ここからは、映画『ゴッドファーザー』(1972年・第1作)の結末までのネタバレです。フランシス・フォード・コッポラ監督の映画本編を扱います。『PART II』『PART III』、2020年の再編集版『ゴッドファーザー<最終章>』、マリオ・プーゾの原作小説は対象外です。
ラストで新しいドンになるのは、父ヴィトーの三男マイケル。敵対するボスたちの暗殺を命じ、兄の死を手引きした義弟カルロも殺させます。それなのに、妻ケイには関与を否定。部下がマイケルを「ドン・コルレオーネ」と呼び、ケイの目の前で書斎の扉が閉じるところで、第1作は終わります。
あの扉、静かに閉まるだけなのに嫌な感じが残りますよね。人名の多さに気を取られがちですが、追いたいのは「家族の仕事に関わらない」と言っていたマイケルが、誰を守るために、何を選んだか。その変化が最後の嘘につながります。
結婚式のマイケルは、まだ家業と距離を置いていた
物語は1945年、ニューヨークのコルレオーネ家で催される、娘コニーとカルロの結婚式から始まります。父ヴィトーはマフィア組織のボス、つまりドン。大勢が歌って踊る一方、書斎には頼みごとを抱えた人が次々に訪れました。
葬儀屋のボナセーラは、娘に暴行した男たちへの報復を求め、ヴィトーへの忠誠と引き換えに助けを得ます。歌手ジョニー・フォンテーンの願いは、映画の役を手に入れること。交渉役の弁護士トム・ヘイゲンが動いても映画プロデューサーのウォルツは拒みますが、やがて彼のベッドには愛馬の切断された首が置かれます。ちょっと待って、出演交渉がそこまで行くんですか!
この家では、助けてもらうことと、相手に借りを作ることが結びついているんですね。トムはヴィトーに育てられた息子であり、組織の相談役も務めています。
一方、軍務を終えたマイケルは、恋人ケイを連れて式に出席。父の怖い仕事を説明しても、自分は家族と違うと話します。長男ソニーが父の仕事を支えるなか、三男のマイケルは、その輪の外にいるつもりでした。
ヴィトー銃撃と病院の夜で、マイケルが動き出す

麻薬取引の拒否が、父への襲撃を招く
麻薬商ソロッツォは、タッタリア家を後ろ盾にして、ヴィトーに資金と政治・司法方面の支援を求めます。ヴィトーは、麻薬に手を出せば政治家との関係を失うと考えて拒否。ところが、同席したソニーは取引への関心を見せてしまいました。
父を排除すれば息子とは話ができる。ソロッツォはそう見込み、ヴィトーの暗殺を企てます。探りを入れに出された用心棒ルカ・ブラージは殺され、トムも拉致されました。ヴィトーは果物を買っている最中に銃撃されますが、一命を取り留めます。
父の代わりにソニーが組織を率い、抗争が始まります。ヴィトーはこの銃撃では死んでいません。父の死と跡継ぎの交代を一続きに覚えていると、この先の父子の会話が抜けてしまうんです。
護衛のいない病院で、父を守る側に立つ
見舞いに来たマイケルは、病院に父の護衛がいないと気づきます。警察が護衛を追い払っており、再び殺されかねない状況。看護師の助けでヴィトーのベッドを別の部屋へ移し、パン屋のエンツォと病院の前に立ちました。
二人は武装しているように見せ、近づいてきた車を退けます。父を守るためなら、自分が危険な場所に立つ。結婚式での距離感から、マイケルの行動はもう変わっていますね。
そこへ来たマクラスキー警部は、マイケルを殴ります。この警官はソロッツォに買収されている人物でした。マイケルにとって、警察まで父を狙う側に回っている事態です。
レストランで二人を射殺し、シチリアへ逃れる
ソロッツォとマクラスキーを、自分の手で殺す
ソロッツォがマイケルとの会談を求めると、マイケルはその場でソロッツォとマクラスキーを殺す計画を提案します。ソニーたちは、家業に関わってこなかった弟の申し出を最初は笑いました。それでもマイケルは、ソロッツォがいる限り父は狙われ続けると考えています。
クレメンザが手配した銃は、会談場所のレストランのトイレに隠してあります。マイケルは席を立って銃を取り、戻ると二人を射殺。父を守ろうとして、自分自身が殺人を実行するところまで踏み込みます。
その後、マイケルはケイに別れを告げないままシチリアへ潜伏しました。ケイがトムを訪ねても、居場所は教えてもらえません。守られる側のケイには、何が起きているかを知る権利さえ回ってこないんですね。
アポロニアとの結婚も、車の爆発で失われる
シチリアでマイケルは若い女性アポロニアと出会い、結婚します。しかし、潜伏先も安全ではありません。護衛ファブリツィオが裏切り、マイケルの車に爆弾が仕掛けられました。
車を運転しようとしたアポロニアが、その爆発で死亡します。マイケルを狙った攻撃が、妻の命を奪う結果になったのです。
