二人で月を走ったブレインダンスが、あんなに痛い思い出になるとは。
『エッジランナーズ』の終盤って、救出に間に合うかを祈っているうちに、祈りたいことがどんどん増えるんですよね。誰か一人でも助かってほしい。できれば、その人が大事にしている人も。欲張りでしょうか。私は欲張りたいです!
『サイバーパンク エッジランナーズ』は2022年に配信された全10話のNetflixアニメです。
最終話の死亡人物と、ルーシーが月を訪れる結末までのネタバレがあります。
母を失ったデイビッドが、裏稼業へ進むまで

学費も救急医療も、先にお金を求めてくる街
ナイトシティで暮らすデイビッド・マルティネスは、名門アラサカ・アカデミーに通う少年です。救急救命士の母グロリアは、息子がアラサカで働く未来を願い、働いて学費を捻出していました。
家では洗濯機さえ満足に動かせず、学校では裕福な同級生カツオに見下されます。正規の機器更新を節約した結果、授業のシステムまで故障。洗濯も勉強も追加の支払い次第という暮らし、財布の逃げ場が狭すぎです!
そんな親子を、道路上の銃撃戦が襲いました。事故で負傷したグロリアを前に、救急部隊トラウマ・チームは契約者の救助を優先して去っていきます。安い医療プランで入院した母は、その後亡くなりました。
遺灰を受け取るデイビッドには、医療費や葬儀費、滞納した家賃の請求が続きます。母を侮辱するカツオの言葉も重なり、彼はグロリアが持っていた軍用装備を自分の体に埋め込むと決めたのでした。
その装備が、サンデヴィスタンです。身体能力を拡張する機械「サイバーウェア」の一種で、作動中のデイビッドは周囲がゆっくり動いて見えるほどの高速移動が可能になります。施術をするリパードクも驚く耐性を発揮し、彼はその速さでカツオを殴り倒しました。
ルーシーが見せた月と、メインの仕事
電車で出会うルーシーは、他人の機器へ侵入する技術者「ネットランナー」。アラサカ社員からチップを盗む彼女と、デイビッドは組むことになります。ところがサンデヴィスタンを繰り返し使ううちに、彼は鼻血を流して倒れました。
ルーシーは彼を助け、自宅で月のブレインダンスを体験させます。ブレインダンス、通称BDは、記録された体験を自分の感覚で味わえる技術です。二人は月面を駆け回り、彼女はナイトシティを離れて月へ行く夢を打ち明けました。
この親密な時間に割って入るのが、メインたちの一団です。グロリアはサンデヴィスタンをメインへ売る手配をしていて、彼は代金を払っていました。装備を使い続けたいデイビッドは、仕事で返す形で仲間入りを願い出ます。
最初の任務は、アラサカ幹部タナカの運転手から車のナビ情報を奪う仕事でした。予定が狂い、デイビッドとルーシーは車で逃走する羽目になります。それでも彼の速さが窮地を救い、メインは報酬を渡して一員として迎えました。
一方、サンデヴィスタンへの耐性を知ったタナカ側からは、アカデミーへ戻る話が届きます。デイビッドが選んだのは、仲間と稼ぐ生活でした。学校で肩身を狭くしていた少年が、仕事ぶりを認めてもらえたんですよね。危ない職場なのに、居場所としては温かい。この組み合わせがつらいです。
メインから受け継いだものは、強さと重すぎる責任
初めての仲間の死と、ルーシーへの約束
デイビッドはルーシーとの走り込みや、ドリオ、レベッカたちの訓練を通して仕事を覚えていきます。メインは戦い方を教え、仲間として面倒を見てくれました。
その日々を断ち切るのが、レベッカの兄ピラルの死です。路上の男をからかったところ、相手がサイバーサイコシスを発症しており、突然撃ち殺されます。戦闘に巻き込まれたルーシーをデイビッドがかばい、メインが男を倒しました。
サイバーサイコシスは、過度な人体改造などによって精神に異常をきたし、周囲へ暴力を向ける状態です。仲間を一瞬で失う怖さを知ったあと、デイビッドとルーシーはキスを交わします。彼は彼女を月へ連れていくと約束しました。
タナカを捕らえた仕事で、メインが壊れていく
仕事の仲介人「フィクサー」であるファラデーは、タナカの機密情報を狙います。その足掛かりに選ばれたのが、タナカの好むBDを編集するジミー・クロサキでした。
クロサキは反撃してデイビッドを拉致し、サイバーサイコが破滅するBDを強制的に体験させます。ルーシーとドリオに救出されたあとも、改造を重ねれば自分も壊れるという彼の警告は重いです。デイビッドは、自分の特別な耐性に望みをかけていました。
一団はクロサキの協力を得てタナカを捕らえますが、タナカの攻撃でクロサキは命を落とします。ようやく標的を確保したころには、メインの手の震えや幻覚が深刻になっていました。
