『新感染 ファイナル・エクスプレス』の結末のネタバレがあります。本作は2016年の実写映画です。
父ソグは感染し、娘を守るために列車から身を投げます。最後に救助されるのは、娘スアンと妊婦ソンギョンの二人です。二人が軍に撃たれずに済んだきっかけは、スアンの歌う「アロハ・オエ」でした。
列車から逃げ切れば安心、と思ったら最後に銃口まで向けられるんですよね。車内で困ることなんて、隣の人の肘が少しはみ出すくらいであってほしいのに。この映画は、釜山へ着く寸前まで息をつかせてくれません。
しかも、あの歌は冒頭で父が見た学芸会の映像につながっています。父がいなくて歌い切れなかった娘が、父を失ったあとで声を出す。その間に何が起きたのかをたどると、ソグの笑顔も、トンネルの結末も、ずっと切なく感じます。
母に会うはずだったKTXで、感染が広がる
誕生日にスアンが欲しかったのは、母に会う時間
ソグはソウルで働くファンドマネージャーです。人のお金を運用する仕事に追われ、娘スアンと過ごす時間を後回しにしてきました。妻とは別居していて、スアンは父と祖母のもとで暮らしています。
誕生日のために買ったゲーム機も、スアンがすでに持っているもの。プレゼントを買う前に、家の棚を一度見て!と言いたくなりますよね。娘について知らないことが、家の中にまであるんです。
スアンの願いは、釜山にいる母親に会うことでした。ソグは仕事を理由にためらいますが、娘が一人でも行こうとするほど母を恋しがっていると知り、同行を決めます。
出発前、ソグは自分が欠席した学芸会の録画を見ます。スアンが歌っていたのは「アロハ・オエ」。けれど、途中で声が止まってしまいました。父に聞いてほしかった歌なのに、その父が客席にいなかったのです。
感染した女性の乗車で、逃げ場のない車内になる
翌朝、父娘はソウル発・釜山行きの高速鉄道KTXに乗り込みます。同じ列車には、妊婦ソンギョンと夫サンファ、高校生カップルのヨングクとジニ、年配の姉妹インギルとジョンギル、会社役員ヨンソクらがいました。トイレには、怯えたホームレスの男性も隠れています。
発車直前、傷を負った女性が車内へ駆け込みます。彼女はすでに感染していて、助けようとした女性乗務員にかみつきました。襲われた乗務員も凶暴化し、ほかの乗客を襲い始めます。
この感染者たち、ゆっくり歩いてはくれないんです。狭い通路を走って追ってくるので、ソグはスアンを抱え、まだ感染者がいない車両へ逃げ込みました。誰か一人がかまれると、その人が新たな脅威になり、車両ごとの安全があっという間に崩れます。
ソグは当初、追いつこうとするサンファ夫妻を避難先に入れることさえためらいます。スアンが年配の乗客に席を譲っても、こういうときは自分のことだけ考えるようにと叱りました。娘を守りたい気持ちはあっても、ほかの人まで助ける余裕はありません。
一方のサンファは、妻を守りながら周囲の人にも手を貸します。満員電車で隣に立たれたら窮屈そうですが、この列車ではぜひ隣にいてほしい人ですね。ソグとは反発し合いながらも、同じ危険の中で動く仲間になっていきます。
車外でも混乱が広がり、ソグの母からの電話は苦しげな声とともに途切れました。列車だけで起きた事件ではなく、家へ引き返せば元どおりという状況でもないのです。
大田駅で救助は崩れ、サンファが仲間を守る

軍がいるはずの駅で、父娘は離れ離れになる
列車は、軍による保護が期待される大田(テジョン)駅に停車します。ソグは知人との電話で、自分と娘だけは別の経路から保護してもらおうとしていました。ホームレスの男性も二人についていきます。
ですが、待っていた兵士たちまで感染していたんです。駅で救われるはずだった乗客は、再びKTXへ逃げ戻ることになりました。ソグもサンファやほかの生存者に助けられます。
混乱の中、スアンは父とは違う車両に乗りました。ソンギョン、インギル、ホームレスの男性とともに車内のトイレに身を潜めます。ソグ、サンファ、ヨングクは離れた車両にいて、間には感染者の群れが立ちはだかっていました。
娘と再会するには、ソグ一人の力では足りません。妻を救いたいサンファ、ジニのいる避難車両へ向かいたいヨングクと組んで、危険な車内を突破します。
暗闇と携帯電話を使って、感染者の間を進む