ファブリツィオの裏切りは、後半のテッシオやカルロと同じく、身近な人が敵に通じていた事件。遠くへ逃げ、別の家庭を築いても、抗争はそこまで届いてしまいます。
ソニーは料金所で殺され、ヴィトーが抗争を止める

マイケルがシチリアにいるあいだ、ニューヨークではソニーが組織を率いています。妹コニーが夫カルロに暴力を振るわれていると知ったソニーは、カルロを殴って警告しました。
それでも暴力は繰り返され、コニーから電話を受けたソニーは、怒って家を飛び出します。向かう途中の料金所で待ち伏せされ、銃撃されて死亡。妹を助けに行く行動を、敵に利用されたんです。
回復したヴィトーは、息子の死を知ると復讐を止め、各ファミリーとの和平に動きます。ボナセーラには、傷ついたソニーの遺体を母親が見られるよう整えてほしいと頼みました。結婚式で助けを得た葬儀屋に、今度は父親として頼む場面です。
和平の席では、ヴィトーが麻薬取引への支援を条件付きで認め、マイケルの安全な帰国も求めます。そして会談を経て、タッタリアの背後で動いていたのはバルジーニだと見抜きました。長男を失った父は、残る息子を帰すために譲歩するんですね。
帰国したマイケルが跡を継ぎ、父の忠告を受ける
ケイには合法化を約束し、組織の体制を変える
アメリカに戻ったマイケルはケイと再会し、結婚します。そのときの約束は、5年以内に家業を合法的な事業にすること。ヴィトーは第一線を退き、マイケルが組織を率いるようになりました。
マイケルは、これからの抗争に向く相談役ではないとしてトムを外し、弁護士の仕事を担当させます。カルロには仕事を与え、ラスベガスへの移転を進めますが、ホテルとカジノの買収を持ちかけられたモー・グリーンは拒絶。次男フレドがグリーンをかばうと、マイケルは家族に敵対する者の肩を持つなと厳しく警告しました。
合法化の約束があるからといって、すぐに穏やかな商売になるわけではありません。ケイへの説明と、部下や兄への態度を並べると、同じ人なのに話す温度がずいぶん違います。
ヴィトーの死と、テッシオの申し出
ヴィトーは、マイケルにこの仕事を継がせたくなかったと打ち明けます。息子には政治の表舞台で活躍してほしかった父。その願いは、もう届かないところまで来ていますね。
父は同時に、バルジーニがマイケルを狙うと忠告します。バルジーニとの会談を持ちかけ、安全を保証する身内こそ裏切り者だと教えます。
その後、ヴィトーは庭で孫アンソニーと遊んでいる最中に、心臓発作で死亡。銃弾を生き延びたドンの最期は、孫と過ごす日常の中でした。
葬儀で会談を提案してきたのは、古参幹部のテッシオです。父の忠告どおりの申し出を聞き、マイケルは裏切りを見抜きます。長年の付き合いも、若い跡継ぎへの忠誠を保証してはくれません。
洗礼式で誰が殺された? 狙われるボスは5人

マイケルはコニーとカルロの子の洗礼式に出席し、名付け親となります。ここでいう名付け親は、洗礼を受ける子を支える代父のこと。子どもの名前を考える係、という意味だけではないんです。
教会では、マイケルが悪を退ける誓いに答えています。それと交互に映るのが、配下による暗殺。マイケルの命令で、敵対する4家のドンとモー・グリーンが殺されます。五大ファミリーにはコルレオーネ家も含まれるため、対立するドンは4人です。
| 標的 | 殺害される場面 |
|---|---|
| バルジーニ | 警官に扮したアル・ネリが、階段で射殺 |
| タッタリア | ベッドにいるところを、ロッコ・ランポーネたちが銃撃 |
| クネオ | 回転扉に閉じ込められ、ウィリー・チッチが射殺 |
| ストラキ | エレベーターから出ようとしたところを、クレメンザが銃撃 |
| モー・グリーン | マッサージ中、眼を撃たれて死亡 |
この5人は主要な標的で、巻き添えを含む全犠牲者の人数ではありません。グリーンはラスベガスの人物であり、ニューヨークの五大ファミリーのドンとは別です。
教会のマイケルが銃を持つ必要は、もうありません。人を動かして、離れた場所の殺害を実行させる立場にいます。トイレで銃を取ってきたレストランの場面との違いに、ぞっとしますよね。
テッシオとカルロも許されない
テッシオは助命を求めるが、連行される
テッシオが用意した会談は、マイケルをバルジーニ側に渡す罠でした。しかし予定どおりには進まず、テッシオの周囲をコルレオーネ家の男たちが固めます。
裏切りを見破られたと悟ったテッシオは、マイケル個人への恨みではなく、商売上の判断だったとトムに弁明。昔のよしみで助けてほしいと頼みますが、トムは断りました。
テッシオは処刑のために連れ去られます。殺害そのものは画面に出ませんが、助命が拒否され、粛清される結末です。マイケルは父の古参幹部にも例外を作りません。
カルロはソニー殺害への加担を認め、車内で絞殺される
