「サラマンダーより、ずっとはやい!!」
この言葉を聞くと、古傷が痛んで夜も眠れない。
ヨヨ王女の心変わりが許せず、何十年経ってもスクウェア(現スクウェア・エニックス)の方角に足を向けて寝られない。
「NTR(寝取られ)」や「悪女」というネットの評判だけで、実はこのゲームの結末や真意を深く知らないまま大人になってしまった。
そんな「オレルスの亡霊」と化している皆さん、お疲れ様です。
そして、まだプレイしたことはないけれど、その悪名高さに惹かれてこの記事にたどり着いた物好きな皆さんも、ようこそ。
バハムートラグーン。
1996年の発売から、来年2026年でまさかの30周年を迎えます。
最近のゲームは映像も綺麗だし、ストーリーも複雑ですよね。
でも、この『バハラグ』ほど、プレイヤーの精神をダイレクトに、かつ物理的に殴ってくるゲームを私は他に知りません。
ネットで検索しても出てくるのは
「ヨヨはビッチ」
「胸糞ゲー」
といった断片的な罵倒ばかり。
「結局、物語はどう終わったの?」
「開発者は何を考えてこんな悲劇を作ったの?」
そんなモヤモヤを抱えたまま、日々の満員電車に揺られているのは時間がもったいないですよ。
私ですか?
私は都内で働く40代の兼業主婦です。
小学生の息子と、たまに会話が噛み合わない夫、そして義両親と同居しながら、片道1時間の通勤電車で揉みくちゃにされる日々を送っています。
でも、ただのおばさんじゃありません。
この『バハムートラグーン』を発売当時にリアルタイムでプレイしてトラウマを植え付けられ、大人になってから「人生の酸いも甘いも」を知った上でもう一度プレイし直して号泣した、筋金入りの
「オレルス研究家」
でもあります。
副業でライターをしている私が、主婦の目線とゲーマーの執念で、この物語を骨の髄までしゃぶり尽くしました。
この記事では、単なるあらすじ紹介ではなく、物語の始まりから衝撃の結末までを、当時の開発者インタビューや裏設定を交えて、時系列順に完全ネタバレで解説します。
さらに、なぜヨヨはあんな行動をとったのか?
あのエンディングは何を意味していたのか?
を、40代女性のリアリズムで徹底的に解剖します。
この記事を読み終わる頃には、あなたの長年のトラウマは「深い理解」へと変わり、もしかしたらヨヨのことが少しだけ、ほんの少しだけ好きになれるかもしれません。
そして、ゲームクリア後のような、不思議な爽快感と共に明日を迎えられるはずです。
さあ、心の準備はいいですか?
忘れられない「痛み」の旅に出かけましょう。
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第1章:1996年スクウェアが描いた「青春の墓標」

1-1. 黄金期が生んだ「異端児」
まず、時計の針を少し戻しましょう。
2025年11月の今、レトロゲームブームが再燃していますが、90年代半ばのスクウェアといえば、まさに「神々の時代」でした。
『ファイナルファンタジーVI』
『クロノ・トリガー』
など、夢と希望に溢れた名作が次々と生まれていた時代です。
そんな中で産声を上げた『バハムートラグーン』。
開発スタッフを見てください。
- ディレクター:野島一成さん
- シナリオ:鳥山求さん
後に『FF7』や『FF10』、『キングダムハーツ』といった世界的大ヒット作を手掛けることになる、当時の「若き天才集団」です。
彼らが目指したのは、王道ファンタジーの「破壊」でした。
「勇者が魔王を倒して、お姫様と結ばれてハッピーエンド? そんなの嘘っぱちだよね」
そんな若さゆえの尖ったナイフのような精神が、この作品には詰まっています。
1-2. 開発者の「実体験」という猛毒
これ、あまり知られていないんですが、このゲームのストーリーには
「開発スタッフの実体験」
が反映されているんです。
当時のインタビューで語られているんですが、
「友人に裏切られたり、女性に振られたりした経験」
をそのままシナリオに織り込んだそうで。
つまり、私たちがこのゲームで感じる「胸がえぐられるような痛み」は、作り物のドラマじゃなくて、
誰かのガチの失恋の痛み
そのものなんですよ。
そりゃあ、30年経っても傷が癒えないわけです。
リアルな怨念……
