その他

映画『新解釈・幕末伝』感想レビュー!ネタバレ全開で挑む徹底解剖と興行分析【2026年決定版】

毎日の忙しい生活の中で、こんなモヤモヤを抱えていませんか?

  • 「久しぶりの休日に映画館で2時間も拘束されて、もしつまらなかったらどうしよう」
    と不安で、チケット予約ボタンが押せないままでいる
  • ネットの口コミを検索しても、
    「腹筋崩壊した!」
    という絶賛と
    「虚無の時間だった」
    という酷評が極端すぎて、結局どっちが真実なのか混乱している
  • 「福田雄一作品のノリは嫌いじゃないけど、最近ちょっとマンネリ気味かも……」
    と、心の中で密かに感じつつ、それを認めるのが少し怖い

映画『新解釈・幕末伝』。

 

2025年の年末に投下されたこの作品は、単なるコメディ映画の枠を超え、観る者の精神状態を試す

「踏み絵」

のような存在となってしまいました。

 

坂本龍馬や西郷隆盛という国民的英雄を「新解釈」の名の下に解体した本作は、そのあまりに振り切った作風ゆえに評価が真っ二つに分断されています。

 

この「賛否両論」の嵐の中で、本当の映画の姿が見えなくなっているのが現状です。

これは、情報過多な現代エンタメ界が抱える深刻な病理とも言えるでしょう。

 

私は長崎県出身で、実家の床の間には坂本龍馬の掛け軸が飾られているような環境で育ちました。

現在は東京でフルタイムの会社員として働きながら、副業でライターをしています。

 

エンタメ、特にコメディ映画には目がなく、話題作は必ず劇場でチェックしてきました。

 

今回は、主婦としてのシビアな金銭感覚と、長崎県民としての龍馬への愛憎入り混じる視点、そしてライターとしての分析眼を総動員し、実際に劇場でこの「事件」を目撃してきました。

 

この記事では、映画『新解釈・幕末伝』の全貌を徹底的に解剖します。

 

興行収入データの分析から、ムロツヨシさんや佐藤二朗さんら豪華キャストの怪演の詳細、そして賛否を巻き起こした

「魔の薩長同盟30分長回し」シーン

の実況中継まで、ネタバレを恐れずに網羅的に解説します。

 

単なるあらすじ紹介ではなく、劇場の空気感や観客の反応も含めた「体験」をお届けします。

 

この記事を読めば、ネット上の極端な意見に振り回されることなく、この映画が

「自分にとって観る価値があるものか」

を冷静に判断できるようになります。

 

もし観に行かないと決めた場合でも、翌日の職場の話題やSNSでの議論に乗り遅れることなく、「ああ、あのシーンね」と知ったかぶりできるレベルの知識が得られます。

 

そして何より、現代のコメディ映画が抱える課題について、ちょっと深い考察ができるようになります。

 

結論として、この映画は

「福田雄一という宗教」を信じられるかどうかのリトマス試験紙です。

 

あなたが「内輪ノリ」を愛せるなら至福の時間を、そうでないなら苦行の時間を提供することでしょう。

この記事で紹介する詳細なレポートを読めば、あなたがどちら側の人間なのか、はっきりと分かるはずです。

スポンサーリンク

果てしなきスカーレットはなぜ大爆死したのか?つまらない理由と絶望の112分を徹底解剖【感想まとめ】

序章:通勤電車の憂鬱映画館への逃避行

毎朝の通勤電車。

揺られること片道1時間。

 

東京の満員電車というのは不思議な空間です。

誰もがスマホという小さな窓を覗き込み、現実から目を背けている。

私もその一人です。

 

つり革に捕まりながら、今日の夕飯の献立(義母があっさりしたものを好むので悩みどころです)や、小4の息子の宿題チェックのこと、そして会社でのプレゼンのことを考えていると、ふと息苦しくなることがあります。

 

「私、演じてるなぁ」って。

 

会社では「デキる中堅社員」、家では「良き妻・良き嫁・良き母」。

求められる役割に合わせて、仮面を付け替える毎日。

 

そんな時、ふと目に入ったのが映画『新解釈・幕末伝』のポスターでした。

 

ムロツヨシさんが、ニヤリと笑っている。

その横には、

「誰も知らない、夜明けぜよ。でごわす。」

という、脱力感満載のコピー。

 

「英雄だって、実は適当だったかもしれない」

このコンセプトに、妙に惹かれました。

 

もし、あの坂本龍馬が、私と同じように「周りに合わせているだけ」の人だったら?

