ソウル・グッドマンの最後は、法廷で自ら罪を認め、86年の刑期を受けて収監される結末です。キムも生きていて、刑務所のジミーに会いに来ます。
対象は『ベター・コール・ソウル』シーズン6第13話、シリーズ最終話(原題「Saul Gone」)。逮捕後の交渉から最後の別れまで、核心のネタバレを含みます。『ブレイキング・バッド』と映画『エル・カミーノ』は世界観を共有する別作品です。
引っかかるのは、重い刑を避ける取引に成功したのに、なぜ自分から台無しにしたのか、ですよね。法廷では「そこで話をやめて!」とリモコンを握りたくなります。でも、ジミーには聞かせたい相手がいました。
ゴミ箱で逮捕されても、ソウルは検察を押し返す
ジーンという偽名で逃げていたジミーは、マリオンの通報を受けて逃走します。隠れた先は大型のゴミ箱。警察に見つかり、逃亡生活はここで終わるんです。

捕まっても、すぐに罪を受け入れるわけではありません。弁護士のビル・オークリーを補助弁護人に迎え、検察との交渉に臨みます。自分の弁護を頼みながら、ビルには有名になる機会だと売り込む。その営業力、こんなときにも休業しないんですね。
交渉の場には、亡くなったハンク・シュレイダーの妻マリーも同席します。彼女が突きつけるのは、ソウルの協力が人の命を奪う組織を支えたという責任です。ところがソウルは、ウォルター・ホワイトに脅され、命を守るために働いたのだと、自分も被害者の側に置きます。
検察がその話を信じる必要はありません。ソウルが狙うのは、裁判で罪を判断する陪審員のうち、一人でも自分の話を信じる可能性。検察に裁判の不確実さを意識させ、大幅な減刑と希望する収監先を含む取引を引き出すんです。
さらにチョコミントアイスまで要求し、ハワード・ハムリンの死に関する情報を交換条件に持ち出します。刑期の交渉中に、アイスの銘柄まで注文するとは。図々しさには、まだ余力がありました。
キムの自白を知り、取引の目的が変わる
ハワードの情報を出せば、もう一つ条件をよくできる。そう考えていたソウルは、キムがすでに事情を告白していたと知らされます。彼女は宣誓供述書を提出し、ハワードの妻シェリルにも渡していたんです。つまり、自分の説明を書面にし、その内容に責任を持つ行動を取っていました。
移送中の飛行機では、ビルからキムの状況を聞きます。シェリルが損害賠償を求める民事訴訟に向けて動いており、キムには財産を失う危険がある。ソウルが口先で好条件を得た一方で、キムは自分に不利な事実を明かしたわけです。
ソウルは、ハワードについてキムを不利にする追加情報があると言い出します。その知らせは検察官スザンヌ・エリクセンからキムへ伝わり、彼女は法廷に来ることに。聞いている側は「まだキムを傷つけるの?」と身構えますよね。
ところが法廷で、本人が仕掛けを明かします。キムについて検察に話した追加情報は嘘で、彼女をその場へ呼ぶためだったのです。ジミーは、これからする告白をキムに聞いてほしくて、法廷へ来る理由を作りました。
キムが自分の責任と向き合ったことと、ジミーが彼女の前で語ること。この二つが、自白への転機としてつながります。ただ、ここでキムの損害賠償の問題まで片づくわけではありません。
法廷で何を認めた?ウォルター、ハワード、チャック
ソウルはいつもの華やかなスーツで法廷に入り、キムの姿を確かめます。弁舌で切り抜ける準備は整っているように見える。それでも話し始めると、自分を守っていた説明を、自分の口で崩していくんです。

ウォルターの協力者になったのは、金を稼ぐためでもあった
最初は怖かった。しかし、すぐに金儲けの機会だと考えた。ジミーはそう認め、ウォルターの麻薬事業に進んで協力し、嘘をつき、共謀して大金を稼いだと話します。
交渉で使った「脅された被害者」という説明とは、根本から食い違う告白です。ウォルターの事業を大きくするうえで、自分が欠かせない存在だったという責任まで認める。自分の腕前を語る言葉が、そのまま自分を追い込んでしまうんですね。
