、マザーベースを再建し、血にまみれて戦っていた「ビッグ・ボス」は、本人ではありませんでした。

 

彼は、9年前のヘリでビッグ・ボスを庇って重傷を負った、

「名もなき衛生兵(メディック)」

だったのです。

 

本物のビッグ・ボスは、昏睡中に裏で手を回し(オセロットらが実行犯ですが、本人はそれを承認しています)、この忠実な部下に整形手術と催眠暗示を施して、

「お前はビッグ・ボスだ」

と思い込ませたのです。

  • ヴェノム・スネーク(影武者)
    世界中の注目を集める囮として、矢面に立って戦わされた。
  • ネイキッド・スネーク(本物)
    その裏で安全に隠れ、真の「アウターヘブン」建国の準備をしていた。

なぜこれが「最大の悪」なのか

考えてみてください。

ビッグ・ボスの理想は

「兵士が政府に使い捨てにされない世界」

でしたよね?

なのに彼は、自分の命と野望を守るために、

「部下の人生、顔、名前、過去」をすべて奪い、自分を守るための「肉の盾」として使い捨てた

のです。

 

これって、彼が一番憎んでいた

「アメリカ政府がザ・ボスにしたこと」

と全く同じじゃないですか?

 

「ミイラ取りがミイラになる」

とはよく言ったものですが、彼は怪物(システム)と戦っているうちに、自分自身が部下を搾取する怪物(システム)になってしまったのです。

 

私はこの真実を知った時、怒りというより空虚さを感じました。

プレイヤーである私たちもまた、ヴェノム・スネークとして「お前がビッグ・ボスだ」とおだてられ、終わりのない戦場に駆り出されていたわけですから。

私たちはビッグ・ボスに利用されていたのです。

 

カズヒラ・ミラーはこの真実を知って激怒します。

「ボスは俺を捨てたのか? ならば俺は、ボスの息子(ソリッド・スネーク)を鍛えて、本物を地獄へ送ってやる」と。

こうして、かつての相棒は復讐者となり、後の親子対決の舞台が整えられていくわけです。

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【1995年~1999年】 MG1 & MG2毒親化する英雄と終わらない戦争ビジネス

1990年代に入ると、ビッグ・ボスの暴走は止まらなくなります。

南アフリカに「アウターヘブン」、中央アジアに「ザンジバーランド」という武装国家を作り、世界を核で脅し始めます。

マッチポンプの戦争経済:地獄のサイクル

この時期の彼の思想は、もはや狂気です。

彼は「兵士が活躍できる場所」を維持するために、

「世界中で永遠に戦争が続くこと」

を望むようになります。

  1. 戦争を起こす。
  2. 戦争で親を失った子供(戦争孤児)を保護する。
  3. その子供を自分の施設で兵士として育てる。
  4. その兵士がまた戦争を起こす。

この地獄のサイクル。

彼は孤児たちに「優しいおじさん」として接し、恩を売って、将来の兵士としてリサイクルする。

完全にマッチポンプです。

自分の存在意義のために、他人の不幸を再生産し続ける。

これはもう「悪」以外の何物でもありません。

ソリッド・スネークとの対決:親殺しの儀式

1995年の「アウターヘブン蜂起(MG1)」で、新米隊員ソリッド・スネークが送り込まれます。

表向きの司令官であるビッグ・ボス(本物)は、ソリッドが失敗することを期待していましたが、ソリッドが優秀すぎて最深部まで到達してしまった。

 

そこで待ち受けていたラスボス、アウターヘブンの首領。

倒された彼こそが、あの影武者「ヴェノム・スネーク」でした。

本物のビッグ・ボスは、友であり自らの分身であったヴェノムを見殺しにして逃亡します。

どこまでも非情です。

 

そして1999年、「ザンジバーランド騒乱(MG2)」。

ついに本物のビッグ・ボスがソリッドの前に立ちはだかります。

「戦いの味を知った者は、決して戦場を去ることはできない。私は彼らに『戦場』という生きる場所を与えているのだ」

自分のエゴを正当化する父親に対し、ソリッドは即席の火炎放射器(ライターとスプレー)で彼を焼き尽くします。

英雄は、自分のクローンである息子に焼かれて敗北しました。

こうして、独裁者の野望は潰えたかに見えました。

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【2014年】 MGS4 Guns of the Patriots老いた男たちの和解と終焉

物語はまだ終わりません。

2014年、『MGS4』のエンディング。

愛国者達のAIネットワークが破壊され、全てが終わったアーリントン墓地。

ザ・ボスの墓前に、死んだはずのビッグ・ボスが現れます。

墓前での再会:長い旅の終わり

死んだと思われていたビッグ・ボスが、老いたソリッド・スネークの前に現れます。

彼は植物状態になった宿敵・ゼロ(なんと105歳!)を車椅子で連れてきていました。

 

