「リメイク版のグラフィックが綺麗なのは分かったけど、操作性が『もっさり』しているって本当? 現代のゲームとして遊べるの?」
「原作を何十周もしたコアファンだけど、小島監督がいないMGSなんて魂の抜けた仏像じゃないかと疑心暗鬼になっている」
「ストーリーが重厚すぎて、一度クリアしただけでは『ザ・ボス』の真意や『賢者の遺産』の行方が完全に理解できず、モヤモヤしたまま放置している」
あなたは今、こんな悩みや疑問を抱えたまま、購入ボタンの前で指を止めていませんか?
あるいは、クリア後の喪失感の中で、ネットの海を漂っていませんか?
最近のゲームは情報量が膨大です。
特に本作のような歴史的名作のリメイクとなると、ネット上には「思い出補正のかかった過剰な賛美」や「変化を許さない過激な批判」、あるいはアフィリエイト目的の「薄い攻略情報」が溢れかえっています。
本当に知りたい「手触り」や「物語の深淵」に辿り着くのは至難の業。
断片的なWikiの情報を継ぎ接ぎして理解したつもりになるのは、あまりにも勿体無い時間の浪費です。
ご安心ください。
この記事を書いている私は、かつてPS2版のオリジナルを擦り切れるほど遊び倒しました。
現在はフルタイムの仕事と家事の合間を縫って、このリメイク版『METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER』を発売日から今日(2025年12月25日)まで、
累計数百時間プレイし続けています。
通勤電車の中では攻略サイトではなく海外の考察フォーラムを読み漁り、息子が寝静まった深夜のリビングでツェリノヤルスクの泥水をすすり続けた「現役の戦場カメラマン(自称)」です。
この記事では、以下の内容を徹底解説します。
- Unreal Engine 5が生み出した映像美の真価と「生理的」な没入感
- 賛否両論ある「操作システム」の詳細比較と選び方
- エンディングの完全ネタバレ解説と物語の核心
- クリア後の年表で判明した「シリーズ正史の再定義」と隠されたイースターエッグ
この記事を読むことで、あなたはネット上のノイズに惑わされることなく、「MGSΔ」が自分にとって買いなのかどうかを即座に判断できるようになります。
また、既プレイの方にとっては、物語の裏側に隠された伏線を理解し、2周目のプレイが10倍味わい深いものになることをお約束します。
さあ、迷いは捨ててください。
この記事を読み終える頃には、あなたは再び迷彩服に袖を通し、あの過酷で美しいジャングルへと飛び込みたくてたまらなくなっているはずです。
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第1章:2025年のツェリノヤルスクへようこそ製品概要とプラットフォームの選択

通勤電車の揺れに身を任せながら、ふと窓ガラスに映る自分の顔を見て思うんです。
「あぁ、私の顔のシワもUnreal Engine 5ならもっと高精細に描画されるのかしら」って。
……嫌な想像ですね、忘れてください。
さて、2025年も師走。
街はクリスマス一色ですが、私の頭の中はジャングルの湿気で充満しています。
8月28日の発売から4ヶ月。
数多のパッチ修正を経て、本作『METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER』(以下、MGSΔ)の評価は、揺るぎないものとなりました。
それは「懐古」ではなく「保存」であり、最新技術による「原点の再定義」でした。
まずは、これから戦場へ赴く皆さんのために、基本情報と「どのハードで遊ぶのが正解か」という、ある意味最初のミッションについて解説します。
平均的な会社員のお財布事情からすると、8,000円オーバーの出費は勇気がいりますからね。
失敗は許されません。
基本スペック・エディション情報
- タイトル: METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER
- 開発: コナミデジタルエンタテインメント / Virtuos / PlatinumGames(協力)
- エンジン: Unreal Engine 5 (Nanite, Lumen採用)
- 発売日: 2025年8月28日
- 価格:
- スタンダードエディション: 8,580円(税込)
- デジタルデラックスエディション: 9,790円(税込)
プラットフォーム別 パフォーマンス&コンテンツ差異比較
ここが非常に重要です。
ハードウェアごとの性能差だけでなく、「遊べるミニゲームが違う」という、平成初期のような販売戦略が取られています。