いえ、情念が籠もっているんですから。
1-3. 「落ちたら死ぬ」世界オレルス
物語の舞台設定も秀逸です。
空に浮かぶ島々「ラグーン」で構成された世界、オレルス。
ここには「大地」がありません。
空の下は無限の闇。落ちたら二度と戻れない死の世界です。
人々は、狭い浮遊島にしがみつくように生きています。
これって、「足場のない不安」のメタファーですよね。
常に誰かに、何かにすがっていないと生きていけない。
そんな極限状態の心理が、登場人物たちの歪んだ恋愛感情や依存心を生み出しているんです。
東京の満員電車でつり革にしがみついている私たちと、本質的には変わらないのかもしれません。
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第2章:ストーリー完全解説【序盤】約束という名の呪い

ここからは、物語を時系列順に追っていきます。
情報の欠損なし、手加減なしのフルコースです。
2-1. プロローグ:カーナ城陥落と「果たされぬ約束」
物語は、絶望的な敗戦から始まります。
軍事国家「グランベロス帝国」が、世界統一を掲げて侵攻を開始。
ターゲットは、主人公たちの故郷「カーナ王国」です。
カーナ戦竜隊の若き隊長ビュウ(主人公)と、王女ヨヨ。
二人は幼馴染であり、互いに淡い恋心を抱いていました。
帝国の圧倒的な戦力の前に、カーナは成す術なく蹂躙されます。
「守護竜バハムートさえ目覚めれば……!」
二人は神殿へ走りますが、ヨヨの「ドラグナー(竜と心を通わせる能力者)」としての力は未熟で、バハムートは沈黙したまま。
そこへ現れたのが、帝国皇帝サウザーとその右腕、将軍パルパレオス。
ビュウは叩きのめされ、カーナ王は殺害され、ヨヨはサウザーによって連れ去られてしまいます。
ここで絶対に覚えておいてほしいのが、「思い出の教会」のエピソードです。
幼い頃、ビュウとヨヨは「いつか二人であの教会に行こうね」と約束していました。
「好きな人とあの教会に入ると、永遠に結ばれるんだって」
そんな、少女漫画のような甘い約束。
でも、戦争によってその約束は果たされぬまま、二人は引き裂かれます。
ビュウにとって、この「果たされなかった約束」こそが生きる糧になり、そして……
後に彼を縛り付ける最強の「呪い」となるのです。
2-2. 反乱軍結成と「疑似家族」の日常
数年後。
生き延びたビュウたちは、辺境の孤島テードで「オレルス救世軍(反乱軍)」を結成。
帝国に奪われたカーナの旗艦「ファーレンハイト」を奪還し、反撃を開始します。
このファーレンハイト号での生活描写が、また素晴らしいんです。
戦争中なのに、どこか牧歌的で、人間臭い。
- マテライト
元カーナの重装兵団長。
ヨヨ姫至上主義の頑固オヤジ。
ビュウにはガミガミ言いますが、実は誰よりも寂しがり屋。
中間管理職の悲哀を感じます。 - センダック
元カーナの老召喚士。
オネエ言葉で話し、ビュウに熱烈なラブコールを送る(公式設定でビュウが好き)。
彼(彼女?)との会話イベントは、殺伐とした戦場の癒やしです。 - フレデリカ
病弱な薬売り。
ビュウに片思い中で、
「戦いが終わったら一緒に薬屋を……」
なんて死亡フラグ全開のセリフを吐きます。
彼らとのドタバタ劇を通じて、プレイヤーは「この場所こそが俺たちの家だ」と感じるようになります。
ビュウはみんなのリーダーであり、希望の星。
「ヨヨを助け出せば、また昔のような幸せな日々が戻ってくる」
そう信じていました。
プレイヤーも、ビュウも。
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第3章:ストーリー完全解説【中盤】ヒロインの「リアル」な変貌

さあ、ここからが地獄の一丁目の始まりです。
3-1. ヨヨ救出、しかし……
激戦の末、ついにビュウたちはヨヨが幽閉されている帝国の拠点を制圧し、彼女を救出します。
数年ぶりの再会。
感動の抱擁……
となるはずでした。
「ビュウ……? 来て、くれたの……?」
反応が薄い。
いや、感謝はしているんです。
でも、どこか他人行儀。
そして、彼女の口から最初に出た言葉に、全プレイヤーがフリーズしました。
「パルパレオス様は……?」
えっ?
