あのピアノは、誰の願いで鳴っていたのでしょうか。
『エクスペディション33』を終えたあと、最後の選択が気になって寝つけない。そんな気持ちになるのも分かります。あの旅を共にした仲間に、どうして剣を向けることになったのか。
世界の正体と、二つのエンディングのネタバレがあります。
『クレール・オブスキュール:エクスペディション33』は、2025年4月発売のPS5・Xbox Series X|S・PC向けRPGです。
33歳の別れと、上陸直後の惨劇
遠征隊の仲間と旅の風景が登場する、Sandfall Interactiveの公式発売トレーラーです。
ルミエールの沖には、巨大なモノリスがそびえています。ペイントレスが年に一度、その表面の数字を書き換えると、示された年齢以上の人々が消えてしまう。この消滅が「ゴマージュ」です。
数字は毎年一つずつ小さくなり、物語の始まりでは34から33へ変わります。ギュスターヴが見送るのは、かつて恋人だった33歳のソフィーでした。
二人の別れには、子どもを持つかどうかをめぐるすれ違いもありました。ゴマージュのある世界では、家族を増やす喜びに、その子がどんな人生を送れるかという重い問いがついてきます。
残された人々は、毎年遠征隊を送り、ペイントレスを倒そうとします。ギュスターヴも遠征隊33に参加し、妹のように育てた16歳のマエル、研究者のルネ、教師のシエルと大陸へ渡るんです。
ところが、上陸した浜辺でルノワールが襲いかかり、隊員の大半が殺されました。ペイントレスにたどり着く前から、遠征は壊滅状態です。
生き残ったギュスターヴは、散り散りになった仲間と合流します。マエルを助けたのは、謎めいたキュレーターでした。
旅には、大陸の移動を助けるエスキエも加わります。その一方で、マエルは仮面の少女の幻を見るようになり、自分とこの世界のつながりを少しずつ意識し始めました。
ギュスターヴの死から、ペイントレス討伐まで

マエルを守ったギュスターヴと、引き継がれる旅
ルノワールとの二度目の遭遇で、ギュスターヴはマエルを守ろうとして殺されます。ヴェルソが割って入り、残る仲間たちは逃げ延びました。
第1幕で失うのは、最初に操作していたギュスターヴ本人です。育てた仲間を突然失う痛みまで、プレイヤーの側に残る場面ですね。
マエルは立ち止まって兄を悼みたい。ルネは、死と隣り合わせの状況で任務を続けようとする。仲間の悲しみ方にも差が出ます。
一行は忘れ去られた戦場でギュスターヴを弔いました。「後に続く者のために」という遠征隊の言葉は、彼に守られたマエル自身へ託されます。
不死のヴェルソと、モノリスを覆う障壁
旅を継いだヴェルソは、最初の遠征隊の一員でした。ルノワールはその隊を率いた父親で、仮面の少女アリシアは妹だと打ち明けます。
ペイントレスに不死を与えられた家族の中で、ルノワールは彼女を守り、ヴェルソは永遠に生きることに疲れ果てていました。同じ家族の願いが、真っ向からぶつかっているんです。
さらに、ジェストラルという種族のモノコが仲間になります。敵の足を集め、その力を戦闘に使うという独特な趣味の持ち主です。頼もしいけれど、その収集棚の掃除は遠慮したいですね。
ペイントレスへの道は、モノリスの障壁がふさいでいます。一行はルノワールの屋敷で、障壁を止めるためにペイントレスの心臓を狙いますが、屋敷ごと移されて計画は失敗しました。
そこでルネが考えたのが、強大な存在「アクソン」の心臓から武器を作る方法です。二体のアクソンを倒し、キュレーターに武器を作ってもらうことで、ようやく障壁を突破します。
モノリスの内部では、マエルが目覚め始めた力でルノワールを消し、一行はペイントレスにも勝利しました。長い遠征が報われた、と思いたくなる場面です。
帰還したルミエールで英雄として迎えられた直後、街の人々が消滅します。ルネとシエルも消え、マエルも一度ゴマージュを受けました。ペイントレスに勝ったあとで、街がこんなことになるとは!
