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アメリカン・サイコ映画ネタバレ|ラストの告白はなぜ届かない?

アメリカン・サイコ映画ネタバレ|ラストの告白はなぜ届かない?

『アメリカン・サイコ』のラストで、私が一番ぞっとしたのは弁護士の笑いでした。あれだけの告白を聞いて、その反応ですか?

※結末までのネタバレがあります。『アメリカン・サイコ』は、メアリー・ハロン監督による2000年の映画です。

ベイトマンは犯行を告白したあとも逮捕されず、仲間との日常に戻ります。映画は彼の殺人と、それに食い違う周囲の言動を重ねていくんです。「全部妄想だった」という答えに飛びつくと、あの弁護士の笑いがどうにも引っかかります。

完璧な身なりのベイトマンは、名刺一枚で取り乱す

配給会社Lionsgate Moviesの公式予告です。

朝の肌の手入れから、高級店の予約まで気になる

舞台は1987年のニューヨーク。パトリック・ベイトマンは金融業界で働き、高級な部屋に住み、体と身なりの手入れに熱中しています。朝から運動、洗顔、肌のケアまで実に細かいんです。出勤前にあれを全部やったら、私なら電車を一本逃しそうです。

婚約者はエヴリン。ベイトマンは彼女の友人で、同僚ルイスの婚約者でもあるコートニーと関係を持っています。結婚を考える相手がいても、彼の関心は周囲と同じ贅沢をし、さらに上に立つことへ向いていました。

その競争で目障りなのが、同僚のポール・アレンです。アレンはベイトマンが予約を取れない高級レストラン「ドルシア」にも席を確保できる男。食事の場所まで、二人の格付けになるんですよね。

紙の色と厚みに負け、路地では弱い相手を襲う

同僚たちが名刺を見せ合う場面では、色合い、字体、紙の厚みが勝負になります。アレンの名刺を見たベイトマンは、相手の仕上がりに圧倒されていました。あの会議、議事録に何を書けばいいんでしょう。仕事の成果より、印刷の仕上がりで全員がざわついているんです。

その夜、ベイトマンは路地でホームレスの男性と犬を見つけます。助けるような態度で近づいてから、男性を罵倒して刺し、犬も殺害。上の立場の相手に抱えた苛立ちが、自分より弱い相手への暴力へ変わる、嫌なつながりです。

名刺の場面の可笑しさから、この路地では一気に怖さへ傾きます。ベイトマンは人を、競争相手か、好きに傷つけていい相手として見ている。そう感じる場面でした。

ポール・アレンを殺し、本人の声でロンドン行きを偽装する

アレン殺害からロンドン行きの偽装まで

アレンは最後までベイトマンの名前を間違えている

クリスマスのパーティーで、ベイトマンはアレンと食事の約束をします。アレンが彼だと思っているのは、同僚のマーカス・ハルバーストラムです。ベイトマンはその勘違いに合わせ、相手に酒を飲ませました。

食事中のアレンは、目の前の男が本人だとも知らず、パトリック・ベイトマンを馬鹿にします。ドルシアの予約の話も重なり、ベイトマンの怒りは膨らんでいくんです。自分を見下す相手が、自分の顔すら覚えていない。その屈辱まで上乗せされています。

ベイトマンは酔ったアレンを自分の部屋へ連れ込みます。床には新聞紙を敷き、透明なレインコートを着用。ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの音楽を得意げに語ってから、斧でアレンを殺しました。趣味の講釈と殺人が、同じ調子で続く場面です。

最初の留守電は、事件を隠すための嘘

遺体を運び出したベイトマンはアレンの部屋へ向かい、旅行に出たように荷物を整えます。さらに留守番電話の応答メッセージを、アレンの声をまねて録音。急にロンドンへ行くことになった、と周囲へ思わせる偽装でした。

名を借りれば、他人の予定まで作れる。アレン本人への関心が薄い周囲では、その嘘が通ってしまうんです。

失踪を調べに来るのは、私立探偵ドナルド・キンボール。ベイトマンは職場で質問を受け、アレンについて知っていることや、自分の行動を答えます。整った身なりはいつもどおりでも、質問を重ねられると落ち着きが崩れていました。

捜査が続く間にも、女性たちとジーンに危険が迫る

エリザベス・クリスティの死とジーンの退室

クリスティとサブリナ、ルイスへの襲撃

ベイトマンは性労働者のクリスティとサブリナを自宅へ呼び、今度は自分をポール・アレンと名乗ります。二人を相手にしている最中も、鏡に映る自分の体を眺めていました。相手より、自分の見栄えが気になる男です。

二人は彼の暴力で傷つけられ、金を渡されて帰されます。クリスティは後に、前回のあと救急で治療を受けたと話しました。この被害の記憶が、再び彼に誘われたときの警戒につながります。

一方、同僚ルイスも新しい名刺でベイトマンを苛立たせます。ベイトマンはトイレで背後から首を絞めようとしました。ところがルイスは、その接触を好意の表れと受け取り、ベイトマンへの思いを返すんです。予想が外れたベイトマンは慌てて立ち去ります。

