ここからは『ショーシャンクの空に』の結末までネタバレします。対象はフランク・ダラボン監督の1994年のアメリカ映画本編(原題:The Shawshank Redemption)。収監から最後の海辺までの話で、原作小説の筋や結末は含みません。
アンディは死なず、脱獄に成功します。最後はメキシコのジワタネホで、仮釈放されたレッドと再会するハッピーエンドです。ただ、その海へたどり着くまでに、ブルックスとトミーの命が失われました。
「あの小さなハンマーで、本当に?」「所長の金をどうやって引き出したの?」。ポスターの裏の穴だけを覚えていると、銀行での逆転が少し唐突に感じますよね。アンディは壁を掘りながら、塀の外で生きる準備も進めていたんです。
1947年、無実の銀行員がショーシャンクへ
アンディ・デュフレーンは、妻とその愛人を射殺した罪で終身刑を言い渡されます。無実を訴えても認められず、1947年にショーシャンク刑務所へ収監されました。
ここを支配するのは、規律と聖書を重んじるノートン所長と、暴力で囚人を従わせるハドレー主任刑務官。入所した夜には、泣き出した新入りがハドレーに殴られ、命を落とします。アンディもボグズたちから性的暴行を受ける日々に置かれ、序盤は見ていて息が詰まるほどです。
レッドとの友情は、小さなロックハンマーから
アンディが近づくのが、囚人たちの頼みで品物を手配する「調達屋」のレッドでした。頼んだのは、鉱物を採集したり削ったりするための小型のロックハンマーです。
あまりに小さな道具なので、レッドはこれで脱獄するとは考えません。石を加工する趣味を持つアンディの姿と、道具の見た目が、疑いを遠ざけるわけですね。やがてレッドはリタ・ヘイワースのポスターも手配し、二人の付き合いは長く続いていきます。
屋上のビールで、アンディの立場が変わる
1949年、屋根の修理作業中に、アンディはハドレーが遺産相続の税金について愚痴をこぼすのを耳にしました。銀行員としての知識から解決策を申し出て、書類を作る代わりに仲間へビールを振る舞うよう求めます。
仕事のできる人に相談が集まるのは、職場でも見覚えのある光景ですよね。ただ、この相手は気軽に声をかけられる人ではありません。屋上でその交渉をするアンディには、こちらの肩まで固くなります。
取引は成立し、囚人たちは屋上で冷たいビールを飲みます。アンディ自身は飲まず、その様子を眺めているんです。ほんの短い時間、仲間たちは塀の外にいるような気分を味わいました。
この出来事で、刑務官たちもアンディの能力を認めます。後にボグズがアンディをひどく傷つけると、ハドレーはボグズに暴行を加え、彼は囚人用の病院へ送られました。それ以降、ボグズたちによるアンディへの襲撃は止まりますが、刑務官の保護に頼る立場になったことも見逃せません。
図書室と裏帳簿、所長に重宝された代償

本と音楽を増やすため、手紙を送り続ける
アンディは、老囚人ブルックスの助手として図書係に配置されます。そこで刑務官たちの税金や資産の相談を引き受けることになりました。図書室の看板はそのままでも、仕事はすっかり会計担当です。
一方、アンディは本の乏しい図書室を変えようと、毎週、州議会へ支援を求める手紙を書きます。6年後に寄付金や古本、レコードが届いても、そこで終わりにはしません。手紙をさらに増やし、やがて継続的な予算も得ました。
備品を頼んで返事が来ないと、数週間でもう疲れますよね。アンディは6年です。返事をした側が「これでもう手紙は止まるだろう」と思ったら、むしろ増えるのだから、なかなかの粘り腰!