ここで語られたのは、あまりにも切ない真実でした。

ゼロもビッグ・ボスも、元々は同じ夢を見ていたこと。

ザ・ボスの遺志を継ごうとして、ボタンを掛け違え、意地を張り合い、世界を巻き込んだ大喧嘩をしてしまったこと。

 

ビッグ・ボスは、自らの手でゼロの生命維持装置を止めます。

それは復讐ではなく、友への、そして自分たちが作り上げてしまった「愛国者達」という呪われたシステムへの引導でした。

ザ・ボスの真意:あるがままの世界

半世紀の時を経て、ビッグ・ボスはようやくザ・ボスの本当の願いを理解します。

 

「世界を一つにする」とは、支配することでも、戦い続けることでもなかった。

「世界をあるがままにすること(Let the world be)。他者の意思を尊重し、昨日の敵とも手を取り合い、ただそこにある世界を見守ること」

 

彼女が望んだのは、誰も管理せず、誰も戦いを強制されない、自然な世界だったのです。

ビッグ・ボスは涙を流します。

「ボス、あんたの言う通りだ。世界を変えることじゃなかった」と。

 

彼は息子ソリッドに告げます。

「お前は男として生きろ。誰のためでもない、自分自身のために」

 

それは、彼自身が生涯一度も叶えられなかった

「兵士ではない、一人の人間としての生」

を息子に託す言葉でした。

そして彼は、ザ・ボスの墓石に寄りかかり、葉巻をくゆらせながら静かに息を引き取ります。

 

「いいものだな……」

 

最期の瞬間、彼はようやく「ビッグ・ボス」という重すぎる称号から解放され、ただの男「ジャック」に戻れたのかもしれません。

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考察私たちの中にある「ビッグ・ボス」

長くなりましたが、結局のところ、ビッグ・ボスは悪だったのでしょうか?

 

私の答えは

「彼は悪になった。でも、なりたくてなったわけじゃない」

です。

 

彼はあまりにも純粋すぎました。

仲間を愛し、師匠を愛し、それゆえに裏切りが許せなかった。

彼の行動原理は常に「大切な居場所を守りたい」という防衛本能でした。

でも、その「守る」という行為が過剰になり、攻撃へと転じてしまった。

 

これって、私たちにも覚えがありませんか?

家族を守りたいから必死に働いているのに、いつの間にか家庭を顧みなくなって家族とすれ違うお父さん。

子供の将来を心配するあまり、子供の意見を聞かずに進路を押し付けるお母さん。

 

「よかれと思ってやったこと」が、相手にとっては「悪」になる。

ビッグ・ボスの悲劇は、規模こそ世界レベルですが、構造は私たちの日常にあるすれ違いと同じなんです。

プレイヤーという共犯者

そして忘れてはいけないのが、私たちプレイヤーの存在です。

 

『MGSV』で、私たちはヴェノム・スネークとして、敵兵を拉致して(フルトン回収、楽しかったですよね?)味方にし、資源を奪い、マザーベースを大きくすることに快感を覚えました。

「核兵器を作れば他のプレイヤーに攻め込まれないぞ」

なんて考えて、核保有に手を出した人もいるでしょう。

 

その時、私たちはまさしくビッグ・ボスと同じ思考回路になっていました。

「自衛のため」

「抑止力のため」

と言い訳しながら、力を求めたのです。

 

ビッグ・ボスを悪に堕としたのは、ゼロ少佐でもアメリカ政府でもなく、

「闘争を求め続ける人間の本能」

であり、それをエンターテインメントとして消費する私たち自身だったのかもしれません。

 

2025年の今、世界を見渡せば、紛争は絶えず、AIによる管理社会も現実のものとなりつつあります。

メタルギアという作品が予言していた未来に、私たちは生きています。

 

だからこそ、ビッグ・ボスの物語は色褪せない。

「世界を変えよう」と力むのではなく、「あるがままの世界」を尊重し、隣人と手を取り合うこと。

彼が死の間際に到達したその境地こそが、今の私たちに最も必要なOSのアップデートなのかもしれません。

 

さて、そろそろ夕飯の支度をしなきゃ。

今日のメニューはカレーです。

インド人もびっくりな辛さにして、日常という戦場で戦う夫と息子のスタミナをつけてあげようと思います。

 

自分の中の「ビッグ・ボス(独りよがりの正義)」が暴走しないよう、たまには葉巻……

じゃなくて深呼吸でもして、肩の力を抜いてくださいね。

それでは、またどこかの戦場(ネットの海)でお会いしましょう。

▼メタルギアシリーズをもっと深く知りたいあなたへ

ビッグ・ボスの「影」と対をなす「光」、ソリッド・スネークの生き様を知りたくありませんか?

彼の物語は、運命に抗い続けたもう一つの英雄譚です。

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