この行き違いには変な可笑しさがあります。ただ、ルイスにとっては恋愛の接触で、ベイトマンにとっては殺意だった。相手の言動を、自分の願望に合わせて受け取る人々の危うさも感じます。

ジーンを帰したあと、探偵からアリバイを告げられる

ベイトマンはモデルの女性も殺し、その後、秘書ジーンを食事に誘います。彼の部屋に来たジーンに背後から釘打ち機を向けたところで、エヴリンからの留守電が入りました。ベイトマンは手を止め、ジーンに危害を加えるかもしれないと告げて帰します。

彼がジーンを帰す選択をしたことは、犠牲者が増えていく流れの中でも目を引きます。ジーンはその場を生きて離れ、終盤には、さらに彼の内側へ近づく人物になるんです。

キンボールとの食事では、ベイトマンは失踪の夜のアリバイが成立したと聞かされます。周囲の人々の証言が彼を捜査の疑いから遠ざけ、ベイトマンは安堵を浮かべました。ベイトマンの犯行の記憶と、アリバイを支える周囲の証言が食い違います。

アレンの部屋でエリザベスとクリスティを殺す

ベイトマンは、ためらうクリスティに金を提示して再び誘います。知人エリザベスも加え、二人を連れて行くのはアレンの部屋でした。前回の被害を覚えているクリスティを、金で引き戻す場面がきついんですよね。

今度はホイットニー・ヒューストンについて語りながら、ベイトマンはエリザベスを殺します。逃げ出したクリスティは室内で女性たちの遺体を見つけました。アレンの部屋が、複数の犠牲者を置く場所になっているんです。

クリスティは廊下から階段へ逃げ、ベイトマンはチェーンソーを持って追います。彼は上の階からチェーンソーを落とし、下を逃げる彼女を殺害。この追跡まで進むと、彼の暴力は日常の感覚から大きく外れたものになっています。

その後、ベイトマンはエヴリンとの婚約を解消します。エヴリンの将来の予定と、彼が抱えている欲望は最後までかみ合いません。

猫を要求するATMから逃走へ、二度目の留守電は自分の告白

夜のATMに、野良猫を入れるよう要求する表示が出ます。ベイトマンは近くの猫をつかみ、異様な指示に従おうとしました。制止した女性を銃で撃ち、そこから警察との逃走が始まります。

銃撃の途中では、彼が撃ったパトカーが爆発。ベイトマン自身も手元の銃を見つめます。あの銃で、この爆発ですか? 本人も、自分の力と目の前の出来事の大きさに戸惑っているように見えます。

ベイトマンは逃げる先でも人を殺し、やがてオフィスへ身を隠します。追い詰められた彼が電話をかける相手は、自分の弁護士ハロルド・カーンズでした。

留守番電話に、ベイトマンは多数の殺人を告白します。アレンを斧で殺したこと、女性たちを襲ったことなどを、泣き笑いのような調子で次々と話しました。今回は自分の名を使い、犯行を相手に受け止めさせようとしています。

一度目の電話で他人を欺いた男が、二度目には自分のしたことを認めてもらおうとする。

アレンの部屋は売り出され、弁護士は告白を冗談にする

殺した記憶と部屋・弁護士の言動

遺体を置いた部屋が、きれいな売り物に変わっている

翌日、ベイトマンがアレンの部屋へ戻ると、室内はきれいに整えられ、売り出されています。不動産の担当者が内覧に対応する場所へ変わっていました。前夜の混乱を知る彼にとっては、説明のつかない変化です。

担当者は、ポール・アレンという住人についての問いを退け、ベイトマンに立ち去るよう促しました。彼が追い返されるやり取りには、何かを知っている相手に拒まれたような不気味さがあります。

同じころ、ジーンはベイトマンの手帳を調べます。中にあるのは、女性への残虐な暴力や殺人を描いた大量の絵。仕事の予定を入れるはずの紙面が、彼の暴力で埋まっていたんです。

ジーンは、職場で接していた上司の裏側に触れて動揺します。危険を告げられて帰った女性が、今度は自分から彼の異常さを発見する。

「ベイトマンには無理」と、本人の前で笑うカーンズ

仲間とバーにいるベイトマンは、カーンズを見つけて前夜の電話について尋ねます。ところがカーンズは、目の前の彼を別の人物と取り違えていました。そのうえ、電話は面白い悪ふざけだったと笑うんです。

カーンズが頭に思い浮かべるパトリック・ベイトマンは、退屈で気弱な男。そんな人物が殺人をするはずがない、と本人の前で話します。ベイトマンは自分の名前を名乗り、アレンを殺したのだと訴えました。

そこでカーンズが返すのは、最近ロンドンでアレンと食事をした、という証言です。ベイトマンは、殺した記憶と生きていたという話の間に置かれます。

人物の取り違えが続くこの世界では、アレンを名乗る別人がカーンズと食事をした、という可能性も考えられます。自分の犯行を否定する言葉にも、彼を納得させるだけの確かさが足りない。身の潔白を告げられて、かえって混乱するという厄介な結末です!

ラストの独白と「ここは出口ではない」は何を意味する?