ご自身の環境に合わせて最適な選択をしてください。
| 特徴 | PlayStation 5 / PS5 Pro | Xbox Series X | Xbox Series S | PC (Steam) |
|---|---|---|---|---|
| 解像度 | PS5: 可変4K (DRS) Pro: PSSRによる超解像4K | 可変4K (安定) | 1080p - 1440p | 設定次第 (ネイティブ4K可) |
| FPS | PS5: 可変60fps Pro: 安定60fps (Qualityモード) | 安定60fps | 30fps固定 | 最大60fps上限 (MOD解除可) |
| 限定特典 | 猿蛇合戦 『サルゲッチュ』コラボ 隠しで『Astro Bot』登場 | ボム蛇合戦 『ボンバーマン』コラボ 完全新規 | ボム蛇合戦 『ボンバーマン』コラボ | 猿蛇合戦 『サルゲッチュ』コラボ |
| 所感 | コントローラーの振動が凄い。 Proなら画質最強。 | クイックレジュームが神。 育児の合間に最適。 | コスパ最強。 画質はそこそこ。 | 廃スペPC持ちなら一択。 MOD沼へようこそ。 |
【2025年12月現在の状況分析】
発売当初、SNSで「PC版が重すぎてスネークがカクつく」「PS5版の森が濃すぎて処理落ちする」なんて阿鼻叫喚が聞こえましたが、9月〜11月の怒涛のパッチ配信(Ver.1.1.4, 1.2.1等)で劇的に改善されました。
特にPS5 Proをお持ちのブルジョワな皆様、おめでとうございます。
Patch 1.2.1以降、「画質優先モード」でもヌルヌル動くようになりました。
私のボーナスは家のローンの繰り上げ返済に消えましたが、Proで見るジャングルの雨は、長崎の実家で見ていた梅雨の雨より美しいと評判です。
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第2章:「Δ」がもたらした変革システムとグラフィックの深淵

タイトルにある「Δ(デルタ)」。
数学や物理では「変化量」や「差分」を意味します。
でも、「構造を変えずに量を変える」という開発者の言葉には、もっと深い哲学を感じませんか?
構造(=物語や魂)はそのままに、量(=情報量、解像度、痛み)を増幅させる。
それは、思い出補正という名の美化フィルターを、最新技術でぶん殴って「現実」にする作業だったのです。
1. Unreal Engine 5 が描く「生理的な」ジャングル
「綺麗になった」なんて言葉で片付けてはいけません。
MGSΔのグラフィックは、もはや「生理的」です。
NaniteとLumen:空気の重さを描く
原作(PS2版)では、森の木々や草花は「書き割り」のような板ポリゴンで表現されていました。
それはそれで味がありましたが、今回は違います。
Nanite技術により、草の一本、石ころの一つまでが独立した3Dモデルとして存在しています。
そしてLumenによる動的ライティング。
雲が太陽を遮った瞬間、森全体がスッと薄暗くなり、空気が冷たくなるような錯覚を覚えます。
湿度まで伝わってくるようなジメジメ感。
這いつくばった時の泥の匂いまでしそうです。
この「環境の圧力」こそが、サバイバルの緊張感を何倍にも引き上げています。
「傷跡システム(Battle Damage)」:履歴書としての身体
私が個人的に最も衝撃を受け、そして心を痛めたのがこれです。
スネークが受けたダメージが、すべて身体に残るんです。
- 消えない傷
銃で撃たれれば弾痕が、ナイフで斬られれば裂傷が、火で焼かれればケロイドが。
治療しても「跡」として残り、エンディングまで消えません。 - 服の経年劣化
泥汚れは当たり前。
水に濡れれば重くなり、匍匐を繰り返せば肘や膝の布が擦り切れ、破れていきます。
下手なプレイをすればするほど、スネークはボロボロになっていく。
ステルスの達人が操るスネークは綺麗なままですが、私のようにゴリ押しで進むプレイヤーのスネークは、もう見てられないほど満身創痍になります。
「スネーク、ごめんね……私が下手なばかりに……」
と、深夜のリビングで画面に向かって謝った回数は数え切れません。
プレイヤーの苦闘の歴史が、そのまま主人公の肉体に刻まれる。
これはある種の「業」の可視化です。
2. 操作性のジレンマ:便利さと不便さの境界線
「昔のゲームは操作が難しいから燃える」
という意見と、
「今の時代にそんなストレスいらない」
という意見。
永遠の論争ですね。
MGSΔはこの難題に対し、
「どっちも用意するから好きな方を選びなさい」
というパワープレイで回答しました。
【New Style(ニュースタイル)】現代への適応