もし、西郷隆盛が「キャラ作りに疲れたおじさん」だったら?

 

そう考えたら、無性にこの映画を確認したくなりました。

これは、現代社会の閉塞感に対するガス抜きになるかもしれない、と。

 

週末、息子が夫と『ズートピア2』を観に行っている隙を見て、私は一人、別のスクリーンへと潜り込みました。

そこで目撃したのは、映画というよりは、巨大な

「社会実験」

の現場でした。

 

これから語るのは、その2時間の記録です。

1万文字近い長旅になりますが、どうぞコーヒーでも片手に、ゆっくりとお付き合いください。

スポンサーリンク

第1章:作品概要「新解釈」の正体

1-1. なぜ今、「幕末」なのか?

2020年、『新解釈・三國志』が公開された時、私は映画館でポップコーンを吹き出しそうになるほど笑いました。

 

大泉洋さんが劉備玄徳を演じ、

「なんで俺が戦わなきゃいけないの~」

とボヤき倒す。

中国の古典であり、どこかファンタジーの香りがする三国志だからこそ、その「落差」が純粋なエンタメとして成立していました。

興行収入40.3億円という大ヒットも納得です。

 

あれから5年。

福田雄一監督が次なるターゲットに選んだのが「幕末」でした。

 

企画のきっかけは、コロナ禍の自粛期間中にムロツヨシさんと福田監督が交わした

「ムロくんと二朗さん(佐藤二朗さん)で一本撮りたいね」

という約束だったそうです。

なんだか、飲み会の席で盛り上がった「いつかハワイ行こうよ!」が、数年後に本当に実現しちゃったようなノリを感じます。

 

しかし、幕末は「三国志」とは違います。

私たち日本人にとって、あまりにも「近い」のです。

ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんの世代が実際に生きていた時代。

 

そして何より、坂本龍馬や西郷隆盛、新選組といった面々は、多くの日本人にとって「アイドル」であり「精神的支柱」でもあります。

 

特に私の故郷・長崎では、龍馬さんは特別な存在です。

亀山社中があり、グラバー園があり、街のいたるところに龍馬像がある。

子供の頃から「龍馬さんはすごい人」と刷り込まれて育ちました。

 

その聖域に土足で踏み込むようなこの企画。

 

「新解釈」という名の元に行われるのは、歴史学的なアプローチではなく、

「偉人の神格化を解除し、私たちと同じレベルの『ダメ人間』に引きずり下ろすこと」です。

 

これはある種の賭けです。

成功すれば「親近感」になりますが、失敗すれば「冒涜」になる。

そのギリギリのラインを、福田監督は意図的に攻めているのです。

1-2. 「新解釈」のメソッド:歴史の破壊と再構築

この映画における「新解釈」の定義を、もう少し詳しく分解してみましょう。

私が劇場で感じたメソッドは、主に以下の3点です。

 

① 英雄の矮小化(スモール・ダウン)

カリスマ性、リーダーシップ、高潔な精神。これらを全て剥ぎ取ります。

龍馬は「まあまあ」と場を収めるだけの事なかれ主義者に。

西郷は「キャラ作り」に悩む小心者に。

「すごい人」を「すごくない人」にすることで、笑いを生み出す手法です。

 

② 現代的価値観の投影(モダン・プロジェクション)

彼らは平気で現代語を使います。

「それな」「ワンチャン」「詰んだ」。

さらには、「有給休暇」や「コンプライアンス」といった概念まで持ち出します。

これにより、時代劇特有の堅苦しさを消し去り、現代のサラリーマンコントのような空気感を作り出します。

 

③ メタフィクションの許容(第四の壁の破壊)

これが福田作品の最大の特徴かもしれません。

「これ、映画だよね?」

「尺が足りないから巻いて」

といった、作品世界の外側の事情をキャラクターが口にします。

観客に対し、

「これは作り物ですよ、フィクションですよ」

と常にウインクを送っているような状態。

 