届いたレコードの『フィガロの結婚』を、アンディは無断で所内放送に流します。囚人たちが作業を止めて歌声に耳を傾ける、あの場面です。罰として懲罰房へ入れられますが、戻ったアンディは音楽や希望は心の中に残せると話しました。レッドは、塀の中で希望を抱くのは危険だと反対します。
ブルックスは仮釈放されても、外の暮らしになじめない
長く図書係を務めたブルックスには、1954年に仮釈放が認められます。約50年を刑務所で過ごした彼は、喜ぶどころか外へ出ることを恐れ、仲間に刃物を向けてまで残ろうとしました。
結局、ブルックスは出所し、宿で暮らしながらスーパーで働きます。しかし、変わり果てた社会と孤独になじめず、部屋に自分の名前を刻んで首を吊り、亡くなりました。
「出られたのだから、もう大丈夫」とはならないんですね。ここでのブルックスの暮らしは、後にレッドが住む部屋と仕事にも重なります。この先、レッドも同じ道をたどってしまうのか? そう思うと、後半の何気ない日常も気になって仕方ありません。
架空のスティーブンスが、所長の不正を隠す
ノートンは、囚人を外の工事に働かせる事業で利益を抜き取り、業者から賄賂も受け取っていました。その金の出どころを隠す処理を任されるのがアンディです。
ランドール・スティーブンスは、裏金を扱うためにアンディが作った架空の人物です。その名義で金を動かせば、不正を追われても所長の名前へ直接たどり着きにくくなります。
所長には頼れる会計係でも、アンディは不正の中身を知っている人間でもあります。無事に出所してほしい相手ではなくなったんです。この関係が、トミーの登場で取り返しのつかない形に変わります。
トミーの証言は、なぜ握り潰された?
真犯人として浮かぶのはエルモ・ブラッチ
1965年、新入りのトミー・ウィリアムズが入所します。高卒資格を取りたいという彼に、アンディは読み書きから勉強を教えました。
アンディが服役している理由を聞いたトミーは、別の刑務所で同室だったエルモ・ブラッチを思い出します。エルモは、プロゴルファーと一緒にいた人妻を殺し、その女の夫である銀行員が代わりに捕まったと自慢していたんです。
つまり、アンディの妻と愛人を殺した真犯人として示されるのは、エルモ・ブラッチ。ただし、この話はトミーが聞いた告白として明かされます。エルモが裁かれたり、アンディに無罪判決が出たりする場面はありません。
アンディは、その証言をもとに再審を求めようとノートンへ相談します。これで、ようやく普通に刑務所を出られるのか? そう期待したくなる手がかりでした。
所長はトミーを殺させ、アンディを働かせ続ける
ところがノートンは協力せず、アンディを懲罰房へ入れます。裏金処理を任せる相手を失いたくないうえに、不正を知るアンディを自由にする気もなかったんです。
アンディが懲罰房にいる間、トミーには試験合格の知らせが届きます。教わったことが、ようやく実を結んだところでした。
ノートンはトミーを呼び出し、証言する意思を確かめてから、ハドレーに射殺させました。トミーの死は、逃走を企てたための射殺に見せかけた口封じです。その名目を、アンディにも告げます。
アンディが裏金の仕事を拒むと、所長は図書室を潰し、刑務官による保護もなくすと脅しました。追加の懲罰を受け、アンディが独房から戻るまでには計2か月かかります。
無実の手がかりを握る若者まで殺されたのですから、所長にもう一度頼めば何とかなる、とは思えません。ここまで見たら、アンディにこの場所で我慢し続けてほしいとは言えないですよね。
アンディの脱獄方法、長い準備が嵐の夜につながる

ロックハンマーは聖書、壁の穴はポスターで隠す
アンディは、房の壁が崩れることに気づき、小さなロックハンマーで少しずつ穴を掘り進めていました。1947年の収監から、脱獄する1966年までは19年。逃走の種明かしで、それだけの年月をかけた準備が見えてきます。
道具はページをくり抜いた聖書の中に、掘った穴は女優のポスターの裏に隠していたんです。ポスターはリタ・ヘイワース、マリリン・モンロー、ラクエル・ウェルチへと替わっても、穴を隠す役目を保ちます。
