『二十五、二十一』の最終回までのネタバレです。『二十五、二十一』は2022年にtvNで放送された全16話の韓国ドラマです。
結末から言うと、ナ・ヒドとペク・イジンは別れ、恋人には戻りません。別れたあとも、日記に残された言葉が大人のヒドへ届きます。
「あれほど支え合ったのに、どうして?」と引っかかりますよね。携帯の契約を解約する再会、日記を読んで迎える最後の別れ、そして大人になったヒドへ届く言葉。この流れをたどると、2人が手放したものと、残したものが見えてきます。
ヒドとイジンは、何を支えに恋人になったのか
1998年、フェンシング部と家族の暮らしを失う
物語の始まりは1998年。韓国の経済危機の影響で、ヒドの学校のフェンシング部がなくなります。競技を続けたいヒドは、憧れのコ・ユリムがいるテヤン高校への転校を目指しました。
同じころ、イジンの家は父の会社の倒産によってばらばらになっています。裕福だった生活から一転し、新聞配達や貸本店の仕事をしながら暮らす日々です。ヒドは、もう幸せになれないと思い詰める彼を、一緒に笑える時間へ連れ出しました。
ヒドは学校でイジンと遊び、一緒に笑います。イジンも競技を続けるヒドに応援の言葉をかけ、彼女を励ますのです。だから後半で、応援そのものが届かなくなる変化がつらいんですよね。
金メダルの騒動を越え、ユリムとも友達になる
ヒドは国家代表に選ばれ、アジア大会の決勝でユリムを破ります。しかし最後の判定をめぐって騒動が起き、勝ったはずのヒドが非難を浴びることになりました。記者になったイジンは審判への取材を通じて、ヒドの勝利を支えます。
ユリムとの関係が変わるのは、ヒドが悩みを打ち明けてきた匿名のチャット相手が、実はユリムだったとわかってからです。現実ではぶつかっていた2人が、相手の孤独をすでに受け止めていた。顔を知ったあと、ユリムはヒドに謝り、ライバルであり友達でもある関係を築いていきます。
ヒド、イジン、ユリム、ムン・ジウン、チ・スンワンの5人で海へ行く時間も、この青春の大切な場面でした。恋愛も競技も友達も、同じ生活の中にある。あのにぎやかさを知っているから、最終回の待ち続けるヒドの姿が、余計に寂しく感じられます。
恋が始まったあと、記者の仕事が重くなる
2000年を迎えるころ、ヒドはイジンにキスをし、2人は恋人になります。一方で、イジンには記者と取材相手との距離という問題もありました。
やがてユリムの父が交通事故を起こし、もともと苦しかった家計に賠償の負担が重なります。家族を助けるため、ユリムは国籍を変えてロシアの代表になる道を選びました。イジンはこのニュースを報じ、ユリムは世間から裏切り者として責められます。
友達を傷つける報道を自分がした。その事実にイジンは苦しみ、ヒドは彼のそばにいました。第15話ではイジンがスポーツ担当から社会部へ移り、ヒドと付き合いながら事故や災害の取材に向き合うようになります。
ヒドも国際大会でユリムと再び対戦し、勝利のあとに抱き合いました。2人の友情は国籍や勝敗を越えて続いていきます。ただ、ヒドとイジンが会う予定は仕事で崩れることが増え、恋人として過ごせる時間は少なくなっていました。
なぜ別れる?ニューヨークで「応援」が届かなくなる

9・11の取材が、2人の会話を変えた
第15話で大きく状況を変えるのが、2001年のアメリカ同時多発テロです。ヒドとの旅行を予定していたイジンは、ニューヨークへ取材に向かいます。
現地でイジンが接するのは、行方のわからない家族や同僚を捜す人たちと、次々に突きつけられる死の現実でした。彼自身も眠れず、悪夢に苦しむようになります。ヒドは電話で励まそうとしますが、イジンの苦しさは続きます。
