千秋先輩と一緒に弾きたい。のだめが追いかけてきた夢を思うと、最後にふたりがどうなるのか、恋の行方まで気になりますよね。
結末までのネタバレがあります。
二ノ宮知子の漫画『のだめカンタービレ』は、通常版1〜23巻が本編、24〜25巻がアンコールオペラ編の全25巻です。
のだめと千秋は、音楽を続けながら将来を約束するハッピーエンドを迎えます。ただ、ふたりがそこへたどり着くまでには、華々しい成功の直後にやってくる挫折が待っていました。あの強気な千秋も、終盤はずいぶん必死なんです。
音大からパリへ、ふたりが追いかけたもの
桃ヶ丘音大で出会い、千秋の世界が広がる
桃ヶ丘音楽大学のピアノ科に通う千秋真一は、指揮者になる夢を持ちながら、飛行機への恐怖で海外へ出られずにいました。隣室に住む野田恵、通称のだめは、耳で覚えた曲を自由に弾く才能の持ち主です。
ただし、部屋も暮らしも自由すぎる。散らかった部屋と見事なピアノが同居していて、千秋は彼女の世話まで焼くようになります。才能に感動する前後で掃除も発生するのが、このふたりの出会いでした。
来日した指揮者シュトレーゼマンは、個性の強い学生を集めたSオケを結成し、千秋を弟子にします。峰龍太郎や奥山真澄らと演奏を作るうちに、千秋は人をまとめて音楽を生み出す経験を重ねました。その後は三木清良たちとR☆Sオーケストラを立ち上げ、学外の仲間とも活動を広げていきます。
一方、のだめは江藤の指導を受け、千秋との留学を願ってマラドーナ・ピアノコンクールに挑戦。入賞を逃して実家へ戻りますが、才能を見抜いたオクレールから留学の道を示され、再び前を向きました。千秋の飛行機恐怖症の克服を助けたのも、のだめです。
千秋は指揮の仕事へ、のだめは音楽院での学びへ
パリへ移った千秋は、指揮者コンクールで優勝し、シュトレーゼマンのもとで修業を始めます。やがてルー・マルレ・オーケストラの常任指揮者となり、まとまりを欠いた楽団の立て直しに取り組みました。
のだめは音楽院のコンセルヴァトワールで、オクレールに学びます。日本で天才と認められていても、周囲の水準や授業の難しさに圧倒される毎日です。楽譜を丁寧に読み、作曲家の音楽と向き合う勉強を重ね、リサイタルの経験も積んでいきました。
渡仏後には恋人同士になったふたり。それでも、千秋は仕事の現場を走り、のだめは学生として力を蓄える時期にいます。好きな人がすぐそばにいても、その背中ばかり見える時間は苦しいですよね。
19〜22巻、ラヴェルへの憧れとデビュー後の挫折

千秋とRuiが、のだめの憧れの曲で共演する
終盤のすれ違いを大きくするのが、ラヴェルのピアノ協奏曲です。のだめはこの曲に心を奪われ、千秋の指揮で自分が弾く夢を持ちます。
ところが、千秋との共演が決まっていたのは、すでにプロとして活躍するピアニストの孫Ruiでした。のだめが客席で聴いたのは、自分が望んだ組み合わせを別の奏者が実現する演奏です。しかも、その出来が素晴らしい。恋人を取られそうな焦りに、音楽家として先を越された痛みが重なります。
のだめはコンクールへの出場や共演を急ぎますが、オクレールは課題を与え、学びを続けさせます。焦りを抱えた彼女は千秋に結婚を申し込み、千秋はその申し出を受け流しました。音楽で追いつこうとするほど遠く感じる相手に、恋の約束を求めてしまったんですね。
シュトレーゼマンとの成功が、次の一歩を止めてしまう
そんなのだめを舞台へ連れ出すのが、シュトレーゼマンです。のだめはロンドンで、彼の指揮によるショパンのピアノ協奏曲第1番を弾き、鮮烈なデビューを果たします。
演奏は大成功でした。ところが、のだめ自身は、あの演奏を超えるものをこれから生み出せるのかと行き詰まります。千秋との連絡を避け、人前から姿を消してしまうのです。
大きな拍手のあとにこの苦しさが来るから、終盤は胸にこたえます。
23巻の最終回、二台ピアノから再び舞台へ