判事は、取引と矛盾する発言だと警告します。それでもジミーは宣誓して話を続けました。有利な取引を保てなくなる危険を告げられても、自白を止めません。勢いでうっかり口を滑らせた、という場面ではないんです。
ハワードの件では、キムを陥れる嘘を撤回する
ジミーは、キムを不利にする話を作ったことを明かし、ハワードに起きたことにも触れます。ただ、ハワードの話になると、言葉が詰まる。検察との交渉で交換材料にした死を、今度はうまく語れないんですね。
そして、キムには人生をやり直す勇気があったが、自分は逃げたと認めます。キムを呼ぶための嘘は撤回しても、彼女がすでに告白した過去そのものを消すことはできません。二人が傷つけた人への責任は、ここにも残っています。
兄チャックを傷つけた後悔を、ようやく口にする
告白はウォルターの犯罪への協力だけで終わりません。ジミーは兄チャックを優れた弁護士だったと語り、自分にはもっと努力する余地があったのに、兄を傷つける機会を選んだと認めます。
チャックの弁護士賠償保険を打ち切らせ、生きがいだった法律の仕事を兄から奪ったこと。その後、チャックが自殺したこと。ジミーは、この後悔を一生背負うと話すんです。ここは「兄の死が追加の殺人罪として裁かれた」と受け取る場面ではありません。法廷で、自分が避けてきた痛みまで口にしています。
最後に、判事へ本名のジェームズ・マッギルを名乗ります。愛称はジミー。ソウルという名前で切り抜けてきた人が、ジミーとして責任を引き受ける瞬間なんです!私は、ここで名乗り直すからこそ、兄の告白が重く響くのだと思います。
86年の刑期。刑務所では、またソウルと呼ばれる
自白のあと、ジミーが受けた刑期は86年です。交渉で希望した収監先には行けず、避けたかった厳重警備の刑務所へ送られます。軽い刑と好条件を得るという、それまでの目的を自分から手放した結果でした。
護送バスでは、他の受刑者にソウル・グッドマンだと気づかれます。自分の名前を訂正しても、周囲にはおなじみの広告の弁護士。やがて「ベター・コール・ソウル」の掛け声が広がるんです。
この場面は、名乗り直しただけで過去の評判まで消えるわけではない、と感じさせます。本人が引き受けた責任と、他人が知っているソウル像は別々に残る。あの掛け声を聞くと、すっきりした更生物語だけでは終わらせないんだな、と思います。
刑務所では厨房でパンを作る姿も描かれます。逃亡中に働いていたシナボンとつながる手仕事ですね。自由を失った生活の中でも働いているところへ、弁護士の面会だという知らせが届きます。
キムとの再会は、一本のタバコと指の銃で終わる
会いに来たキムは、長い説教をしない
面会室で待っていたのは、ビルではなくキムでした。彼女は以前の弁護士証を使って訪れたと説明し、ジミーと一本のタバコを分け合います。壁に並んでもたれる二人の姿は、シリーズ第1話の喫煙場面を思い出させるんです。
キムは、せっかく短い刑期を引き出したのに、今は86年になったことに触れます。ジミーは模範囚ならどうなるか分からない、と冗談を返す。先行きは重いのに、彼女を少し笑わせようとするところに、二人の親しさが残っています。
現在の場面はモノクロですが、ライターの炎やタバコの火には色があるんです。灰色の画面に残る小さな色が、二人の再会を際立たせています。言葉で全部説明されるより、こういう短いやり取りのほうがつらいんですよね。
最後の画面には、二人を隔てるフェンスが残る
キムが刑務所を出るとき、ジミーは運動場から指で銃を作る仕草を向けます。以前の二人を思わせる軽い挨拶。それでも、彼は塀の中にいて、彼女は外へ歩いていくんです。
タバコの再会だけで幕を閉じず、二人の距離まで映す。この最後の画面があるから、私は「元の二人に戻った」とは感じません。互いを分かる親しさはあるけれど、一緒に暮らす未来までは描かれていない。甘くしすぎない結末ですね。