壁に女優を飾る趣味だと思って見ていると、完全にだまされますよね。こちらが年月の移り変わりを眺めている裏で、アンディは工事を続けていました。小さな道具だから無理だ、と決めつけたレッドの見立ても覆ります。
トミーが死んでから急に穴を掘り始めたのではありません。長年の穴掘りと、所長の不正を扱う仕事で得た準備が、脱獄の夜に合流します。
レッドが心配したロープは、荷物を運ぶため
脱獄前、アンディはレッドに、メキシコの太平洋岸の町ジワタネホで小さなホテルを営み、古い船を直して暮らしたいと話します。さらに、仮釈放されたらバクストンの牧草地にある樫の木を探すよう約束させました。
その頃、アンディが仲間からロープを手に入れたことを知り、レッドは自殺を考えているのではと恐れます。トミーの死と長い懲罰の直後なのですから、あの夜の心配には無理もありません。
実際のロープは、持ち出す荷物を袋に入れて足に結び、逃走中に運ぶためでした。友人には別れのように聞こえた会話が、海辺での暮らしへつながる約束だったわけですね。
壁の向こうへ抜け、雷の音に紛れて下水管を壊す
アンディはポスターの裏の穴を抜け、下水管のある場所へ進みます。雷鳴に合わせて管を叩き壊し、その中を這って刑務所の外へ脱出しました。
下水管を進む距離は500ヤード、約460メートルです。雨の中で両腕を広げる姿だけなら解放感に満ちていますが、その直前には長い汚水の通路を抜けています。見た目の爽快さに反して、逃走の最後まで過酷なんですね。
翌朝、点呼に現れないアンディの房は空でした。怒ったノートンがポスターへ石を投げると、石が紙を突き抜け、壁の裏に大きな穴があることが分かります。所長が仕掛けを知る頃には、アンディはもう外にいたんです!
所長とハドレーの末路、偽名の口座が逆転を生む

スティーブンス本人を名乗り、銀行から金を引き出す
アンディは逃げる前に、本物の裏帳簿を別の物とすり替えて持ち出し、所長のスーツと靴も確保していました。銀行へ行くための身なりと、不正を暴く証拠の両方です。
脱獄後、アンディはランドール・スティーブンスになりすまして銀行を回ります。その名義の身分書類も用意しており、銀行でスティーブンス本人として金を引き出しました。
ここで手に入れるのは、ノートンがため込んだ37万ドルを超える裏金です。所長を守っていた架空の名義が、今度はアンディの資金と逃走を支えます。金の処理を丸ごと任せた相手に、その金ごと出ていかれるとは!
ハドレーは逮捕、ノートンは拳銃で自殺する
アンディは、不正の証拠となる裏帳簿を新聞社へ送ります。刑務所の汚職と殺人が明るみに出て、警察がショーシャンクにやってきました。
ハドレーは逮捕され、ノートン所長は逮捕される前に拳銃で自殺します。アンディが所長を撃つ展開ではありません。証拠を外へ届けたことで、所長の支配が崩れたんです。
金庫に残されていたのは、ロックハンマーを隠していた聖書でした。所長は、くり抜かれたページを見て仕掛けを知ります。聖書を重んじていた本人が、脱獄道具の隠し場所を見落としていたという皮肉も残る結末です。
レッドは仮釈放後、ジワタネホでアンディと再会する

40年目の審査に通っても、自由な生活が怖い
アンディが去った翌年の1967年、レッドは服役40年目の仮釈放審査を受けます。以前のように更生をアピールする言葉を並べず、自分が犯した罪への後悔を語り、仮釈放が認められました。
しかし、外ではブルックスと同じ宿に住み、同じスーパーで働くことになります。長い刑務所暮らしから抜け出したレッドにも、自由な日常がなかなかなじみません。規則を破って刑務所へ戻ることまで考えるんです。
そこでレッドを踏みとどまらせるのが、アンディとの約束でした。待っている用事が一つある。その具体的な約束が、牧草地まで足を運ぶ理由になります。
樫の木と黒曜石の下に、手紙と現金がある
レッドはバクストンの牧草地へ向かい、石垣のそばの大きな樫の木を探します。目印の黒曜石の下には箱が隠され、中にアンディからの手紙と現金が入っていました。
手紙は、ジワタネホへ来て仕事を手伝ってほしいという誘いです。旅の資金もそこにあり、レッドには行き先と、そこで自分を必要とする友人ができました。