- 視点
最近のTPS(MGSVやバイオハザードREなど)と同じ、肩越しのビハインドビュー。 - 最大の特徴
「武器を構えたまま動ける(カニ歩き)」。
これです。
原作では撃つ時に足が止まりましたが、今回は動きながら撃てます。
さらに「中腰歩き」も追加。 - 感想
圧倒的に遊びやすい。
正直、家事や仕事で疲れた夜に遊ぶならこっちです。
直感的に動けるので、純粋にアクションゲームとして楽しめます。
ただし、視界が広くて索敵しやすいため、敵AIも強化されていて結構好戦的です。
【Legacy Style(レガシースタイル)】原作への回帰
- 視点
エリアごとにカメラ位置が固定されている、あの懐かしの俯瞰視点。 - 最大の特徴
「撃つ時は止まる」。
不便です。
でも、この不便さが「見えない場所に敵がいるかもしれない恐怖」を生むんです。 - 感想
こっちは「体験」重視。
映画のようなカメラアングルを楽しめますが、操作には慣れが必要です。
昔取った杵柄で挑みましたが、指が動かなくて老いを感じました。
3. UIの進化:ストレスだけを取り除く魔法
メニュー画面を開いてカモフラージュを着替える……
あの「着せ替えごっこ」の手間が、劇的に改善されました。
- クイックチェンジ
十字キーで瞬時に迷彩変更。
これのおかげで、草むらから岩場へ移動する一瞬で服を着替えるという、早着替えギネス記録並みの芸当が可能になりました。 - 食事の可視化
何を食べればどれくらいスタミナが回復するか、数値で見えるようになりました。
主婦としては、カロリー表示も欲しかったところですが(笑)。
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第3章:増築された遊びの迷宮追加要素と隠しモード

リメイク版の追加要素は、単なるオマケの域を超えています。
「そこまでやる?」
と開発者にツッコミを入れたくなるレベルの充実ぶりです。
オンラインモード「FOX HUNT」:究極の鬼ごっこ
10月30日のアップデートで追加されたこのモード。MGO(メタルギアオンライン)とは全く別物です。
「サバイバルかくれんぼ」とでも言いましょうか。
- ルール
侵入者(Prey)と追跡者(Hunter)に分かれての非対称対戦。 - 面白さ
撃ち合いじゃないんです。
侵入者はカモフラージュで風景に溶け込み、追跡者は足跡や音、鳥が飛び立つ動きなどを頼りに探す。 - 現状
最初はマッチングしづらかったですが、今は改善されています。
私も夜な夜な参戦していますが、動かずにじっとしている時の心拍数の上がり方が異常です。
健康診断の心電図よりドキドキします。
プラットフォーム別ミニゲームの狂気
- 猿蛇合戦 (Snake vs Monkey) [PS5/Steam]
あの『サルゲッチュ』コラボが復活。
しかも、ピポサルの中に『Astro Bot』のキャラが隠れているという小ネタ付き。
捕まえると限定マスクが貰えるんですが、このアストロ君、動きが速すぎて捕まえるのに3日かかりました。 - ボム蛇合戦 (Snake vs Bomberman) [Xbox]
まさかのボンバーマン。
スネークが爆弾魔になるという、字面だけ見ると危険すぎるコラボ。
オタコンとメイ・リンの新録ボイスナビゲーションがついているのが羨ましい!
Xbox版を買わなかったことを少し後悔しました。
悪夢の具現化「GUY SAVAGE Δ」
原作ではスネークが牢屋で見る悪夢として収録されていた、謎のハック&スラッシュゲーム。
これがプラチナゲームズの手によって、単体の新作アクションゲーム並みに作り込まれて復活しました。
二刀流でゾンビもどきをなぎ倒す爽快感。
本編のステルスで溜まったストレスをここで発散しろという配慮でしょうか?
クリア後のお楽しみとして、これだけで数時間は遊べます。
収集要素:ガーコを探せ
原作のケロタン(カエル人形)64体に加え、新たにガーコ(アヒル人形)64体が追加されました。
このガーコ、配置場所がいやらしいんです。
ギリースーツを着て森に同化していたり、水底に沈んでいたり。
全部見つけると、ケロタンの鳴き声が聞こえるようになる「GA-KO迷彩」が貰えますが、これを見つける労力と報酬が見合っているかは……
愛が試されますね。
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第4章:【完全ネタバレ】スネークイーター作戦涙と泥の全記録

※これより先は「警告区域」です。
物語の核心、結末、すべてを話します。
未プレイの方は、今すぐブラウザバックしてダウンロード版を購入してください。
いいですか?