ヒドは苦しさも一緒に背負いたい。イジンは彼女まで傷つけたくない。その違いが、遠距離の2人から日々の会話を奪っていきます。会えないうえに、何に苦しんでいるのかも共有できなくなったのです。
特派員への応募で、待つ生活の終わりが見えなくなる
最終回のイジンは、取材を受けた人からの感謝や、現場で働き続ける消防士との会話を経て、ニューヨークの特派員に応募します。報道を続けたいという、自分で選んだ進路でした。
ヒドへ赴任の話をしても、次に帰国できる時期には彼女がヨーロッパの大会へ行く予定です。ようやく会えそうだと思ったら、またすれ違う。謝るイジンに、ヒドは自分に対して罪悪感を持たないでほしいと告げます。
2人のすれ違いは、会えない時間が続くなかで深まっていきました。苦しみを分け合えず、待つ側と謝る側の生活が続いたことが、2人の関係を変えました。
ヒドはイジンのつらい体験を聞いて、一緒に苦しさを抱えたかったのだと思います。弱っている日にも自分を頼ってほしかった。守るつもりで黙るイジンの優しさが、ヒドには自分を遠ざける行動として届いてしまったのでしょう。
第16話の破局は、トンネルの口論と最後の別れに分かれる

同じスーツケースが、久しぶりの再会を作る
2人が同じ日に韓国へ戻ったとき、おそろいのスーツケースを取り違えます。ヒドはイジンの荷物を空港に預けましたが、イジンは彼女の荷物を家まで届けました。
そこでヒドは、自分たちの愛がもう力になっておらず、罪悪感や責める気持ちで互いを苦しくしていると話します。イジンが別れたいのかと尋ねると、ヒドはすでに別れつつあるという意味の返事をしました。会えなかった間に、ヒドの別れる決断が育っていたのですね。
携帯の解約後、ヒドは「もう待ちたくない」と話す
友達との食事中、ヒドの携帯がスープに落ちてしまいます。契約を変えようにも、イジンと組んだカップル向けの料金プランは2人で解約する必要がありました。
そのため、別れた直後なのに携帯ショップで再会します。恋愛の終わりにまで、契約の手続きがついてくるとは。生活のこういう妙な現実味に、ちょっと笑って、すぐ胸が痛くなります。
帰り道のトンネルで、イジンはニューヨークで経験したつらさを話しました。日々、人の死に触れる中で、恋人を恋しく思うことさえぜいたくに感じていた。ヒドは、その痛みを一緒に抱えたかったのに、彼がそうさせてくれなかったと訴えます。
ヒドが持ち出すのは、ニュースキャスターである母との関係です。母を待ち、期待し、失望してきた自分の生活を、恋人との間でも繰り返している。これから先まで同じように待つ人生にはしたくない、という思いでした。
口論は、相手への理解を求めながら、相手を傷つける言葉を投げる形になります。イジンも別れを受け入れますが、2人ともその言い方を後悔しました。ヒドは練習中に倒れて病院へ運ばれ、母に、別れることは必要でもあんな終わり方をするべきではなかったと話します。
日記を読んだイジンと、出発前に抱き合って別れる
ヒドは日記に、トンネルでは言えなかった本心や後悔を書きました。その日記をバスで紛失し、中にイジンの身分証が入っていたため、日記は彼のもとへ届きます。
イジンは初めて、ヒドが待つ間に抱えていた寂しさをまとまった形で知りました。ヒドも彼の出発を知り、顔を見て別れたいと走ります。2人はバス停で会い、相手の体調やこれからの暮らしを気遣う言葉を交わすのです。
イジンがヒドの靴ひもを結び、2人は泣きながら抱き合いました。愛情が残っているのに、離れることを選ぶ場面です。ここでの抱擁は、傷つけ合った言葉のまま終わらせないための別れでした。
抱き合ったならもう一度やり直して! と言いたくなりますが、2人は互いを気遣いながら別れたんですよね。私は、この最後の優しさがあるぶん、かえってつらく感じます。
2009年、その後のヒドとイジン、友達3人はどうなる?