敵の将軍の名前?
なんで?
実はヨヨ、数年間の軟禁生活中、監視役だったパルパレオスと交流を深めていたんです。
敵国で孤独に震える少女と、敵ながら彼女を一人の人間として尊重し、気遣う誠実な騎士。
……うん、分かりますよ。
40代の主婦として冷静に見れば、これは「吊り橋効果」と「ストックホルム症候群」の合わせ技です。
毎日顔を合わせるイケメン将軍と、数年間会っていない幼馴染。
心の距離がどちらに傾くかなんて、火を見るよりも明らかです。
でも、当時の少年たちにそんな残酷なリアルが受け止められるはずがありません。
3-2. 神竜の覚醒と、蝕まれる精神
救出されたヨヨは、祖国を取り戻すため、自らドラグナーとして覚醒する道を選びます。
オレルス各地に眠る神竜たち(ヴァリトラ、リヴァイアサン、ガルーダなど)を目覚めさせ、その心を自分の体に取り込んでいくのです。
でも、神竜の心って「負の感情」の塊なんですよ。
怒り、憎しみ、悲しみ。
それを生身の少女が受け止めるんです。
ヨヨは高熱にうなされ、精神的にも不安定になっていきます。
そんな極限状態で、彼女がうわ言のように呼ぶ名前。
献身的に看病してくれるビュウではありません。
「パルパレオス様……会いたい……」
さらに、スパイとして潜入した部下の情報により、ヨヨとパルパレオスが相思相愛であることが決定的になります。
艦内ではマテライトが
「ヨヨ様が敵の将軍などにたぶらかされて!」
と発狂し、クルーたちもドン引き。
ビュウはリーダーとしてポーカーフェイスを貫きますが、内心はズタボロです。
自分の船に元カノを乗せて、その元カノが今カレ(敵)の名前を呼び続けるのを聞かされる旅。
どんな罰ゲームですか、これ。
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第4章:ストーリー完全解説【核心】「三大悪女」爆誕の瞬間

ここから先は、ハンカチを用意してください。
本作が「伝説」となった決定的なシーンの連続です。
4-1. 元カレと今カレが同船する地獄
物語は急展開。
皇帝サウザーは、神竜の力に触れようとした反動で未知の病に倒れます。
カリスマを失った帝国は内部分裂。
サウザーの親友であるパルパレオスは、主君を救うため、そしてサウザーの真意を知るため、あろうことか反乱軍への合流を申し出ます。
はい、来ました。
最悪の展開です。
ビュウにとっては、恋敵を自分の船に乗せるという究極の屈辱。
しかもこのパルパレオス、メチャクチャ強いんです。
ゲーム攻略上、彼を使わない手はない。
感情的には「顔も見たくない、海(空)に突き落としたい」のに、理性(攻略)では「彼に頼らざるを得ない」。
このジレンマ!