進みますよ?
UE5で描かれるMGS3の物語。
それは、脚本こそ一言一句変わっていませんが、解像度が上がったことで「情報の密度」が変わり、結果として「感情の重さ」が変わりました。
私が体験した、新たなスネークイーター作戦の記録です。
1. ヴァーチャスミッション:雨の匂いと絶望の閃光
1964年8月24日。
高度3万フィートからのHALO降下。
雲を突き抜けるシーン。
ボリューメトリッククラウド技術のおかげで、冷気と湿気が画面越しに伝わってきます。
ジャングルに降り立ったスネークの顔は、まだ若々しく、任務への自信に満ちていました。
しかし、吊り橋での再会。師匠ザ・ボスとの対面。
雨です。
リメイク版の雨の表現は異常です。
スネークの頬を叩く雨粒、泥にまみれる軍服。
ボスに腕を折られ、川へ突き落とされるシーン。
痛い。
見ているだけで関節が痛むようなリアリティ。
そして、ヴォルギン大佐が放った小型核弾頭「デイビークロケット」。
炸裂音と共に広がる閃光。
キノコ雲を見上げるスネークの瞳に映る絶望。
PS2版ではポリゴン越しに「想像」していた感情が、4K画質で「現実」として突きつけられました。
この瞬間、スネークの中で何かが壊れた音が聞こえた気がしました。
2. スネークイーター作戦:復讐という名の巡礼
1週間後。
再びソ連領へ。
今度のスネークに余裕はありません。
ジャングルはより深く、暗く、恐ろしい場所に変わっていました。
若きオセロットの「青さ」
山猫部隊を率いるオセロット。
彼のガンプレイ(ジャグリング)は、モーションキャプチャの進化でより滑らかになりました。
でも、どこか「カッコつけている」感じが出るんです。
リロードの瞬間に見せる焦りや、スネークに翻弄された時の悔しそうな顔。
後のシリーズで見せる老獪な姿とは違う、承認欲求の塊のような若者。
彼が可愛らしく思えてくるのは、私も歳をとったせいでしょうか。
コブラ部隊:感情という名の怪物たち
UE5の恩恵を最も受けたのは、ボス戦の演出です。
- ザ・ペイン(痛み)
彼がまとうスズメバチの群れ。
あれ、一つ一つが個別のパーティクルで描画されているんです。
集合体恐怖症の人は気絶するレベル。
ショットガンで吹き飛ばした時の散らばり方がリアルすぎて鳥肌が立ちました。 - ザ・フィアー(恐怖)
ステルス迷彩の透明感。
高精細な森の中で、空間のわずかな「ゆらぎ」を見つけるのは至難の業。
3Dオーディオで、頭上の枝が揺れる音を聞き分ける……
完全にホラーゲームです。 - ジ・エンド(終焉)
100歳のスナイパー。
彼との戦いは1時間にも及びました。
森に差し込む木漏れ日、スコープのレンズ反射、そして老人の顔に刻まれた年輪のようなシワ。
静寂の中での心理戦。
彼を倒した時、敵を倒した高揚感よりも、偉大な自然の一部を壊してしまったような喪失感がありました。 - ザ・フューリー(激情)
坑道を焼き尽くす炎。
熱で空間が歪むヒートヘイズ表現が凄まじく、画面を見ているだけで汗ばんでくるほど。
視界を奪われる恐怖は、まさに「激情」そのものでした。
喪失の瞬間:右目を失う痛み
グロズニィグラードでの拷問。
ここもグラフィック向上の弊害(?)で、直視できないほど痛々しい。
そして、EVAを守るためにスネークの右眼が撃ち抜かれる瞬間。
画面が赤く染まり、視界の右半分が暗くなる。
これ、演出だけじゃないんです。
これ以降のプレイ中、
一人称視点にすると本当に右側が見えにくくなる
んです。
距離感が掴めなくなる。
プレイヤー自身も「身体の一部を失う不自由さ」を共有させられる。
この没入感の設計には、開発者のドS心を感じざるを得ません。
ザ・ソロウ:罪悪感のパレード
川を進むスネークの前に現れる亡霊たち。
私が殺してきた敵兵たちが、列をなして歩いてきます。
首から血を流す者、焼かれた者。
殺害数が多いほど行列は長くなる。
私は……
ええ、長かったですよ。
5分くらい歩かされました。
亡霊たちの
「痛いよぉ」
「なんで殺したんだ」
という囁きが、3Dオーディオで耳元を回る。