三人は腕を守るためにテープを巻き、バットなどを使って感染者に立ち向かいます。途中で列車がトンネルに入ると、感染者が人を追いにくくなることに気づきました。暗闇で相手の姿を捉えにくくなる性質と、音への反応を利用して進むのです。
携帯電話を鳴らして注意をそらし、トンネルの暗さに紛れて移動。力で押し切るだけでは届かなかった場所へ、三人が協力してたどり着きます。スアンとソンギョンたちを救い出したあとも、まだ終わりではありません。今度は、感染者がいない15号車まで全員を連れていく必要がありました。
15号車の拒絶が、サンファの逃げる時間を奪う
15号車にはヨンソクとジニらが避難していました。ジニは仲間を迎えようとしますが、ヨンソクは、外から来る人も感染しているかもしれないと周囲をあおり、扉を塞がせます。
目の前には助けられるはずの乗客、背後には追ってくる感染者。避難先から拒絶されたことで、ソグたちは逃げる時間を失います。ヨングクが扉を突破しようとする間、サンファが感染者を食い止め続けました。
そのサンファも、とうとうかまれます。感染を悟った彼はソグに妻を託し、自分が残って仲間を逃がしました。最後には生まれてくる子どもの名前も告げます。体が変わり始めても、妻のところへ走って戻るより、妻が逃げる時間を作ることを選んだのです。
ソグたちは15号車へ入れたものの、インギルは逃げ遅れて感染しました。さらに、ヨンソクと乗客たちは到着した生存者を危険視し、別のデッキへ追いやります。扉一枚を越えても、人として迎えてもらえないんですね。
姉を失ったジョンギルは、拒絶を続ける乗客たちを見たあと、感染者側の扉を自ら開けます。群れが車内へ流れ込み、そこにいた乗客とジョンギルも襲われました。ただし、ヨンソクと男性乗務員はトイレに隠れ、この襲撃を生き延びます。
姉妹の死には、感染の速さだけでなく、互いを見捨てた乗客の選択が重なっています。サンファが命を使って守った先に、この拒絶があるのは、かなりきつい場面です。
東大邱駅での乗り換えで、さらに仲間を失う
ヨンソクが乗務員とジニを犠牲にする
KTXは東大邱(トンデグ)駅で進めなくなります。線路が塞がれていて、運転士は生存者を釜山へ運ぶため、別の線路で動かせる機関車を探しにいきました。乗客も車外へ出て、乗り換えなければなりません。
トイレに隠れていたヨンソクは、一緒に生き延びた男性乗務員を感染者の前へ押し出し、その隙に逃げます。仲間として助け合うどころか、自分が逃げるために人を使うんです。その仕切り能力、せめて救助に使ってほしい!
続いて、移動中のヨングクとジニにも危険が及びます。ヨンソクの逃走に巻き込まれ、ジニは感染者にかまれました。ヨングクは彼女を置いて逃げず、そのそばに残ります。
ジニは感染者へ変わり、ヨングクを襲います。彼もここで命を落としました。互いを思っていた高校生二人の逃避行は、ここで終わったんです。サンファとソグに協力して車両を突破したヨングクも、釜山の安全地帯には届きません。
ホームレスの男性と運転士が、逃げ道を残す
炎上した列車の衝突で車両が倒れ、ソグ、スアン、ソンギョン、ホームレスの男性がその下に閉じ込められます。感染者が詰まった車両の窓が壊れ、群れが迫ってきました。
逃げる隙間を見つけても、全員がすぐ抜け出せる状況ではありません。そこでホームレスの男性が残り、感染者を食い止めてソグたちを逃がします。最初は怯えてトイレに隠れていた人が、最後には子どもと妊婦を守る側になるんですね。彼もこの場で命を落とします。
運転士は別の機関車を動かし、乗客の脱出を助けようとしていました。しかし、傷ついて追われるヨンソクを助けに出たことで、感染者に襲われます。ヨンソクは運転士を置き去りにし、自分だけ機関車へ乗り込みました。
ようやくソグたち三人も追いつきます。後ろには感染者がしがみつき、連なるようにぶら下がってきました。ところが、逃げ切ったはずの機関車の中にも、まだ危険が残っていたのです。
ソグはなぜ飛び降りた?最期に思い出した娘の誕生

ソグにかみついたのは、感染したヨンソク
運転室にいたヨンソクは、すでに感染していました。意識が残っている間は助けを求めますが、やがて完全に凶暴化し、ソグを襲います。
ソグはヨンソクと格闘し、走行中の機関車から突き落としました。ただ、その戦いでソグも手をかまれ、感染してしまいます。ヨンソクの転落のあと、ソグにも別れの時間が迫りました。