会社で、生理的に無理な上司に頭を下げて案件を通す時のストレスに似ていますが、こっちは恋愛絡みなのでタチが悪すぎます。
4-2. 第18章「約束の地」:RPG史上最も残酷なイベント
そして運命の第18章。
舞台は、あの「思い出の教会」があるマハールです。
戦闘後、ビュウ、ヨヨ、パルパレオスの3人は教会に入ります。
ビュウとヨヨが、幼い頃に入れなかった、あの教会です。
ここでヨヨは、ビュウに向かって決定的な言葉を放ちます。
このセリフ、一字一句噛み締めてください。
「ねぇ…ビュウ。大人になるってかなしいことなの…」
「昔ね、ビュウにつれてきてもらったとき、私たちはまだ子どもだったの…。何もわからなくて、ただ夢をみることだけしかできなかった」
「でも…大人になった今…昔のまま夢を見つづけることは…できなかったの…」
彼女は、ビュウとの思い出を「子供時代の夢」として美しく保存し、そして箱にしまって鍵をかけました。
「あれは過去のこと。現実はこれよ」
と言わんばかりに。
そしてビュウの目の前で、パルパレオスと共に祭壇へ歩み寄り、愛を誓い合うのです。
プレイヤーは操作不能。
ただ画面の前で、自分が手塩にかけて守ってきたヒロインが、ぽっと出のイケメンと結ばれるのを見せつけられるだけ。
これ、ビュウの視点で見ると地獄ですが、ヨヨの視点で見ると
「過去からの卒業式」
なんですよね。
彼女にとってビュウは「守ってくれるお兄ちゃん」であり、自立するためには乗り越えなきゃいけない「過去の自分」だったのかもしれません。
4-3. 「サラマンダーより、ずっとはやい!!」の呪い
さて、ネットミームとして独り歩きしているこの名言(迷言)についても、文脈を正しく解説しておきましょう。
これは第21章付近、または回想シーンでの一幕。
ヨヨがパルパレオスの飛竜「レンダーバッフェ」に乗せてもらった時の感想です。
ヨヨ:「すごい……。こんなにはやく飛べるなんて……」
パルパレオス:「カーナの戦竜(ビュウの竜)と比べられては劣るかもしれませんが」
ヨヨ:「ううん……。サラマンダーより、ずっとはやい!!」
サラマンダーはビュウの相棒であり、プレイヤーが貴重な武器や防具を貢いで育て上げた愛竜です。
それを、悪気がないとはいえ全否定。
「元カレの軽自動車より、今の彼氏のスポーツカーの方が速くて快適!」
って無邪気に言ってるようなもんです。
さらに、「はやい」という言葉が持つダブルミーニング的な響きも相まって、ファンの間では「NTRの決定打」として語り継がれています。
艦内でも、ヨヨの部屋の近くで「苦しそうな声」が聞こえたり、マテライトが「王女の????」という謎のアイテム(なんかいい匂いがするらしい……察してください)を拾ってきたり。
「二人はもう、そういう(大人の)関係なんだよ」
という事実を、これでもかとプレイヤーに見せつけてきます。
当時の少年たちの性癖を歪めた罪は重いですよ、スクウェアさん。
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第5章:ストーリー完全解説【終盤】覇王の死と女王の覚醒

三角関係で胃に穴が空きそうですが、物語は世界の存亡をかけたクライマックスへ向かいます。
5-1. 覇王サウザーの最期
反乱軍はついに全ての神竜を目覚めさせ、サウザーの元へ。
しかし、サウザーは既に死に体でした。
彼は暴走する神竜の力を、自らの命を犠牲にして抑え込んでいたのです。
最期の時、サウザーは親友パルパレオスに一言だけ残します。
「泣くな」
これだけ言い残して、覇王は逝きます。
かっこよすぎるでしょ。
ヨヨとのドロドロ恋愛劇を見せられた後だと、この男同士のストイックな友情が清涼剤のように染み渡ります。
サウザーは決して完全な悪ではなかった。
彼もまた、神頼みの歪んだ世界を人間の手に取り戻そうと足掻いた、一人の若者だったんです。