メインは情報を探るキーウィを殴り、彼女が作業を続けられなくなったため、ルーシーがタナカの神経系へ潜ります。そこで彼女が見つけた秘密が、後半の悲劇を動かすことになるんです。
トラウマ・チームが駆け付け、警察との戦闘へ発展しました。タナカもこの混乱の中で死亡します。メインを守ろうとしたドリオも銃撃で命を落としました。現実の認識が崩れたメインは、彼女の遺体のそばに爆発を起こす準備をします。
助けに戻ったデイビッドに、メインは逃げるよう促しました。直後の爆発でメインも死亡し、デイビッドは彼の腕を抱えてルーシーの待つ車へ戻ります。
ルーシーの秘密は、デイビッドを実験から守るためだった

月へ逃げたい理由は、アラサカで過ごした子ども時代
メインの死後、デイビッドは改造を増やし、一団のリーダーとして名を上げます。ルーシーと一緒に暮らすようになった一方、彼女はチームの仕事から距離を置いていました。
彼女が話す過去は、幼いネットランナーたちをアラサカが育て、危険な旧ネットの探索へ送り込んでいたというものです。旧ネットには危険なAIが潜み、仲間たちは探索中に次々と死亡。脱出を試みた子どもたちの中で、ルーシーが生き延びました。
ナイトシティでも、彼女は追っ手を恐れて暮らしていたんですよね。企業の手から遠く離れた月は、自由になれる場所として胸にありました。
タナカの情報を消したあとも、追跡者を止め続けた
タナカの中にあったのは、デイビッドの高い適性を利用し、アラサカの新兵器サイバースケルトンの実験台にする計画でした。ルーシーはタナカの神経系を損傷させ、デイビッドの情報を消します。その際の容体の急変が、救急部隊を呼び込む原因になったのでした。
アラサカは破損したデータの復旧を進めました。ルーシーは復旧に関わるネットランナーを追い、殺害して作業を妨害します。仕事に復帰しない間、彼女は一人でデイビッドを守るための戦いを続けていました。
デイビッドには、その危険な計画も自分の行動も伏せています。彼の目には、ルーシーが何かを隠したまま離れていくように感じられたのでした。二人とも相手を大事にしているのに、肝心の情報が片側にたまっていく。見ていて、会議室を一つ貸したくなります。
改造をやめられないデイビッドと、ファラデーの寝返り
デイビッドの体は、メインを思わせる大きさへ変わりました。その一方で、手の震えや幻覚、記憶の混乱が進んでいくんです。
アラサカの研究施設を襲撃する仕事では、標的を殺したあと、居合わせた女性職員まで撃ち殺しました。彼女は息子のアカデミー入学を喜んでいた母親です。その死が、グロリアを失ったデイビッド自身の記憶と重なって彼を苦しめます。
レベッカは異変を察し、ルーシーも体の負担を減らしてほしいと訴えました。リパードクが改造を減らすよう勧めても、デイビッドが求めるのは強い抑制剤です。母の願いとメインからの継承を背負い、強さを手放すことに抵抗していました。
ルーシーとの話し合いでも、仕事に戻れない理由を尋ねたまま気持ちはすれ違います。デイビッドが別れる可能性を口にしたころ、彼女は新たな追跡者への対処へ向かったのでした。
その裏でファラデーは、依頼元だった軍事企業ミリテクからアラサカ側へ乗り換えます。アラサカが探しているのは、データ復旧を邪魔するネットランナー。ファラデーはキーウィを取り込み、ルーシーを罠にかけました。
捕らえたルーシーから、二人はデイビッドと新兵器の関係を知ります。ファラデーは彼女の身柄と情報を使い、企業の側で高い地位を得ようとしていました。人を値札付きで動かす男が、仲間の間に入り込んできたわけです。
第9話の大仕事は、サイバースケルトンを着せる罠

デイビッド、レベッカ、ファルコ、キーウィに持ち込まれるのは、アラサカの輸送車を襲う仕事です。高額報酬の任務に見えて、実態はファラデーが仕組んだ実装テストでした。
積み荷にはサイバースケルトンがあり、現場にはミリテクの部隊が押し寄せます。包囲されたデイビッドへ、ファラデーはルーシーの声を装って連絡し、兵器の装着へ誘導しました。キーウィも一団を離脱します。
アラサカが欲しいのは、デイビッドに試作兵器を使わせて得る戦闘データです。彼は追い込まれた状況でサイバースケルトンを装着し、重力と反重力を操る力でミリテク部隊を壊滅させます。
ただ、その装備は体と精神へ途方もない負担をかけました。デイビッドに恋心を抱くレベッカが抑制剤を打ちながら支え、ファルコが車を走らせます。ルーシーを捕らえたファラデーの裏切りを知ったデイビッドは、アラサカタワーへ救出に向かいました。