イジンはキャスターになり、ヒドは競技生活を終える
物語は7年後の2009年へ進みます。ヒドの母シン・ジェギョンがキャスターを退くことになり、後任にイジンを推薦しました。イジンは韓国へ戻ってその役職に就き、離れていた家族も再び一緒に暮らせるようになります。
家族の生活を取り戻すという、若いころからの願いが実を結ぶのです。一方のヒドは、勝っても以前ほど喜びを感じなくなり、引退を考えていました。コーチは彼女の選択を頭ごなしに止めず、自分の気持ちを確かめるよう促します。
ヒドはサンフランシスコで金メダルを獲得したあと、引退を表明しました。引退会見では、最も誇らしかった対戦相手としてユリムを挙げます。花束を持って来たユリムもヒドへの思いを返し、2人の競技人生は、最後まで互いへの敬意で結ばれていました。
ユリムとジウンは婚約、スンワンは番組制作の仕事へ
ユリムも競技を退き、フェンシングを教える仕事をしています。ジウンはファッションのサイトを育て、事業として成功しました。離れて暮らす時期を越えた2人には、結婚の話が進んでいます。
ジウンはフェンシングの防具を着てユリムの前に現れ、プロポーズしました。ユリムはそれを受け入れます。本編で描かれるユリムとジウンの着地は、プロポーズが実った婚約です。結婚の約束を交わす場面でした。
高校時代、教師の暴力に抗議して学校を辞めたスンワンは、バラエティー番組の制作現場で働いています。父の葬儀には仲間たちが集まり、仕事を終えたイジンも駆けつけました。大人になってからの集合場所が葬儀というのは、青春の続きを生きている感じがして、しみますね。
スンワンは、成長したイジンの弟イヒョンとも再会し、連絡先を交わします。こちらは新しい関係を予感させる場面でした。友達3人にも、働きながら暮らす日々があるのです。
ヒドの夫は誰?イジンとの2009年のインタビューが答えること
娘ミンチェの父親の具体的な身元は未提示です。
大切なのは、2009年の中継インタビューで、イジンがヒドの結婚を祝っていること。2人はキャスターと選手として画面越しに向き合い、かつての応援への感謝を交わします。別れたあともお互いを大事に思い、かつての恋人として感謝を伝え合いました。
娘の名字が「キム」であることからも、夫の正体が気になります。ただ、名字だけで特定の人物まで当てることはできません。「夫の名前を聞き逃したのかな?」と探したくなるところですが、その答えになる人物紹介はないのです。
私の解釈では、この結末の焦点は、ヒドが誰と結婚したかより、イジンとの時間をどう受け止め直すかにあると思います。もちろん、夫も気になる! 気になるものは気になります。
日記が戻るラストと、イジンが答える「初恋」

日記はなぜ、すぐヒドの手元に戻らなかった?
現代の物語では、ヒドの娘キム・ミンチェがバレエを辞めようとし、祖母の家で母の日記を読み始めます。そこにあった青春を通して、私たちは若いヒドたちの姿を追ってきました。
ただ、別れのころの日記だけは、ヒド自身の手元にありませんでした。バスで失くした日記を受け取ったイジンは、読んだあとに自分の言葉を書き足し、貸本店にヒドへ渡してほしいと託します。店主が渡すのを忘れたため、その言葉は彼女に届かず、年月が過ぎてしまったのです。
貸本店が閉店する際、店主が見つけた日記はミンチェへ渡り、ようやくヒドのもとへ帰ってきます。店主さんの渡し忘れでした。そこだけは「店主さん、頼みますよ……」と肩を落としたくなりました。
ミンチェは母の結末を読まず、自分のバレエに戻る
ミンチェは戻ってきた日記の続きを読まず、母に渡します。そしてバレエを続け、自分の物語を生きていこうと決めました。
母の青春を追いかけていた娘が、最後には自分の時間を選ぶのです。ヒドが競技を続けるために動いた始まりと、ミンチェがもう一度踊ろうとする終わりは、響き合っているように感じます。恋人同士の結末だけを追うと、この娘の一歩が惜しいほど目立たなくなってしまうんですよね。
トンネルで重なるのは、昔言えなかった別れの言葉