5-2. アレキサンダー戦とヨヨの決断
そして現れる真の敵。
それは神竜たちの王「アレキサンダー」。
最高位のラグーン「アルタイル」に君臨し、他の神竜たちを封印して世界を支配しようとする、まあ分かりやすいラスボスです。
最終決戦。
アレキサンダーは強大です。
苦戦するビュウたちを見て、ヨヨが覚悟を決めます。
「私の中に、アレキサンダーを入れる…!」
彼女は、自分の体を器にしてアレキサンダーの魂を封印しようとするんです。
それは、自分の心の中で神竜たちが永遠に戦争を続けるという、地獄のような苦しみを受け入れること。
この瞬間、ヨヨは「守られるヒロイン」から、世界全ての業を背負う
「真の女王」
へと進化しました。
その横顔には、もうビュウへの甘えも、パルパレオスへの依存もありませんでした。
彼女は「個」として完成してしまったんです。
皮肉なことに、ビュウを振って、パルパレオスを愛したことで、彼女は強くなれたわけですね。
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第6章:ストーリー完全解説【結末】明日のみえぬぼくたち

6-1. 誰も幸せにならない勝利
アレキサンダーを封印し、世界は救われました。
オレルスに平和が戻ります。
でも、ここからが『バハムートラグーン』の真骨頂。
感動の大団円?
そんなものはありません。
パルパレオスの処刑
戦争が終わり、パルパレオスは一人、荒廃したグランベロス帝国へ帰ります。
サウザーを守れなかった罪悪感と、帝国が行った戦争の責任を取るためです。
彼を待っていたのは、戦争で家族を失った民衆の憎悪でした。
暴徒たちがナイフを持って彼を取り囲みます。
最強の騎士であるパルパレオスなら、そんな暴徒なんてデコピンで吹き飛ばせるはず。
でも、彼は抵抗しません。
穏やかに微笑んで、その刃を受け入れます。
「ヨヨ……」
最愛の人の名を心で呼びながら、彼は路地裏で静かに息絶えます。
……救いがない。
あまりにも救いがない。
彼はただ真面目で誠実だっただけなのに。
戦争の責任を一人で被って死ぬなんて、現実社会のトカゲの尻尾切りを見ているようで心が痛みます。
ヨヨの即位と孤独
カーナに戻ったヨヨは、女王として即位します。
彼女はパルパレオスの死を知っていたのか。
あるいは、ドラグナーの勘で感じ取っていたのか。
その表情は気丈ですが、深い孤独の色を湛えていました。
愛する男を失い、かつての恋人(ビュウ)とも別れ、神竜という爆弾を腹に抱えたまま、一生国を背負って生きていく。
「おとなになるって悲しいね」
その言葉の通り、彼女は大人になるための通過儀礼として、自分の幸福を全て支払ったのです。
等価交換にしては、代償が大きすぎやしませんかね。
6-2. ビュウの旅立ち
そして、我らが主人公ビュウ。
彼はヨヨと結ばれることもなく、カーナの英雄として称えられることも拒否します。
そりゃそうです。
元カノが女王になってる国なんて、居心地が悪すぎて一秒もいたくないでしょう。
ラストシーン。
ビュウは相棒のドラゴン(バハムート)と共に、青い空の彼方へ飛び去っていきます。
行き先は決まっていません。
仲間たちの
「ビュウ! どこへ行くんだ!」
という声だけが空に響き、物語は幕を閉じます。
スタッフロール後、プレイヤーに残されるのは
「世界は救った。でも、俺は何を得たんだ?」
という強烈な虚無感。
そして、不思議なことに、どこか晴れやかな「爽涼感」でもあります。
しがらみも、叶わぬ恋も、全部捨てて空へ行く。
それはある種の「究極の自由」なのかもしれません。
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第7章:主婦ライターによる深層考察なぜ私たちは30年も傷ついているのか
ここまでストーリーを完全ネタバレで見てきましたが、どうでしたか?