これにより、シリアスになりそうな場面でも強制的にコメディへと引き戻されます。

 

これらのメソッドは、ハマれば爆発的な笑いを生みますが、ハマらないと「冷める」原因にもなります。

特に今回は、日本の歴史という「共有された物語」を対象にしているため、その破壊に対する拒否反応が強く出たのかもしれません。

スポンサーリンク

第2章:興行収入分析数字で見る福田ブランドの現在地

 

2-1. 数字は正直な鏡

主婦として家計を預かる身としては、数字には敏感です。

映画の興行収入もまた、その作品が社会にどう受け入れられたかを示すシビアな家計簿のようなもの。

 

2025年12月19日の公開初週。

『新解釈・幕末伝』の成績は以下の通りでした。

  • 観客動員数: 17万5,000人
  • 興行収入: 2億4,400万円
  • 週末ランキング: 初登場3位

「3位なら立派じゃない?」

そう思いますよね。

私も最初はそう思いました。

 

でも、ライバルたちを見てください。

1位は『ズートピア2』。

公開3週目にして圧倒的な強さを見せつけ、ファミリー層を根こそぎ動員しています。

2位は『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』。

映像体験を求める層が殺到しています。

世界的なIP(知的財産)の波に、日本映画が飲み込まれている構図です。

 

もっと深刻なのは、前作との比較です。

2020年の『新解釈・三國志』は、初日だけで4億円以上を稼ぎ出しました。

最終的には40.3億円。

それに比べると、今回の初動はその半分以下です。

 

これは何を意味するのでしょうか。

「福田雄一監督×豪華キャストなら、とりあえず観に行くか」

という浮動票が、激減しているということです。

2-2. 「タイムパフォーマンス」時代の映画選び

2026年1月現在の推移から予測すると、最終興行収入は

15億円〜17.5億円程度

に着地しそうです。

損益分岐点は超えるでしょうから、ビジネスとしては成功です。

しかし、「大ヒット」とは呼べません。

 

過去の福田作品の興行推移を見てみましょう。

作品名公開年最終興収
今日から俺は!!劇場版202053.7億円
新解釈・三國志202040.3億円
銀魂201738.4億円
銀魂2201837.0億円
新解釈・幕末伝2025約17.5億円(見込)
アンダーニンジャ202513.2億円

見事な右肩下がりです。

なぜ、観客は離れてしまったのか。

 

「飽きた」というのもあるでしょう。

でも、私はもっと根本的な変化を感じます。

それは、私たちが

「失敗したくない」

と強く思うようになったことです。

 

映画館で映画を観るには、大人一人2000円。

往復の交通費や食事代を含めれば5000円コースです。

そして何より、半日という貴重な時間を使います。

 

かつては

「映画館に行って、つまらなかったら文句を言いながら帰る」

というのもエンタメの一部でした。

でも今は、動画配信サービスが充実し、自宅でいくらでも面白いコンテンツが見られます。

わざわざ外に出て、お金と時間を使って「スベる」かもしれない映画を観るリスクを、多くの人が避けるようになった。

 

「絶対に面白い」と保証された『ズートピア』を選ぶか、「当たり外れが激しい」『新解釈』を選ぶか。

その選択の結果が、この数字に表れている気がしてなりません。

スポンサーリンク

第3章:キャスト徹底解剖豪華すぎる「無駄遣い」の美学

この映画、キャスト表を見るだけでお腹いっぱいになるほど豪華です。

彼らがどう料理されたのか(あるいは素材のまま出されたのか)。

一人ひとり、じっくり見ていきましょう。

3-1. 坂本龍馬(演:ムロツヨシ)

【新解釈:最強の「まあまあ」おじさん】

ムロツヨシさん、私大好きなんです。

あの独特の間、相手の懐にするりと入り込む人懐っこさ。

でも今回は、その「圧」が強すぎました。

2時間ずっと、親戚の集まりで一番酔っ払って絡んでくるおじさんの相手をしているような感覚。

 

本作の龍馬は、志なんてこれっぽっちもありません。

脱藩の理由も「実家が窮屈だから」「なんかカッコいいから」。

 