「希望を持とう」と言われるだけなら、長く服役した人には難しいでしょう。アンディは町の名前を教え、手紙を残し、旅費も用意しています。ここが私は好きです。気合だけで国境まで歩け、という話にはしていません。
海辺の抱擁まで描く、映画のハッピーエンド
レッドは宿を去り、仮釈放の規則を破ってメキシコを目指します。最初は希望を危険だと考えていた彼が、今度はアンディに会えることを願って旅に出るんです。
最後の砂浜には、古いボートを直すアンディがいます。歩いてくるレッドに気づき、二人は笑顔で抱き合いました。映画は「会えたらいいな」で終わらず、実際の再会を映します。
アンディの逃走が成功しても、孤独なレッドが残ったままなら、ここまで晴れやかな終わりにはならなかったと思います。青い海のそばに二人がそろって、ようやく長い刑務所の時間から離れられるんですね。
注意:映画の結末と、原作・その後の想像は分ける
ここで扱ったのは、1994年の映画本編の最後の再会までです。原作はスティーヴン・キングの中編『刑務所のリタ・ヘイワース』ですが、小説には映画と異なる細部や展開があります。原作の人物の結末を、この映画の出来事として重ねると話が変わってしまうんですね。
アンディは再審で無罪を認められて出所したわけではなく、脱獄して逃れます。レッドも、許可された旅行としてメキシコへ向かったわけではありません。再会の後、二人の法的な問題がどうなるかという決着は本編の外です。
結末の意味についての私の解釈では、アンディは身体を塀の外へ運び、レッドは自分から友人に会いに行く希望を取り戻したのだと思います。ただ、ブルックスが同じように歩めなかったことを、本人の気持ちの弱さだけにしてしまうと、映画が描いた孤独や長い服役の重さが消えてしまいますよね。
結末を知って見直すなら、聖書・靴・約束の会話に注目
もう一度本編を再生するときは、ノートンが房の検査で聖書を手にする場面と、脱獄直前にアンディが所長の靴を磨く場面を見比べてみてください。どちらも、所長のすぐそばで準備が進む場面です。
とくに靴は、顔ばかり見ていると素通りします。所長の足元まで気にして見ている人は、そう多くないでしょう。銀行でのスーツ姿まで思い出すと、逃げた後の行動も同じ夜に準備していたことがよく分かります。
気持ちの変化を追うなら、レッドの「希望は危険」という会話と、牧草地で手紙を読んだ後の旅立ちを続けて振り返るといいですね。ブルックスの出所後の部屋と、レッドの部屋も比べると、同じ場所から違う結末へ向かう二人の姿が残ります。
作品の雰囲気を振り返れる、ワーナー・ブラザースの公式予告編です(英語)。
よくある質問(FAQ)
アンディは何年で脱獄した?
収監された年が1947年、逃げた年が1966年なので、服役期間は19年です。小さな道具で長く掘り進めたことが、終盤の種明かしになります。
アンディの妻と愛人を殺したのは誰?
エルモ・ブラッチが犯行を自慢していた、とトミーが話します。この告白がアンディの冤罪を明らかにする手がかりで、トミー自身が殺人現場を目撃した話ではありません。
ランドール・スティーブンスは実在する登場人物?
独立した人物として登場する人ではなく、アンディが書類の上に作った名義です。ノートンの金を隠すための仕組みを、アンディ自身が逃走後に使いました。
最後の海はどこ? レッドとは本当に会えた?
物語上の場所は、メキシコの太平洋側にあるジワタネホです。ラストではレッドがアンディのいる浜辺へたどり着き、抱擁するところまで描かれます。
アンディもレッドも無実なの?
レッドまで冤罪という話ではありません。アンディは妻と愛人の殺人で濡れ衣を着せられましたが、レッドは自分が犯した罪を認め、その後悔を仮釈放審査で語りました。
まとめ
『ショーシャンクの空に』の逆転は、壁の穴、架空名義の口座、持ち出した裏帳簿がそろって生まれます。小さなハンマーを手配した頃からの長い時間が、最後の銀行の場面につながるのだから、よくできていますよね。
汚職の告発で所長とハドレーの支配は終わりましたが、失われた命や年月まで戻ったわけではありません。それでも、孤独になりかけたレッドが友人の待つ海岸へ歩いていく。あの抱擁があるから、痛ましい場面も含めて見届けたくなる一本なんです。