娘を託したあと、父は一人で列車の後部へ向かう
ソグはまだ話せるうちに、スアンをソンギョンに託します。二人を運転室に残し、娘に別れを告げました。サンファから預かった妻に、今度は自分の娘をお願いするんです。
スアンは父を失いたくなくて泣き、引き止めます。危険を越えて、やっと一緒にいられる父になったのに。娘からすれば、感染するから離れるしかないという説明で納得できるはずもありません。
けれど、このままそばにいたら、自分が娘とソンギョンを襲ってしまいます。ソグは二人から離れ、列車の後部へ向かいました。自分の命を延ばすことより、二人の命を守る行動を選びます。
変化していく体の中で、ソグが思い出すのはスアンが生まれた日のことでした。幼い娘を抱いた喜びがよみがえり、最期には穏やかな笑顔を浮かべます。そして、完全に理性を失う前に、走る列車から自ら身を投げました。ソグはここで命を落とします。
私は、あの笑顔を「もう怖くないから」とだけは感じません。娘を愛していた自分を思い出し、その娘を守り切ろうとする表情に見えます。これは父の最期への考察ですが、仕事に追われて娘を見ていなかった冒頭を思うと、つらさが増しますよね。
ソグは初めから誰にでも優しい父ではありませんでした。娘の言葉を受け止め、サンファたちに助けられ、自分も人を助けるようになった。その変化の最後に、娘のために自分が離れる決断があるんです。
ラストの歌「アロハ・オエ」は、なぜ二人を救った?

暗いトンネルで、軍は二人を感染者と見分けられない
スアンとソンギョンは、釜山の手前まで機関車で進みます。しかし、線路の先が塞がれていて、列車を降りて歩くことになりました。二人は死体や障害物を越え、暗いトンネルへ入ります。
反対側には軍の兵士が待機していました。安全地帯を守っているものの、近づく二人が感染者なのか生存者なのか、暗さのため判別できません。感染を持ち込ませないため、上官からは射殺命令が下ります。
父もサンファもホームレスの男性も、スアンとソンギョンを生かすために命を落としました。ようやくたどり着いた場所で、今度は生きた人間の銃に狙われるんですね。最後の危険は、トンネルの先から向けられていました。
そこで、スアンが「アロハ・オエ」を歌い始めます。歌声を聞いた兵士は二人を生存者だと認識し、発砲せずに救助へ走ります。娘とソンギョンは生きたまま迎えられるんです。
父に聞いてほしかった歌を、父がいない場所で歌う
「アロハ・オエ」は、スアンが学芸会で歌い切れなかった曲でした。途中の父娘の会話でも、父がいなかったから最後まで歌えなかったと話します。その父が本当にいなくなったあと、同じ曲を歌うんです。
物語の出来事としては、歌によって軍の判断が変わります。感染が治る場面でも、感染者を撃退する場面でもありません。二人を外から見ていた兵士に、生きた人間の声が届いたのです。
そのうえで歌の意味を考察すると、父への別れと、娘が生きていく一歩が重なっているように感じます。以前は父に聞いてもらうための歌でしたが、最後は、その父を失った悲しみを抱えたまま声を出しています。
スアンを守る大人たちは、ここまで何度も体を張ってきました。最後にはスアン自身の声が、自分とソンギョンを助けます。守られてきた子どもが、最後にもう一人の生存者を守る。この小さな変化も、ラストの温かさだと思います。
生き残るのは誰?主要人物の最終状況

スアンたちと列車に乗った主な人物は、それぞれ次の結末を迎えました。ソンギョンのお腹の子は、まだ生まれていないんです。
| 人物 | 最後の状況 |
|---|---|
| スアン | トンネルで歌い、軍に助けられる。 |
| ソンギョン | 夫を失うが、スアンとともに救助される。妊娠中。 |
| ソグ | ヨンソクとの戦いで感染。娘から離れて列車から飛び降り、死亡する。 |
| サンファ | 避難車両の手前でかまれ、妻と仲間を逃がすために残る。 |
| ヨンソク | 自分も感染し、ソグを襲う。格闘の末に列車から落とされる。 |
| ジニ | ヨンソクの逃走に巻き込まれてかまれ、感染者になる。 |
| ヨングク | ジニのそばに残り、感染した彼女に襲われて死亡する。 |
| インギル | 15号車への避難に間に合わず、感染する。 |