千秋は、のだめの望む幸せを考える
パリへ戻ったのだめは、作曲を学ぶヤドヴィや子どもたちと、歌ったり楽器を鳴らしたりして過ごします。幼稚園の先生に憧れていた彼女にとって、子どもと音楽で遊ぶ時間は自然な喜びでした。
千秋も、父の雅之と久しぶりに話し、悩みを打ち明けます。父のピアノに触れ、音楽家としての気持ちを少し理解するうちに、のだめとの未来を真剣に考えるようになりました。彼女が自分で選ぶ幸せを受け入れようとするんです。
その気持ちを揺さぶるのが、のだめの弾くベートーヴェンでした。演奏を聴いた千秋は涙し、もう一度彼女を舞台へ連れていきたいと思います。のだめの暮らしを思う気持ちと、あの才能を聴き続けたい気持ち。千秋の中で、どちらも本気になっていました。
初めて合わせたモーツァルトを、成長したふたりで弾く
千秋が用意するのは、ふたりでモーツァルトを弾く時間。曲は、出会ったころにも演奏した「2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448」です。
23巻で心を通わせる演奏は、千秋ものだめも鍵盤に向かう二台ピアノです。音楽を学び、仕事に触れ、互いに変わったふたりが、昔と同じ曲を合わせます。のだめはその演奏で千秋にまた惹かれ、一緒に音楽を作る喜びを取り戻しました。
長い説得より、ふたりで一曲。言葉ではすれ違ってばかりのふたりが、音では通じ合うところにぐっと来ます。
モーツァルト「2台のピアノのためのソナタ」K.448、ルーカス&アルトゥール・ユッセンによる公式演奏動画です。
本編の最後は、サン・マロで聴衆を迎えるのだめ
再び演奏へ気持ちを向けたのだめは、サン・マロのブノワ家からのコンサートの依頼を受けます。シュトレーゼマンとの公演が評判になり、会場には大勢の客が集まりました。
のだめは衣装姿で聴衆の前に立ち、自分は楽しく弾くので聴く側も頑張ってほしいと挨拶します。最後まで、言い方がのだめ! 再び人前で音楽を届けようとする彼女の姿で、本編は幕を閉じるのです。
24〜25巻の結末、『魔笛』で共演し指輪の約束へ

帰国した千秋は、仲間たちと市民オペラに挑む
アンコールオペラ編では、千秋とのだめが日本へ戻ります。千秋が指揮するのは、R☆Sオケと取り組むモーツァルトのオペラ『魔笛』。菅沼沙也がパミーナを歌い、峰は演出、真澄は衣装作りを担います。学生時代の仲間が、舞台作りで再び顔をそろえました。
歌い手たちが思い思いに動き、千秋は全体をまとめるのに苦戦します。開演が迫るほど不安は募るばかりでした。指揮棒一本で全員の機嫌までそろったら、千秋も苦労しませんよね。
かつて千秋に引っ張られた仲間が、自分の考えで舞台を支える側に育っていました。
のだめは日本初リサイタルを成功させ、『魔笛』にも参加する
オペラの準備と並んで進むのが、のだめの日本初リサイタルです。その演奏は大成功を収め、聴いていた千秋も、のだめが音楽家として大きく育っていることを実感します。ずっと先輩を追いかけていた彼女が、今度は千秋を焦らせるほどの演奏を聴かせるんです。
『魔笛』の本番では、のだめが魔法の鈴の響きを受け持ちます。
千秋の指揮とのだめの演奏が、公演の中でついに重なります。のだめの音が歌や芝居にも力を添え、千秋たちは『魔笛』を成功させました。
夢見たピアノ協奏曲から、共演の形は変わりました。それでものだめは、オーケストラの中で千秋と音楽を作れたことを喜びます。本人がその時間に満足しているのがうれしいところです。
結婚はどうなる?25巻は千秋からの将来の約束で締まる
公演後の帰り道、のだめは、この共演の喜びがあれば、またしばらくひとりでも頑張れると千秋に話します。仕事で離れる時間も、自分の演奏も、そのうえで受け止めようとしていました。
千秋は「約束くらいしていくよ」と指輪を渡し、結婚を見据えた約束を交わします。
千秋の返事に振り回されていたころを思うと、のだめの変化がまぶしいです。千秋の言葉には、私は尊敬の気持ちを感じました。
単行本の注意点、通常版と新装版では巻番号が違う
通常版は全25巻、新装版は全13巻で、同じ巻番号でも収録内容が違います。新装版は単行本を組み直した版です。途中から買い足す際、版が変わると、すでに読んだエピソードと重なることがあります。
新装版13巻にはアンコールオペラ編の後編も収録されています。本の表紙や商品名に付く「新装版」の文字が、買い足す巻を探す手がかりです。
原作を読み返したくなったら、電子版の試し読みも
ブックライブでは、各巻の商品ページに試し読みがあります。本文の続きは購入する電子書籍で読める仕組みです。
FAQ
黒木とターニャの関係はどうなりますか?
オーボエ奏者の黒木泰則と、ピアノを学ぶターニャも恋人同士になります。25巻には、ふたりを主役にした短編『ターニャカンタービレ』を収録。主役の恋が気になる作品ですが、このふたりを応援していた人にも楽しみが残っています。
通常版の最終巻はいつ発売されましたか?
25巻の紙の単行本は、2010年12月13日発売でした。雑誌ではアンコールオペラ編が2010年8月25日発売の『Kiss』17号で完結しています。
まとめ
好きな人の才能をいちばん近くで聴ける喜びと、その人に置いていかれそうな怖さ。どちらも切実だから、『のだめカンタービレ』の終盤は恋愛と音楽が絡み合って胸に残ります。
私は、千秋がのだめの音に圧倒されるほど、ふたりの関係が面白くなると感じます。世話を焼いていた相手に驚かされる。そんな恋なら、これからも退屈する暇はなさそうですね。