ただの「NTR」とか「悪女」って言葉で片付けるには、あまりにも重層的だと思いませんか。
最後に、40代になった今だからこそ分かる、この物語の真実を考察します。
7-1. 「ヨヨ」という鏡に映るもの
ヨヨが嫌われる理由は明確です。プレイヤー(ビュウ)の純情を踏みにじったから。
でも、彼女の視点に立ってみるとどうでしょう。
幼馴染というだけで、勝手に「将来の約束」をされ、国を救うための道具(ドラグナー)として期待され、自分の意思なんてどこにもなかった。
そんな中で、パルパレオスだけが彼女を「王女」でも「道具」でもなく、「一人の人間」として見てくれた。
そりゃあ、惚れますよ。
ヨヨの行動は「裏切り」であると同時に、周囲の勝手な期待に対する「自立宣言」だったんです。
「私はあんたたちの思い通りの人形じゃない!」という叫び。
それが、たまたま恋愛という形で表出しただけ。
私たちプレイヤーが傷つくのは、無意識のうちにヨヨを「トロフィー(冒険の報酬)」として見ていたからかもしれません。
「頑張ってボスを倒したんだから、姫は俺のものになるべきだ」という傲慢さ。
それを彼女に見透かされた気がして、私たちは逆ギレしたのかもしれません。
7-2. 「取り返しのつかない」システムとの共犯関係
このゲームの恐ろしいところは、システムそのものが「喪失」を体験させるように作られている点です。
- 取り返しのつかないエサやり
ドラゴンにあげたアイテムは戻りません。
最強のドラゴンを育てるには、自分が持っている一番いい装備を捧げなきゃいけない。
これは、「何かを得るためには、何かを捨てなきゃいけない」という人生の真理そのものです。
過ぎ去った青春が戻らないように、エサにした「エクスカリバー」は戻らないんです。 - 恋敵を使わねばならないSRPG
パルパレオスを使いたくないのに、使わないと勝てない。
これは「感情を殺して利益を取る」という、大人の社会の不条理そのものです。
「あいつのこと大嫌いだけど、仕事ができるからプロジェクトには入れるしかない」みたいな。
開発者たちは、テキストだけでなく、ゲームの手触りそのもので「大人になることの痛み」を伝えようとしたのでしょう。
天才か、あるいはサディストか。
7-3. 「おとなになるって悲しいね」の真意
2025年の今、このゲームを振り返ると、また違った味わいがあります。
「おとなになるって悲しいね」
この言葉は、単なる諦めの言葉ではありません。
「悲しみを受け入れて、それでも生きていく覚悟」
の言葉だったんじゃないかと、今の私は思うんです。
ローンの支払いとか、子供の反抗期とか、親の介護とか、理不尽な上司とか。
大人になるってマジで悲しいことや面倒なことの連続ですからね。
白馬の王子様なんて来ないし、正義が勝つとも限らない。
でも、やるしかない。
明日も電車に乗るしかない。
ヨヨもビュウも、そうやって前に進んだんです。
傷だらけになりながら、それでも自分の足で立つ。
その姿は、痛々しいけれど、やっぱり美しい。
もしリメイクされるなら、このドロドロとした人間ドラマをどう描くのか。
現代のコンプライアンス的にマイルドに修正されちゃったら嫌だな、とも思います。
あの理不尽さ、あの胸糞悪さこそが、このゲームの魂なんですから。
皆さんも、もし機会があれば、ぜひオレルスの空をもう一度飛んでみてください。
きっと、子供の頃とは違う景色が見えるはずです。
ビュウが見た空の青さが、少しは染みるかもしれませんよ。