告白後の日常と最後の独白

告白しても、自分を理解できるようにはならない

仲間たちはテレビのレーガン大統領を見て、その人柄や本心について話し、夕食の予約も気にしています。ベイトマンの切迫した訴えが、彼らの関心を変えることはありませんでした。

終幕のベイトマンは、苦痛を他人にも味わわせたいと独白します。犯行を語っても気が晴れず、自分についての理解も深まらない。最後の言葉は、自分の告白は無意味だった、というものです。

告白というと、罪を認めて反省する場面を想像しがちですよね。ベイトマンの場合は、他人を傷つけたい欲望が続いています。彼が口にした犯罪の数々と、悔い改める心の間には、大きな隔たりがあるんです。

私はこのラストを、自分の正体をさらして周囲との関係を変えようとしても、いつもの「金持ちの同僚」という扱いへ戻される怖さだと感じます。名を名乗った本人の話より、カーンズが知っているつもりの人物像が優先される。そこに、あの笑いの冷たさがあるんです。

扉の文字が、告白の先にも出口がないことを表す

最後の場面には、扉に「THIS IS NOT AN EXIT」の文字があります。日本語では「ここは出口ではない」です。

この言葉は、ベイトマンが自分の苦痛と欲望の中に閉じ込められた結末を象徴している、と読めます。人を殺すことにも、殺したと口にすることにも、自分を変える働きがなかった。彼の閉塞感が、部屋の扉の文字にまで重なるんです。

外から見れば、彼は贅沢な暮らしを続けられる成功者。その内側では、何をしても満たされない状態が続いています。得をしたように見える結末が、本人にとっては終わらない苦痛になる。後味の悪さは、この食い違いにもあると思います。

殺人は現実か妄想か? 夢オチ説と隠蔽説の注意点

監督と脚本家は、現実に歪んだ見え方が混ざる映画を目指した

ATMが猫を要求する場面から、街での出来事は急に現実味を失います。共同脚本家グィネヴィア・ターナーは、出来事が起きている中で、途中からベイトマンの受け取り方が変わっていく構想を話しました。

制作陣は、最後に「すべて夢だった」と片づける結末を避けようとしていました。殺人の現実性を考えるうえで、この意図は大きいです! ターナーは、終幕でも彼が犯行をしたと思えるようにしたかった、と説明しています。

手帳の絵と、不動産の担当者の態度から生まれる二つの解釈

妄想説では、手帳の絵を、ベイトマンが頭の中で繰り返していた殺人の空想と読みます。彼の知覚が崩れているという説明なら、荒唐無稽な逃走や、記憶に合わない部屋の状態も結びつくんです。

一方、殺人が現実だったという読み方では、絵は実行した暴力を描き留めたものになります。不動産の担当者が、高価な部屋を売るために事件の痕跡を片づけたと考えるのが隠蔽説です。ベイトマンを早く立ち去らせる態度が、秘密を守ろうとする行動に見えてきます。

不動産側が遺体を処分したという隠蔽説は、担当者の態度と部屋の変化から生まれる考察です。彼女が知っていることの中身は、ベイトマンにも観客にも謎として残ります。

私には、実際の暴力を周囲が見過ごす読み方のほうが、この映画の意地悪さを強く感じさせます。見栄えのよい部屋を売る都合、同僚の悪ふざけとして済ませる都合。その都合に沿えば、被害を訴える声さえ邪魔になってしまうからです。

もう一度観るなら、誰が誰だと思って会話しているかが面白い

再鑑賞で私が気になるのは、人物たちが会話の相手をどれほど知っているかです。服、髪型、職場、店の好みは似ているのに、本人の言葉への関心は薄い。外見の細かな違いを競う人たちが、名前の間違いには鈍いんですよね。

たとえばクラブで、ベイトマンは女性に殺人と処刑の話をします。女性はそれを企業の合併と買収の話として受け取りました。英語の「murders and executions」と「mergers and acquisitions」の聞き違いです。

この短い会話では、恐ろしい言葉が、彼の職業に似合う言葉へ置き換わります。二度目は、その軽いやり取りのほうが怖くなるかもしれません。

FAQ

ベイトマンとポール・アレンを演じた俳優は?

ベイトマン役はクリスチャン・ベイル、ポール・アレン役はジャレッド・レトーです。秘書ジーンはクロエ・セヴィニーが演じています。

日本での公開日と上映時間は?

日本公開は2001年5月3日で、上映時間は102分です。製作年と日本公開年が異なるため、作品情報では2000年と2001年の両方を見かけます。

何度も出てくる「ビデオを返す」はどういう台詞?

ベイトマンが会話や人付き合いを切り上げるときの、決まり文句です。レンタルビデオの返却を口実にすれば、面倒な相手からさっと離れられる。あの男の逃げ口上として、妙に耳に残ります。

まとめ

冒頭の肌の手入れから終幕の独白までをつなぐと、ベイトマンが整え続けていたのは、周囲に見せる自分の形だったと感じます。その形を保ったまま、欲望も犯罪も口にできてしまう社会が怖いんです。

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