勝利のあとに、この光景。祝杯を用意していたら、そのままテーブルに置くしかありません。
世界はヴェルソのキャンバスだった

現実の家族を壊した火事
ルミエールも大陸も、現実のヴェルソが描いたキャンバスの中に存在します。デサンドル家は、絵の中に世界を作り、そこへ入る力を持つ画家の家族でした。
現実の屋敷で火事が起き、ヴェルソは妹アリシアを助けて命を落とします。生き残ったアリシアは顔に大きな傷を負い、声も失いました。
母アリーンは息子の死を受け入れられず、彼のキャンバスへ入ります。そこには息子の魂の一部が残っていました。
アリーンは、絵の世界で家族の姿を描き直しました。遠征隊と旅をしてきたヴェルソも、行く手を阻んだルノワールも、彼女が描いた存在なんです。
父ルノワールは、妻を現実へ連れ戻そうとしました。キャンバスへの長い滞在は現実の身体を消耗させ、アリーンを危険な状態へ追い込んでいたからです。
両親の衝突によって「フラクチャー」が起き、ルミエールが大陸から切り離されます。家族の争いが街を壊し、そこから始まった遠征にギュスターヴたちも巻き込まれたのでした。
マエル、仮面のアリシア、二人のルノワール
マエルの正体は、現実からキャンバスへ入ったアリシアです。姉クレアに頼まれて両親を連れ戻そうとした際、母の強大な力に圧倒され、記憶を失ってマエルとして生まれ直しました。
仮面をつけたアリシアは、アリーンが描いた娘の写しです。同じ顔につながる人物が、現実から来たマエルと、絵として生まれた少女の二人いるんですね。
そして、遠征隊を襲ったルノワールは、描かれた父親でした。キュレーターとして一行を助けてきた人物こそ、現実のルノワールです。
この家族、名前だけで呼びかけたら二人振り向きそうです。
ゴマージュの原因と、第3幕で変わる敵
ゴマージュを起こしていたのは現実のルノワールで、ペイントレスは彼の消去を食い止めていました。モノリスの数字は、アリーンの力が衰え、守れる年齢が下がっていくことを知らせる警告だったんです。
絵の世界の生命や力を支えるのは、「クロマ」という絵の具にあたる物質です。ルノワールはアリーンへ戻るクロマを減らし、彼女が世界を維持する力を奪おうとしました。
クレアも父を助け、ネヴロンを作っています。遠征隊を襲う怪物まで、母をキャンバスから出すための争いに関わっていたのでした。
ペイントレスを倒したことで、消去を抑えていたアリーンが現実へ戻り、ルノワールの力が街へ及びます。遠征隊が信じた救済は、彼にとって妻を取り戻す機会だったんですね。
ヴェルソはこの真相を知りながら、遠征隊を利用していました。不死の人生を終わらせるために、アリーンを外へ出す道を選んだ。その告白を、マエルは突きつけられます。
ゴマージュのあと、マエルはアリシアの記憶と画家の力を取り戻し、キャンバスで再び目を覚ましました。現実の父に街の再生を求めますが、父はキャンバスそのものを消す方針を貫きます。
マエルは仲間のクロマを使い、ルネとシエルを描き直します。エスキエ、モノコ、ヴェルソも集まり、一行はルミエールへ向かいました。
最後のルノワール戦では、マエルが過去の遠征隊員たちのクロマから兵を生み出し、仲間と共に進みます。ルノワールがアクソンを使う一方、キャンバスへ戻ったアリーンも一行を助けました。
敗れたルノワールは、現実で衰弱した妻の姿をマエルに示し、帰ってきてほしいと訴えます。マエルにとっては、ルネやシエルたちも家族です。
彼女はもう少しキャンバスに残ると父を説得し、ルノワールは現実へ退きました。父を倒して、やっと終わり。そう思うところで、ヴェルソがもう一つの決断をするんです。
ヴェルソかマエルか、二つのエンディング

ヴェルソが向かった先には、絵を描き続ける小さな少年がいました。現実のヴェルソの最後の魂のかけらで、この子が描くことによってキャンバスは保たれています。
旅のヴェルソは少年に、もう描くのをやめてもいいと語りかけます。そこへマエルが来て、世界を存続させるかどうかをめぐり、二人は対立しました。
ヴェルソは、マエルが永久にこの世界へ残るつもりだと悟ります。彼は少年を休ませ、アリシアを現実へ戻したい。マエルは仲間のいる世界を守りたい。
最後は、マエルかヴェルソのどちらを操作して、相手と戦うかを選びます。ずっと一緒に戦ってきた二人が、最後の対戦相手になる。これは選びづらいですよね!