何か揉め事が起きると、具体的な解決策もないのに両手を広げて

「まあまあまあまあ」

と割って入る。

これ、現代社会の縮図ですよね。

会議で何も決められない上司、PTAの集まりで波風立てたくない保護者。

 

「わかるわー」と共感しつつも、映画の主人公としては……

もう少し「ここぞという時のカッコよさ」が欲しかった。

ムロさんの演技力が高いだけに、その「軽さ」がリアルすぎて、見ているこちらの肩が凝ってしまいました。

3-2. 西郷隆盛(演:佐藤二朗)

【新解釈:「でごわす」に囚われたスイーツ男子】

これが一番のサプライズでした。

佐藤二朗さんといえば、アドリブ全開、奇声を発して暴れまわる「怪優」のイメージ。

 

でも今回は、ボケてないんです。

ムロさんが暴走する横で、ウィスパーボイスで

「それは違うでごわす……」

と冷静にツッコむ。

 

実は西郷隆盛は、薩摩藩士としての「豪快なイメージ」を守るために無理してキャラを作っている小心者、という設定。

素に戻ると、甘いものが大好きなただのおじさんになります。

 

この「抑えた演技」が、めちゃくちゃ面白い。

同時期に公開されたシリアスな戦争映画『爆弾』にも出演されているのですが、そちらでは得体の知れない軍人を演じていて、そのギャップに脳がバグります。

「同じ人間か?」

と疑いたくなるほどの振り幅。

佐藤二朗さんの演技を見るためだけに、この映画を見る価値はあるかもしれません。

3-3. おりょう(演:広瀬アリス)★本作のMVP

【新解釈:物理最強のバーサーカー妻】

この映画のチケット代の半分は、広瀬アリスさんに支払われるべきです。

 

彼女が演じる龍馬の妻・おりょうは、史実の「賢妻」イメージを粉々に破壊します。

「シゴデキ(仕事ができる)」を通り越して、物理的に強い。

夫・龍馬を完全に尻に敷き、いざとなれば敵をプロレス技でなぎ倒す。

 

特に伝説となった「寺田屋事件」のシーン(後述します)では、女優としてのすべてをかなぐり捨てた体当たり演技を披露。

白目を剥いて絶叫し、変顔を連発。

その姿は、家事に育児に仕事に追われ、爆発寸前の世の中の母親たちの代弁者のようにも見えました。

 

「男なんて頼りにならない! 私がやるしかない!」

その気迫に、劇場中の女性客が心の中で拍手を送っていたはずです。

3-4. 岡田以蔵(演:岩田剛典)

【新解釈:人見知りの殺人マシーン】

EXILE / 三代目 J SOUL BROTHERSの岩田剛典さん。

通称・岩ちゃん。

彼が演じるのは「人斬り以蔵」。

 

この映画の中で、彼のアクションシーンだけが唯一「映画」でした。

美しい。

速い。

スタイリッシュ。

刀を振るう姿は舞のようで、一瞬だけコメディ映画であることを忘れさせてくれます。

 

しかし、ひとたび刀を収めると、女性に近づかれただけでパニックを起こしてフリーズする「コミュ障」キャラに変貌。

このギャップ萌え。

推し活として観に行くなら、最高のコストパフォーマンスを誇ります。

 

ただ、個人的には「もっと殺陣を見せて!」と叫びたかった。

コメディパートの尺を削ってでも、彼のアクションシーンを増やすべきでした。

3-5. 桂小五郎(演:山田孝之)

【新解釈:ネガティブすぎる策士】

山田孝之さんって、真面目な顔をして変なことを言うのが世界一上手い俳優さんだと思います。

「逃げの小五郎」の異名を持つ桂ですが、本作ではその解釈が極端です。

 

「痛いのが嫌」「死にたくない」

という生存本能の塊。

重厚な時代劇メイクと衣装を纏いながら、口から出るのは情けない言い訳ばかり。

 