精神的に削られます。
これはゲーム側からの「暴力への問いかけ」ですね。
3. 最終決戦:白と赤のコントラスト
ヴォルギンとシャゴホッドを葬り去った後。
辿り着いたのは、白い花が一面に咲く「ロコヴォイ・ビレッグ」。
風に揺れる数千本のオオアマナ(Star of Bethlehem)。
スネークとボスが動くたびに、花が踏まれて倒れていく物理演算。
美しすぎて、逆に残酷さが際立ちます。
CQCの師弟対決。
10分間。
言葉はいりません。
そして、決着の時。
倒れたボスは、賢者の遺産を渡し、自らの銃「パトリオット」をスネークに託します。
「私を撃て」
画面にはボタン表示が出ません。
ムービーだと思って見ていると、何も起きないんです。
自分で、□ボタンを押さなければならない。
愛する師匠を、自分の指で殺さなければ物語が終わらない。
震える指でボタンを押した瞬間。
銃声。
白い花畑が、ボスの血と夕日で真っ赤に染まっていく。
舞い散る花弁。
この色彩の変化。
白から赤へ。
無垢から罪へ。
リメイク版の映像美が、この悲劇を芸術の域まで高めていました。
4. エンディング:一筋の涙の重み
帰還したスネークは大統領から「ビッグボス」の称号を与えられます。
でも、彼の目は死んでいます。
EVAが残したテープで明かされる真実。
ザ・ボスは裏切り者ではなかった。
アメリカ政府の命令で汚名を被り、愛する弟子に殺されることまでを含めて任務を全うした、「真の愛国者」だった。
彼女は、世界を一つにするために、自ら世界中から憎まれる役を選んだ。
ザ・ボスの墓前。
花を供え、敬礼するビッグボス。
その瞳からこぼれ落ちる、一筋の涙。
UE5で描かれた肌の質感、涙の透明感。
それが、言葉にならない彼の悲しみを、雄弁に語っていました。
私はこのシーンで、テレビの前で号泣しました。
隣で見ていた夫が「大丈夫か?」と引くくらい泣きました。
だって、あまりにも救いがない。
でも、あまりにも美しい自己犠牲。
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第5章:時空を超えた考察真実

さて、ここからは少し「俯瞰的」な話をしましょう。
物語の余韻に浸りながらも、一歩引いて全体を見た時に浮かび上がる、MGSΔがシリーズにもたらした「変革」についてです。
1. 『ポータブル・オプス』の正史化という衝撃
クリア後のエンドロール、皆さんちゃんと見ましたか?
流れる年表の中に、とんでもない記述がありました。
1970年:サンヒエロニモ半島事件
これ、PSPで発売された『メタルギアソリッド ポータブル・オプス(MPO)』のことです。
長年、小島監督が直接関わっていない作品として、ファンの間では「パラレルワールド扱い」や「なかったこと」にされがちでした。
しかし、MGSΔはこれを公式年表に刻み込みました。
これは単なるファンサービスではありません。
「ビッグボスがFOXHOUNDを作り、最初の仲間を集めた物語」
を正史として確定させることで、MGS3から『ピースウォーカー』への繋がりを強固にする、歴史の修復作業なんです。
コナミの本気を感じました。
2. ザ・ボスの「傷」が語る母性
高解像度になったザ・ボスのモデル。
彼女の腹部にある大きな傷跡をよく見ると、
蛇が這うような独特の形状
をしていることが分かります。
この傷は、戦場で帝王切開をしてオセロットを産んだ時のもの。
「蛇(スネーク)」を生み出した傷跡が、「蛇」の形をしている。
そして、その息子オセロットもまた「蛇」のような生き方をする。
さらに言えば、MGSΔではスネーク(ビッグボス)もまた、プレイヤーの操作次第で身体に無数の傷を負います。
終盤のスネークの傷だらけの姿は、まるでザ・ボスの痛みを継承したかのようです。
傷跡というビジュアル言語を使って、親子の因縁と業の継承を描く。
これは「遺伝子(GENE)」ではなく「傷(MEME)」による継承の物語とも言えますね。
3. ザ・ソロウとサイコ・マンティスの「血の繋がり」
ザ・ソロウ戦での彼の動き、見ましたか?