キムの免責やジミーの釈放まで決まった結末ではない
ジミーの自白を、キムの民事責任がすべて消えた決着として扱うことはできません。キムがシェリルに渡した供述書と、そこから損害賠償を求められる問題は残ります。最終話には、訴訟の判決や和解まで片づいた場面はありません。
キムはフロリダの法律相談所でボランティアを始めています。ただし、法律に関わる仕事へ戻り始めたことと、弁護士として正式に復帰したことは別。面会に弁護士証を使えたからといって、資格の復帰手続きまで済んだ結末にはなっていません。
ジミーの模範囚についての冗談も、釈放日の予告ではありません。86年という刑期は示されますが、実際に何年服役したか、キムがその後何度訪ねたかは描かれないんです。面会を最後に生涯会わなかった、と決めつけるのも違います。
ここまでが画面に描かれた着地です。ここからは私の受け取り方ですが、このラストの救いは、ジミーがキムの前で嘘を続けるのをやめたことにあると思います。人を傷つけた過去や、離れて暮らす現実も残る。その重さを抱えたまま、二人が同じ壁にもたれられた場面でした。
最終話を見返すなら、回想の後悔と法廷の目線を追う
シーズン6第13話をもう一度再生するなら、ジミーが回想で答えをそらすところと、法廷でキムを見るところを続けて追ってみてください。字幕の情報量が多い場面ですが、少し戻して表情を見ると、語り始めた人のためらいも感じられます。
- マイクとの砂漠の回想:タイムマシンの話に、マイクは最初に賄賂を受け取った過去を挙げます。ジミーは株で大金を得る話をし、変えたい過去を正面から答えません。
- ウォルターとの回想:時間旅行の問いが、後悔の話だと指摘されます。それでもジミーが持ち出すのは、転倒詐欺で本当に膝を傷めた話です。
- チャックとの回想:食料品を届けたジミーに、兄は進んでいる道を変えてもいいと語ります。二人の会話は深まらず、チャックのそばには小説『タイム・マシン』が残ります。
後悔を聞かれて、膝の話。そこだけなら「今は人生の話ですよ」と言いたくなりますよね。けれど、法廷で兄の死を語る姿と重ねると、避けていたことの大きさが伝わるんです。私は、三つの回想があるから自白が突然の改心には見えないのだと思います。
最終シーズンの公式予告
シーズン6全体の公式予告です(英語)。
FAQ|最終回の気になる点
ソウルは最後に死ぬのですか?
生存しています。最終話の終盤では受刑者として日々を送り、訪れた元妻と会話し、彼女を見送る姿まで描かれました。
刑期は7年ですか、86年ですか?
最終的な判決は懲役86年です。「7年」は、面会でキムが振り返る減刑取引の数字。交渉で得た好条件を、自白のあとも維持できたわけではありません。
なぜ、得意の話術で最後まで逃げなかったのでしょう?
キムが不利益を承知で告白したことを知り、ジミーも彼女の前で自分の行いを認めます。犯罪への協力だけでなく、兄との関係まで語ったところに、自分への言い訳をやめる選択が見えるんです。
キムと復縁したのですか?
夫婦へ戻る場面はありません。面会には親密さがありますが、別れ際の構図では、収監されたジミーと外を歩くキムの隔たりもはっきり描かれています。
最後のタバコに色があるのはなぜですか?
炎と火の色が、モノクロの再会で目を引きます。第1話と似た並び方も重なるため、私は二人の間に残った感情を映す演出だと受け取りました。
まとめ
最終回のジミーは、言い逃れを続けられる場面で、自分の加担と後悔を話す道を選びました。代償は自由と、有利な収監条件です。それでもキムには、長く隠してきた自分を見せられたんですね。
二人の結末には、会えた喜びも、離れて生きる痛みもあります。私は、最後までフェンスが残るところが好きです。全部元どおりにはならないから、面会室で交わしたわずかな言葉が忘れられません。