ムロさん、佐藤さんとのトライアングル・トークで見せる、絶妙な「間」の取り方は職人芸の域。

彼がいることで、画面が締まる(締まってないけど締まって見える)効果がありました。

スポンサーリンク

第4章:ストーリー完全実況プロローグ〜忍び茶屋

ここからは、映画のストーリーを時系列順に追っていきます。

私が劇場で感じた「空気の変化」も含めて、実況中継風にお届けします。

4-1. 歴史講義という名の「言い訳」

映画は、市村正親演じる歴史学者・小石川二郎の講義室からスタートします。

 

「諸君、教科書に書かれていることが全て真実だと思っているのかね?」

市村さんのハイテンションな語り口。

往年の映画解説者・淀川長治氏を彷彿とさせます。

「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」

と言い出しそうな雰囲気。

 

このメタ的な枠組みがあることで、

「これから見せるのは嘘ですよ、フィクションですよ」

というエクスキューズ(言い訳)になっているわけです。

 

そして本編開始。

映し出されるのは、実家の布団でゴロゴロしながら

「あー、働きたくない。でも武士ってめんどくさいしなー」

と愚痴る龍馬(ムロ)。

一方、薩摩では西郷(佐藤)が愛犬・ツンに引きずり回され、

「おい! 隆盛だぞ! 西郷隆盛だぞ!」

と叫びながら画面外へフェードアウト。

 

この冒頭5分で、観客は試されます。

「この脱力したノリに、2時間付き合えますか?」

という踏み絵です。

私の隣に座っていたカップルは、この時点で少し身じろぎをしていました。

彼氏の方が「マジか…」と小さく呟いたのを、私は聞き逃しませんでした。

4-2. 勝海舟のウィスパーボイス

江戸に出た龍馬は、勝海舟(渡部篤郎)と出会います。

渡部篤郎さんの演技が、これまた独特。

ウィスパーボイスすぎて、何を言っているか半分くらい聞き取れません。

字幕が欲しいレベル。

 

龍馬が「え? 何ですか先生? もうちょっとハキハキ喋ってもらっていいですか?」とツッコむ。

この「聞き取れないボケ」が数分間続きます。

面白いんですが、ちょっと長い。

「早く黒船の話して!」

と心の中でツッコミを入れつつ、渡部さんの独特の色気に妙に惹きつけられる自分もいました。

4-3. 新選組と「忍び茶屋」の攻防

舞台は京都へ。

本作のオリジナル要素として登場するのが、くノ一・お千代(山下美月)が働く「忍び茶屋」。

現代で言うところのコンセプトカフェ(コンカフェ)です。

店員が忍者のコスプレをして接客し、「ニンニン!」とか言っちゃうお店。

 

ここに、近藤勇(小手伸也)、土方歳三(松山ケンイチ)、沖田総司(倉悠貴)の新選組トリオがやってきます。

ここで事件が起きます。

店の入り口で、入るか入らないかの押し問答が始まるのですが……。

「チャージ料が高いんじゃないか」

「いや、初回クーポンありますよ」

「期限切れてますよ局長」

「えー、じゃあやめようか。でもお千代ちゃん見たいし」

このやり取りが、体感で永遠に続きます。

5分?

いえ、もっと長く感じました。

 

スーパーのレジで、前の人が小銭を出すのに手間取っている時のような、あの焦燥感。

「早く中に入ってよ! 映画進まないじゃん!」

と心の中で叫びましたが、彼らは入りません。

これが福田流の「間」なのでしょうが、今回は少し間延びが過ぎました。

 

劇場内から、クスクスという笑い声とともに、衣擦れの音が聞こえ始めました。

観客が座り直している音です。

飽き始めているサインです。

スポンサーリンク

第5章:ストーリー完全実況寺田屋事件〜薩長同盟30分の地獄と天国

中盤戦。

ここから映画は、最高潮と最低潮(?)を同時に迎えます。

5-1. 伝説の「寺田屋事件」:広瀬アリス無双

龍馬とおりょうが潜伏する寺田屋。

幕府の捕り方が取り囲みます。

入浴中のおりょうがそれに気づく。

史実では、裸で階段を駆け上がって知らせたという有名なシーンです。

 

本作では、どう描かれたか。

お風呂に入っていたおりょうは、敵の気配を察知すると、

「チッ、邪魔しやがって…」

とドスの利いた声で呟きます。

そして、

バスタオル一枚(に見せかけた全身タイツスタイル)

で廊下に飛び出します。

 

ここからのアクションが凄まじい。

群がる男たちを、ドロップキック!