マイケルはカルロに、ソニーの死について答えさせます。コニーへの暴力でソニーを誘い出したのは、偶然ではありません。カルロはバルジーニと組み、兄を待ち伏せに向かわせていました。
マイケルは、妹を未亡人にはしない、罰は組織から外すことだとして、ラスベガスへ送ると告げます。安心したカルロは、相手がバルジーニだったと白状。その直後、空港へ向かうつもりで車に乗ると、後部座席のクレメンザに首を絞められ、殺されました。
命を助ける言葉は、告白を引き出すための嘘です。甥の名付け親になった日に、その子の父を殺す。家族だから助かるはずだという期待まで、マイケルは利用してしまいます。
最後の扉が閉じる意味【考察】

画面で起きることは、ケイへの否定とドンへの忠誠
引っ越しの準備が進む屋敷に、コニーが駆け込んできます。夫カルロを殺したとマイケルを責め、ケイにもその話が聞こえました。
ケイが真偽を尋ねると、マイケルは仕事に口を出すなと怒ります。それでも一度だけ質問を許し、カルロの殺害への関与を否定。ケイはいったん安堵して、飲み物を用意するため部屋を離れます。
そこへ部下たちが入り、クレメンザはマイケルの手に口づけして「ドン・コルレオーネ」と呼びました。ケイが外からその様子を見つめていると、アル・ネリが扉を閉めます。閉めるのはマイケル本人ではありません。
考察:マイケルが、父の席に座る結末
私には、あの扉はケイに見せる夫と、部下が従うボスを隔てるものに見えます。ケイには否定し、部下には忠誠を受け入れる。同じ書斎で、その二つの顔を使い分けるマイケルが残ります。
冒頭では、ボナセーラがヴィトーの手に口づけしていました。最後にクレメンザからその敬意を受けるのは、マイケル。家業から距離を置いていた息子の変化が、誰が誰の手に口づけするかで見えてきますね。
敵を倒して権力を得ると同時に、妻とは真実を共有できなくなる。だから私は、ドン誕生の晴れ舞台を見ても素直に喜べません。家族を守ろうとした行動が、家族を傷つけ、遠ざけるところに、この結末の苦さを感じます。
考察:洗礼式の誓いが、最後の嘘につながる
洗礼式では悪を退ける言葉を述べながら、暗殺を命じています。ラストでは妻を安心させる答えを返しながら、カルロ殺害の真実を隠す。どちらも、口にする言葉と行動が食い違う場面でしょう。
穏やかな声なら信じたくなりますが、この夫の「違う」は安心できません! ケイが完全に納得したのか、疑いが戻ったのかは、最後の表情から考える余地があります。本人が真相を知ったと断言する台詞はないんですね。
注意:第1作の結末と、続編の出来事を混ぜない
1972年の映画が終わるのは、ケイの前で書斎の扉が閉ざされる場面です。『PART II』『PART III』や『ゴッドファーザー<最終章>』の結末、原作小説の描写を足すと、別の話になります。
また、扉が閉まることやケイへの否定は劇中の出来事ですが、「夫婦の断絶を象徴する」という意味づけは考察です。あの数秒から受ける感情まで一つに決める必要はありません。私は、部下が丁寧に扉を閉める冷たさがいちばん残ります。
もう一度観るなら、マイケルとケイの会話を比べたい
結婚式で家族と自分を分けて話すマイケルと、最後に質問を制限するマイケルを比べてみてください。ケイに向けた言葉だけを追っても、二人の関係の変化が見えてきます。
病院で父のベッドを動かす場面も見直したいところ。父を救うために動ける息子を見てから、カルロへの嘘を聞くと、単純に悪人だと片づけられないんです。再鑑賞のつもりで再生して、結婚式から座り直すことになりそうですね。
第1作の人物や映像の雰囲気を振り返れる、パラマウント・ピクチャーズ英国の公式予告です。
よくある質問
マイケルは第1作の最後に死にますか?
第1作のラストでは生きており、組織の頂点に立っています。生涯の終わりを描いた映画として覚えると、続編と混同してしまいますね。
ソニーを殺したのはカルロですか?
カルロの役割は、妻への暴力でソニーを外へ誘い出し、バルジーニ側の罠にはめること。料金所で発砲したのは待ち伏せの刺客たちです。手引きと実際の銃撃は分けて考える必要があります。
最後にドアを閉めるのは誰ですか?
マイケルの部下アル・ネリが閉めます。ケイが夫と部下たちを眺めていた視界が、そこで遮られるんです。
まとめ
第1作のマイケルは、父への襲撃をきっかけに抗争へ入り、シチリアで妻を失い、帰国後に家業を継ぎます。終盤には外の敵と身内の裏切り者を排除し、命令を下すドンへ変わりました。
私が最後まで引っかかるのは、ケイを安心させるために使った嘘です。部下からは敬われても、妻には本当のことを話せない。閉じた扉の向こうにいるのは、冒頭でケイと並んで座っていた青年と同じ人物なんですよね。