空中に浮遊する挙動、丸眼鏡の光り方。
あれ、『MGSV』に登場する「第三の子供(若きサイコ・マンティス)」にそっくりに調整されています。
ファンの間では昔から
「ザ・ソロウはマンティスの父親では?」
という説がありましたが、本作の演出はそれを強力に裏付けています。
死者と交信する父と、生者の殺意に感応する息子。
このサイキックの血脈もまた、悲劇の連鎖の一部なのかもしれません。
4. 隠されたイースターエッグに見る「開発者の愛」
小島監督不在で作られた本作ですが、開発チームの愛は本物です。
- ゴジラ70周年
パラメディックとの無線会話。
原作では「ゴジラ生誕50周年」と言っていたのが、MGSΔの発売年(2025年)に合わせて
「生誕70周年」
に変更され、さらに『ゴジラ-1.0』を意識したセリフになっています。
これ、わざわざ声優さんを呼んで新録したんですよ?
その拘りに脱帽です。 - 144.75
牢屋で一人称視点にすると見えるザ・ソロウのプレート。
そこに書かれた周波数に無線を合わせると鍵が開く。
このギミックもしっかり残っています。 - タイムパラドックス
オセロットを殺すとゲームオーバーになり、「未来が変わってしまった!」と怒られる。
これも健在。
原作の面白さを絶対に損なわないという、開発チームの執念を感じます。
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第6章:発売から4ヶ月今、MGSΔをどう評価すべきか

2025年12月現在。お祭り騒ぎが落ち着いた今だからこそ、冷静な評価が下せます。
アップデートによる成熟
発売当初のバージョン(Ver.1.0)は、正直に言えば不安定でした。
PC版のクラッシュ、PS5版のフレームレート低下。
しかし、開発チームは逃げませんでした。
- Ver.1.1.X
致命的なバグの修正。 - Ver.1.2.1
オンラインモード実装、PS5 Pro対応、PC版最適化。 - Ver.1.2.3
バランス調整。
今のバージョンなら、どのプラットフォームでも快適に遊べます。
特にPS5 Proでの体験は、家庭用ゲーム機の到達点と言っても過言ではありません。
総評:懐古ではなく、保存
批判的な意見もあります。
「操作性が古い」「ロード画面(暗転)が残っているのは時代遅れだ」と。
確かに、MGSVのようなシームレスなオープンワールドではありません。
エリア移動のたびに暗転します。
でも、私はそれで良かったと思います。
もしマップを繋げてオープンワールドにしたら、それはもう「MGS3」ではなくなってしまう。
あのエリアごとの緊張感、カメラワーク、テンポ。
それら全てを含めて「MGS3」という作品なんです。
MGSΔは、リメイクというよりは「デジタル文化遺産の修復保存」です。
色褪せた名画を、最新の絵の具で塗り直して、後世に残す作業。
その意味で、本作は100点満点中、120点の仕事をしました。
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結びまだ見ぬ蛇たちへ
長々と語ってしまいましたが、ここまで読んでくださった貴方は、きっと「スネークの血」に惹かれている同志でしょう。
『METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER』。
それは、英雄を殺す物語であり、時代に翻弄された者たちの鎮魂歌です。
20年前、ブラウン管の中で涙した少年少女たちも、今では私のように社会の荒波に揉まれ、親になり、あるいは責任ある立場になっていることでしょう。
大人になった今だからこそ、分かる痛みがあります。
ザ・ボスの
「誰にも理解されなくていい、ただ任務を全うする」
という孤独な決意が、痛いほど胸に刺さります。
まだプレイしていない方。
年末年始の休みは、実家への帰省もいいですが、ツェリノヤルスクへの帰還はいかがですか?
そこには、泥と雨と、そして世界で一番悲しくて美しい「任務」が待っています。
それでは、戦場でお会いしましょう。
あ、FOX HUNTで見かけても、私のことは撃たないでくださいね。
反射神経の衰えた主婦には優しくしてください。
いいセンスだ。
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