ジャーマンスープレックス!

ラリアット!

プロレス技のオンパレードでなぎ倒していくのです。

 

一方の龍馬は、部屋でピストルの手入れをしていましたが、自分の指を挟んでしまい

「痛い痛い痛い!」

とのたうち回っています。

敵が部屋に入ってきても、指が痛くて戦えません。

情けないにも程がある。

 

そこへ血走った目のおりょうが飛び込んできて、敵を蹴散らしながら

「あんた! 何やってんのよ! 逃げるわよ!」

と龍馬を小脇に抱えて脱出します。

広瀬アリスさんの鬼気迫る表情。

白目を剥いた変顔。

このシーンの疾走感と爆発力は、間違いなく本作のハイライトです。

 

劇場内の空気が一気に明るくなりました。

小学生の息子も、ここで初めて大爆笑していました。

「お母さんより強い!」って。

どういう意味だ。

5-2. 魔の「薩長同盟」30分長回し

そして訪れます。

映画史に残るであろう、問題のシーンが。

京都の小部屋。

集まったのは、龍馬(ムロ)、西郷(佐藤)、桂(山田)の3人。

日本の未来を決める重大な会議「薩長同盟」の締結シーンです。

 

ここで何が起きたか。

約30分間、ほぼカメラが動きません。

3人がこたつ(のような机)を囲んで、ダラダラ、ダラダラと喋り続けます。

 

会話の内容は、歴史とは全く関係ありません。

  • 「西郷どん、その眉毛、描いてるでしょ? マジックでしょ?」
  • 「桂さん、逃げる時ってどういう靴履いてるの? スニーカー?」
  • 「薩摩の芋焼酎と土佐の日本酒、どっちが悪酔いするか」
  • 「最近の若い志士のマナーがなってない」

台本なのかアドリブなのか分からない雑談が延々と続きます。

ムロさんがボケる。

佐藤さんがツッコむ。

山田さんが真顔で変なことを言う。

時折、誰かが笑いを堪えきれずに吹き出し、それをそのまま流す。

 

この時、劇場内には奇妙な一体感と、深い分裂が同時に生まれました。

 

「このゆるいラジオみたいな感じ、最高! 役者さんたち仲良いなぁ」

と肩を震わせて笑う人と、

「……いつ終わるの、これ? これ映画だよね?」

と無言でポップコーンを食べる手が止まる人。

 

私は……

正直に告白すると、後者でした。

時計をチラリと見てしまいました。

主婦にとっての30分は貴重です。

夕飯の支度が終わる時間です。

煮物が一つ作れます。

「これを映画館でやる勇気はすごい」

と感心しつつも、

「編集でもっと切れたよね? 半分にできたよね?」

と思わずにはいられませんでした。

 

最終的に、中岡慎太郎(サプライズ的な扱いのキャスト)が差し入れた「カステラ」を食べて、

「これ美味いね!」

「どこの?」

「長崎?」

「じゃあ同盟組んで、これもっと取り寄せようか」

という、まさかの「スイーツ同盟」として決着します。

 

歴史の転換点が糖分によって決まるという脱力感。

「歴史なんて、意外とこんなもんだよ」

というメッセージだとしたら深いですけど、たぶん違いますよね。

ただの悪ふざけです。

 

この30分を耐えられるかどうかが、この映画の評価の分かれ目です。

耐えられた人は「★5」、耐えられなかった人は「★1」。

中間はありません。

第6章:ストーリー完全実況大政奉還〜ラストの衝撃

6-1. 大政奉還もノリで

物語は終盤へ。

龍馬は後藤象二郎(賀来賢人)と共に、新しい日本の設計図「船中八策」を考えます。

しかし、ここでも「誰が書くか」で揉めます。

「俺、字が汚いから嫌だ」と龍馬。

「俺も漢字苦手だし」と後藤。

結局、適当に書き殴ったメモを徳川慶喜(勝地涼)に提出することになります。

 