| ジョンギル | 感染者を車内に入れ、自身も襲われる。 |
| ホームレスの男性 | 東大邱駅の車両の下でソグたちを逃がすために残り、命を落とす。 |
| 運転士 | 機関車を用意するが、ヨンソクを助けようとして襲われる。 |
| 男性乗務員 | ヨンソクとトイレに隠れて生き延びたあと、彼の逃走の犠牲になる。 |
ソグが最後に託す相手は、スアンの実母ではありません。夫サンファとともに同じ列車へ乗っていたソンギョンです。家族を失った二人が、血のつながりのない相手と支え合って安全地帯へ届きます。
感染の原因と母親との再会で、勘違いしやすいこと
ソグの仕事は感染の発生につながっていた
ソグには部下から電話が入り、自分たちが仕事で関わったバイオ企業が感染の発生に関係していると分かります。部下は、自分たちにも責任があるのではないかと苦しんでいました。ソグもその知らせを受け、動揺します。
冒頭ではバイオ関連施設の漏出が話題になり、トラックにはねられた鹿が再び起き上がる場面もあります。人間が列車でかまれる前から、異常は始まっていたのです。
ソグの仕事は企業への投資にかかわるもので、彼自身が研究者という話ではないんですね。自分たちの仕事が災厄につながっていた、という重い知らせが電話で届きます。
ここからは考察です。自分の家庭さえ十分に見ていなかった父が、仕事の先にいた人々の被害まで突きつけられる。娘以外の人を助けるようになったソグにとって、この電話は、自分の利益だけでは済まない現実を知る場面だと感じます。
救助後の母娘の再会や出産は、本編では描かれない
最後に描かれるのは、スアンの歌に気づいた軍が救助へ動くところです。スアンの母親の生死も、最後まで確定しません。
関連作の『ソウル・ステーション/パンデミック』は前日譚のアニメ映画。『新感染半島 ファイナル・ステージ』は同じ世界の4年後を舞台に、別の主人公を描く実写映画です。2016年のKTXでの父娘の旅は、このトンネルの救助でひと区切りになります。
本編を見返すなら、父娘の歌と扉の場面に注目
配給会社ツインによる日本版予告編です。
もう一度本編を見るなら、学芸会の録画と、途中でスアンが歌えなかった理由を話す場面を続けて意識してみてください。最後のトンネルだけでは分からなかった、父への気持ちがつながります。
もう一つは車両の扉。ソグがサンファ夫妻を入れるのをためらう場面、ヨンソクたちが生存者を締め出す場面、そしてソグが娘を守るために運転室から離れる場面です。「自分が助かるため」に人を遠ざける行動から、「相手を守るため」に自分が去る行動へ、父の選択が変わっています。
本編のDVD・ブルーレイの発売元はツインです。配信サービスで探す場合も、副題まで付いた本作を選ぶと、続編との取り違えを防げます。
FAQ|結末についてよくある疑問
ソグが実は生きている可能性はある?
本編では、ソグの最期は娘を守るための死として描かれます。かまれた手の感染を自覚したあと、自ら機関車の後ろから飛び降り、二人が彼を連れずに釜山へ進む結末です。
ラストで兵士に撃たれたの?
二人は撃たれていません。射殺の指示は出ますが、発砲前に歌が聞こえ、兵士が救助へ向かいました。銃で狙う場面だけで終わる映画ではないんですね。
「アロハ・オエ」に感染を治す力がある?
曲を聞いた感染者が回復する出来事はありません。歌の役割は、トンネルを歩く二人が生存者だと軍に気づかせること。冒頭の学芸会とのつながりは、父娘の物語として味わうところです。
釜山へ行けば、感染そのものが解決する?
釜山は軍が守る避難先として目指されます。終わりに救われるのは二人の命で、全国の感染を終わらせる場面や治療薬の登場はありません。安全地帯に届くことと、災厄が収束することは別なんです。
まとめ
『新感染 ファイナル・エクスプレス』は、父を失う痛みと、娘が生き残る希望の両方を残します。サンファやホームレスの男性、運転士が作った脱出の機会を、ソグが最後の決断でつなぎ、スアンの声が救助へ結びつけました。
父の笑顔を思い出すと、「アロハ・オエ」はただ明るい歌としては聞けませんよね。娘が歌い続けるその先で、兵士が二人を迎えに走ってくる。失った人を取り戻せなくても、残された命は守られる――そこに、この結末の救いがあります。