大人になったヒドが日記を読むと、そこにはイジンからの謝罪がありました。若い彼女が当時受け取れなかった気持ちに、長い時間を経て触れます。
そのあと、トンネルの場面に若い2人の姿が重なり、あの口論では言えなかった言葉を交わします。互いの愛が自分を成長させたことや、相手と過ごした時間への感謝を、ようやくまっすぐ差し出せる別れです。
この場面は、現代のヒドとイジンが再会して交際を始める展開ではありません。日記を受け取ったヒドの中で、後悔が残っていた別れが描き直される場面として読めます。若い自分が言えなかったことを、大人の自分が受け止めているのですね。
エピローグでも、イジンの初恋はナ・ヒド
最後のエピローグでは、イジンがパスワードを再設定しようとします。本人確認の質問で初恋の相手を尋ねられ、答えた名前は「ナ・ヒド」でした。
別れたあとも、イジンにとってヒドは初恋の相手。私は、イジンの答えを聞いて、2人で笑い合っていたころを思い出しました。パスワードを忘れても、その名前は出てくるんですよね。こんなところで、こちらの涙腺をもう一度働かせなくても……。
別れのあと、ヒドとイジンが歩んだ年月
過去の恋が中心にあっても、現在のヒドは娘を育てる大人であり、イジンにも記者として歩いた年月があります。
2009年の中継インタビューではイジンがヒドの結婚を祝い、日記を読んだあとのトンネルでは若い2人の別れが重なります。エピローグでイジンが答える初恋の相手はヒドでした。
また、取材で消耗したイジンは眠れなくなり、ヒドの励ましにも応えられなくなりました。ヒドがわがままだった、イジンが冷たかったと片方だけに原因を押しつける読みには、私はあまり納得できません。
もう一度確かめたいのは、第15話の電話と第16話の別れ
第15話でニューヨークのイジンとヒドが電話する場面では、ヒドの励ましにイジンが応えられなくなっています。励ましたいヒドと、励ましに応えられないイジンの間で、言葉が止まる瞬間が大切です。
第16話では、携帯ショップの帰りに傷つけ合った2人が、出発前のバス停では互いの体調やこれからの暮らしを気遣います。さらに、2009年のインタビューではイジンがヒドの結婚を祝い、日記が戻ると、ヒドが謝罪を読んだあとのトンネルに若い2人の姿が重なりました。
本編はNetflixの『二十五、二十一』作品ページから探せます。
Netflix Japanの公式予告編。ヒドとイジンが出会う青春の空気を味わえる映像です。
FAQ
ヒドとイジンは最終回で結婚しますか?
2人の恋は終わり、後年のヒドには別の結婚生活があります。イジンからの祝福を受ける2009年のやり取りにも、その年月が表れていますね。
別れた原因は、イジンの海外赴任だけですか?
赴任を機に会う見通しが立ちにくくなりますが、つらさを共有できない状態も続きました。ヒドには、母を待ち続けたころと同じ生活を将来も繰り返したくない、という思いがあるのです。
ヒドの夫の名前は、最後にわかりますか?
ミンチェの父については、特定の人物へ結びつける答えは出ないままでした。
失くした日記は、誰が持っていたのですか?
バスで落としたあとにイジンへ届き、その後は貸本店に預けられていました。店の閉店時に見つかり、娘を通して持ち主へ返る流れです。
最後のトンネルは、現在の2人の再会ですか?
若いころの別れに、言えなかった感謝を重ねる場面として受け取れます。
まとめ
『二十五、二十一』は、ヒドとイジンが初恋に別れを告げる結末でした。待つ寂しさと、分け合えない痛みが積もり、ヒドとイジンは離れる道を選びます。
それでも、イジンは家族との暮らしを取り戻し、ヒドは競技人生を走り切りました。ユリムとジウンの婚約、スンワンの仕事、ミンチェのバレエへの決意も、それぞれの未来につながっています。
夫の身元という疑問は残る一方、戻ってきた日記によって、ヒドは後悔の残る初恋を感謝とともに振り返りました。私は、あの2人に結ばれてほしかった気持ちをまだ捨てられません。最後に「ナ・ヒド」と答えるイジンを見ると、やっぱり胸が詰まります。