勝地涼演じる慶喜は、

「もう将軍とか疲れたし、辞めたいオーラ全開」

のキャラ。

提出された船中八策を見ても、

「何これ? 読めないんだけど。洗濯(せんたく)? 日本を洗濯する? クリーニング屋の話?」

と勘違いします。

 

しかし、龍馬たちの

「まあまあ、とりあえず返しちゃいましょうよ、政権」

という軽いノリに乗せられ、

「だよねー! 返しちゃうか! スッキリしそう! 今日から俺、フリーター!」

と大政奉還を決断します。

 

260年の徳川幕府の幕引きが、まるで飲み会の二次会に行くかどうか決めるようなノリで行われる皮肉。

会社を辞める時もこれくらい軽ければいいのに、と少し羨ましくなりました。

6-2. ラスト:ケチャップと海外逃亡

そして運命の近江屋事件。

史実では龍馬と中岡慎太郎が暗殺される悲劇のシーンです。

刺客たちが部屋に踏み込み、刃を振るいます。

龍馬は斬られた……

と思いきや、額に大量のケチャップを塗って倒れます。

そう、これは龍馬が仕組んだ「死んだふり作戦」だったのです。

 

刺客たちが去った後、むっくりと起き上がる龍馬。

「あー、怖かった。死ぬかと思ったー! ケチャップ臭いー!」

彼は中岡と共に、そのまま裏口から逃走します。

「これでもう俺たちは死んだことになったから、自由だね!」

 

これ、史実を愛する人からしたら激怒案件でしょう。

「人の命をなんだと思ってるんだ!」と。

でも、ここまで来ると「もう好きにしてくれ」という境地に至ります。

むしろ、「龍馬が生きていてくれたら」という国民的願望を、一番馬鹿馬鹿しい形で叶えてくれたとも言えます。

 

ラストは、現代のハワイのようなビーチ。

アロハシャツを着てウクレレを弾く老年の龍馬と、隣でフラダンスを踊るおりょう。

「日本の夜明けぜよ~」と歌いながら、映画は終わります。

 

エンドロール、福山雅治の主題歌「龍」が流れ、ようやく映画らしい余韻が訪れます。

福山さんの歌声だけが、やけにカッコよく、そして切なく響いていました。

スポンサーリンク

スポンサーリンク

第7章賛否両論の深層分析(なぜここまで評価が割れるのか?)

 

レビューサイトを見ると、評価は見事に割れています。

なぜ、こんなことになったのでしょうか。

一人の主婦ライターとして、そして長崎県民として分析します。

7-1. 「内輪ノリ」という高い壁

福田組の作品は、ある種の「飲み会」です。

常連メンバーが内輪ネタで盛り上がっているのを、横で見ている感覚。

自分がその輪に入っていれば(ファンであれば)、最高に楽しい。

でも、一歩引いて見てしまうと、

「何が面白いの?」

「仲間外れにされている」

と疎外感を感じてしまう。

 

今回は、その「内輪の壁」がこれまでになく高かったように感じます。

映画というより、2000円の会費を払って参加する「福田組の忘年会」の映像を見せられたような。

その空気に入れなかった人が、大量の低評価をつけたのではないでしょうか。

7-2. 歴史への「リスペクト」問題

長崎出身の私としては、ここが一番引っかかりました。

笑いにするのはいいんです。でも、「愛」が欲しかった。

前作『三國志』は、原作へのリスペクトがあった上で遊んでいる感じがしました。

今回は、

「龍馬なんてどうでもいい」

という空気が透けて見えてしまった瞬間がありました。

「死」すらもケチャップでギャグにする。それは「新解釈」ではなく、「思考停止」ではないか。

そんな厳しさが、歴史ファンの逆鱗に触れたのだと思います。

「龍馬さんは、そんなに軽い男じゃないよ」

と言いたくなる瞬間が、何度かありました。

7-3. 映画的快楽の欠如

これが決定的でした。

映画館の大画面と音響で見る意味があったのか。

ほぼ固定カメラの会話劇。

アクションシーン(岩田さんを除く)の少なさ。

映像的なスペクタクルや、音響的な快感がない。

 