敵をまとめて倒す場面なのに、頼もしい気分より薬の残量が気になるんですよね。強くなるたびに、帰ってこられる時間が削られていく。この加速が本当に怖いです。
最終話の救出戦と、ルーシーが一人でたどり着く月

キーウィの最後の連絡が、救出先をつないだ
街を出ようとしたキーウィは、報酬を渡すというファラデーの呼び出しに応じます。そこで銃撃され、口封じの対象になっていたと悟りました。
致命傷を負いながらも、彼女はファルコへ連絡し、ファラデーとルーシーの居場所を知らせます。追手に殺される直前に残した情報が、救出へ進む一団を助けたのです。裏切りの重さを抱えたまま、最後の行動で仲間へ手を伸ばしました。
デイビッドは母やメインの記憶が混ざるほど追い詰められ、残った抑制剤を頼りに突入します。ファラデーがルーシーをアラサカへ引き渡そうとする場に割り込み、彼女を連れ出しました。
アラサカは、切り札のアダム・スマッシャーを投入します。デイビッドは攻撃を受け、ルーシーとタワーの外へ落下。彼女の呼びかけとキスで意識を取り戻しました。ファラデーは、この救出戦で死亡します。
ルーシーが望むのは、デイビッドに生きていてもらうことです。対する彼は、彼女の夢をかなえることを自分の夢として語ります。生きて隣にいてほしいという願いと、身を削って相手の願いをかなえようとする決意。言葉が届いたときには、体の限界が迫っていました。
レベッカとデイビッドは死亡し、ファルコがルーシーを逃がす
仲間との合流で、ようやく一息つけると思った矢先です。上空から降りてきたスマッシャーに押し潰され、レベッカは死亡します。ルーシーの無事を喜んだ直後の、あまりに急な最期でした。
デイビッドはスマッシャーと対決しますが、相手もサンデヴィスタンを使います。切り札だった速さに追い付かれ、デイビッドは圧倒されました。
ファルコはデイビッドの意向を受け、ルーシーを車で連れ出しました。彼女は戻るよう求めますが、彼はそのまま逃走します。二人は生き残り、デイビッドが託した報酬を分ける形で受け取りました。
戦いに敗れたデイビッドは、アダム・スマッシャーに頭を撃たれて殺されます。
月のデイビッドは、ルーシーが思い浮かべた昔の姿
後日、ルーシーは月面ツアーに参加します。
そこで思い浮かべるのは、全身を大きく改造する前の若いデイビッドでした。初めて一緒に月のBDを楽しんだ記憶が、幻影となって彼女の前に現れるのです。
ファルコが届けた伝言には、デイビッドが一緒に月へ行けないことへの謝罪が添えられていました。望んだ場所へ着いた喜びの中に、連れてきたかった人を失う痛みが残ります。
「夢がかなったね!」と手放しで言うには、あの月は静かすぎますよね。
注意したいのは、激しい銃撃と身体損壊の描写
Netflixの作品ページでは16+に分類されています。暴力表現が強く、人物の負傷や死も痛々しい作品です。
居間で洗濯物を畳みながら、家族が横を通る時間に流すにはかなり刺激が強いと思いました。特に後半は息をつける時間が短いので、落ち着いて観られる夜のほうが、気持ちを置いていかれずに済みそうです。
デイビッドとルーシーの時間を、もう一度観たくなったら
本編の配信ページはNetflix『サイバーパンク エッジランナーズ』です。短い会話や二人の表情を確かめる再視聴は、結末を知ったあとだと少し勇気がいりますよね。
まず映像の勢いを思い出したいときには、公式ティーザーという選択もあります。約束を交わす二人を観る前に、お茶を入れてひと呼吸。
CD PROJEKT REDの「Cyberpunk 2077」公式チャンネルによる、2022年版のティーザーです。
FAQ
ルーシーとの再会でサイバーサイコシスは治った?
キスによって戻るのは、一時的な正気です。その後もデイビッドは幻覚と身体の限界に苦しみながら戦います。最後の戦闘では、抑制剤も尽きていました。
最終話の正式なタイトルは?
第10話は「My Moon My Man/私の月、私の恋」です。地名としての月と、大切な相手への思いが一つの題名になっています。短いタイトルなのに、観終えたときの重さがすごいんですよね。
まとめ
『エッジランナーズ』で私がいちばん切なく感じるのは、人を大事にする気持ちにも、立ち止まる時間が要るということです。誰かのために頑張れる人ほど、自分をすり減らす速度にも気付きにくいのかもしれません。
あの二人には、何も起こらない退屈な午後があってほしかった。派手な伝説より、そんな時間を願いたくなる余韻でした。