ヴェルソ側の結末――少年の筆を止め、家族は墓前へ
ヴェルソを選んでマエルに勝つと、彼は彼女をキャンバスから送り出します。ルネ、シエル、モノコ、エスキエたちが消え、ヴェルソは少年の手を取って、描き続ける役目を終わらせました。
キャンバスは住人ごと消え、描かれたヴェルソも消滅します。自分もその世界の一員だと分かったうえでの選択です。
現実へ戻ったアリシアは、ルノワール、アリーンたちと、本物のヴェルソの墓を訪れました。手にしているのは、エスキエのぬいぐるみです。
墓前では、父と母が寄り添います。アリシアの前に遠征隊の仲間たちの姿が現れ、別れの手を振って消えていくのでした。
兄への追悼と、共に旅をした人たちへの別れが、一つの場面に重なります。ぬいぐるみの形でエスキエが手元に残るのも、胸にくるんですよね。
マエル側の結末――再生した街と、演奏会のヴェルソ
マエルを選んでヴェルソに勝つと、倒れた彼は消え始めます。ヴェルソはこの生を終えたいと求め、マエルは彼を抱いて、自分がよいと思う道を貫きました。
その後のルミエールには、人々の暮らしが戻っています。マエルの力によってギュスターヴやソフィーも再び姿を得て、ルネとシエルらと共に演奏会へ集まりました。
舞台へ進むのは、またこの世界に姿を持ったヴェルソです。マエルたちが客席から見守る中、彼はピアノに向かいます。
旅の途中で、ヴェルソはピアノの演奏会を懐かしみ、マエルはルミエールでの演奏会を約束していました。約束の実現が、今度は彼の消えたいという願いとぶつかるんです。
最後のマエルには、顔や目に絵の具のような変化が現れます。満ち足りた再会の光景に、この変化が入り込むところがぞっとしますね。
考察:ピアノの違和感と、描かれた人々の命
マエルの顔の変化を、母と同じようにキャンバスへ深くのめり込み、現実の身体を消耗させている兆しと読むことができます。これは、アリーンの経緯に重ねた考察です。
演奏会について私がいちばん引っかかるのは、客席の幸福を、舞台の人も望んでいるのかという点です。「みんなが喜んでいるから」で押し切ると、本人が断る余地まで奪ってしまう。私は、その怖さを感じます。
マエルの気持ちにも、うなずいてしまうんですよね。「現実に戻れば幸せ」と、外から決めてしまう怖さもあると思います。周りが望む回復と、自分が生きたい場所が違ったら、どうでしょうか。
一方で、ルネもシエルも、旅の中で自分の考えを持ち、怒り、悲しみ、誰かを支えてきました。私は彼女たちの命にも重みを感じます。描かれた存在を「偽物」と呼ぶだけで片づけるには、あの遠征で知った一人一人の顔が浮かぶんです。
両エンドを自分のプレイで確かめるには
最終選択前のセーブが残っていれば、もう一方の結末も体験できます。片方をクリアしたあと、タイトル画面から選択前のデータを読み込み、操作する人物を変えて再び決闘する流れです。
結末を決めたあとで探索を続けることもでき、引き継いで最初から遊ぶ「ニューゲーム+」も選べます。あの旅をもう一度やりたい気持ちと、ギュスターヴに会うのがつらい気持ちが、同時に出てきそうですね。
よくある質問(FAQ)
途中の会話の選択や仲間との関係で、結末は変わる?
エンディングの判定に使われるのは、最終決闘の直前に選ぶ操作キャラクターです。そこまでの会話の選択は、この分岐を決める条件に入りません。
どちらが公式の正史・真エンド?
制作側は、二つの結末を共に有効なものとして扱っています。脚本担当者も、一方を正史に選ぶ方針を取っていません。
演奏会でシエルのそばにいる男性は誰?
シエルが失っていた夫のピエールです。彼女の再会まで含めて、マエルがかなえた暮らしの大きさを感じる場面ですね。
まとめ
『エクスペディション33』の結末が苦しいのは、長い旅で好きになった人たちの願いが、最後に食い違うからだと思います。
敵の攻撃には、回避や反撃で応えてきました。けれど、失った人への愛情と、残る人が望む生き方の衝突には、同じ答えを出せない。ピアノを聴いたあとのためらいまで残る、そんなラストです。