「これ、配信で家事をしながら見るのが正解だったかも」

そう思わせてしまった時点で、映画としては苦しい戦いになります。

タイパ重視の現代において、「映画館に行く」という体験のハードルは上がっています。

そのハードルを、本作は超えられなかったのかもしれません。

スポンサーリンク

第8章結論とターゲット別推奨

さて、長々と書いてきましたが、結局この映画を見るべきなのか。

2026年1月の現時点で、私の結論をお伝えします。

私はこう思う

この映画は、「不完全な愛すべき怪作」です。

 

映画としての完成度は低いです。

テンポは悪いし、内輪ノリはキツイし、歴史への敬意も薄い。

でも、広瀬アリスさんの爆発力や、佐藤二朗さんの引き算の演技など、奇跡のような瞬間も確実に存在します。

 

そして何より、

「ムロツヨシが龍馬を演じる」

という一点において、これ以上のキャスティングはなかったとも思います。

「まあまあ」

と言いながら時代を泳いだ龍馬像は、現代社会を生きる私たちに、ある種の救いを与えてくれる……

と言ったら言い過ぎでしょうか。

【迷わず映画館へ行くべき人】

  • 「福田組」という宗教の熱心な信者の方。
    ムロさんと二朗さんが呼吸しているだけで幸せなら、ここは天国です。
  • 広瀬アリスさんの伝説の目撃者になりたい方。
    あの全身タイツ姿は、後世まで語り継がれるでしょう。
  • 日常に疲れすぎて、ストーリーを追う気力すらない方。
    頭を空っぽにして、ダラダラとした会話に身を委ねる時間は、ある意味で究極のヒーリングです。
  • 岩田剛典さんの殺陣を大画面で拝みたい方。
    推し活としてのコスパは最高です。

【回避するか、配信を待つべき人】

  • 坂本龍馬を心の師と仰ぐ方。
    血圧が上がります。やめておきましょう。
  • 「時は金なり」を信条とする方。
    30分の長回しに耐えられず、席を立つ可能性があります。
  • 映画館で寝落ちしたくない方。
    暗闇と単調な会話は、最高の睡眠導入剤です。
  • 映像クオリティを重視する方。
    『アバター』を観に行きましょう。

スポンサーリンク

あとがき明日からの日常へ

映画館を出ると、東京の空はすでに暗くなっていました。

スマホを確認すると、夫から「夕飯どうする?」というLINE。

一気に現実に引き戻されます。

 

でも、不思議と足取りは軽かったんです。

映画の内容には文句タラタラでしたが、2時間、現実を忘れて「くだらないこと」に没頭できた時間は、意外と悪くなかった。

 

ムロツヨシさん演じる龍馬の、あの適当な処世術。

「まあまあまあまあ」

あれこそが、現代社会を生き抜くための最強の武器なのかもしれません。

 

明日、会社で理不尽なことを言われたら、心の中でムロさんの顔を思い浮かべてみようと思います。

「まあまあ」とやり過ごして、カステラでも食べて、機嫌を直す。

そうやって、私たちはまた一日を生き延びていくのです。

 

『新解釈・幕末伝』。

あなたにとって、この映画が「最高の笑い」になるか、「虚無の時間」になるかは分かりません。

でも、誰かと語り合いたくなることだけは間違いありません。

「つまらなかったねー!」

と笑い合うのもまた、映画の楽しみ方ですからね。

 

さて、家に帰って夕飯を作りますか。

今夜は、カステラ……

ではなく、肉じゃがにしようかな。

【付録】主要キャスト・スタッフデータ

  • 監督・脚本: 福田雄一(ブレない姿勢は尊敬に値します)
  • 主題歌: 福山雅治「龍」(名曲です。エンディングで浄化されます)
  • 配給: 東宝
  • キャスト:
    • 坂本龍馬:ムロツヨシ
    • 西郷隆盛:佐藤二朗
    • 桂小五郎:山田孝之
    • おりょう:広瀬アリス
    • 勝海舟:渡部篤郎
    • 岡田以蔵:岩田剛典
    • 近藤勇:小手伸也
    • 土方歳三:松山ケンイチ
    • 沖田総司:倉悠貴
    • 後藤象二郎:賀来賢人
    • 徳川慶喜:勝地涼
    • 歴史学者:市村正親

あわせて読みたい:映画・エンタメ関連記事

-その他