2009年映画『エスター』(原題:Orphan)の正体と結末までのネタバレです。
エスターの正体は、9歳の少女を装った33歳の女性、リーナ・クラマー(Leena Klammer)。最後は凍った池でケイトに顔を蹴られ、首が折れて水中に沈み、命を落とします。ケイトと娘のマックスは助かりますが、夫のジョンはその前に殺されています。
この映画の嫌な怖さは、年齢の種明かしに加え、家族が互いを信じられなくなる過程にもあるんです。なぜ母親のケイトだけが疑われ、子供たちは口を閉ざし、ジョンは危険に気づくのが遅れたのか。玄関の鍵をかけても安心できないんです。怖い相手が、すでに家族として家の中にいるので。
養子に迎えたエスターは、家族の誰にどんな顔を見せた?
ワーナー公式の2009年版予告編です。家族を迎える喜びが、不信に変わっていく雰囲気が分かります。
子供を失った夫婦が、9歳と紹介された少女を迎える
ケイトとジョンは、3人目の子供ジェシカを死産で亡くしています。ケイトにはアルコール依存症から回復中という事情もあり、夫婦の関係は傷んでいました。二人は新しい家族を迎えようと、児童養護施設を訪ねます。
そこで出会うのが、9歳と紹介されたエスター。夫婦は彼女を養女に迎え、家族として一緒に暮らし始めます。
娘のマックスは耳が聞こえず、手話で会話をします。エスターをすぐに受け入れる一方、兄のダニエルは新しい妹を歓迎していません。この反応の違いを、エスターは後に利用していきます。
ジョンの前ではよい子、子供たちの前では暴力を隠さない
エスターは、傷ついた鳩をためらわずに殺し、自分をからかった同級生を遊具から突き落としてけがをさせます。マックスやダニエルは危険な姿を目にしますが、大人の前での態度とはまるで違う。
ケイトも違和感を持ち始めます。ところがジョンはエスターをかばい、妻の疑いを受け止めません。「二人きりのときだけ態度が違う」という話は、居合わせていない相手に分かってもらうのが厄介ですよね。エスターは、その厄介さを知ったうえで振る舞っています。
シスターの殺害と自作自演で、ケイトは孤立していく

アビゲイルを殺し、マックスを口封じする
施設のシスター・アビゲイルが家を訪れ、エスターの周囲では事故や悲劇が起きていると警告しました。
エスターは帰り道のアビゲイルを襲い、ハンマーで撲殺します。さらに、マックスに遺体を隠す作業を手伝わせ、凶器や血の付いた衣服をダニエルのツリーハウスへ隠しました。
マックスは仲のよい妹から、脅されて秘密を守る子に変えられてしまうんです。ダニエルも、二人がツリーハウスにいたことを目撃したため、エスターに刃物で脅されます。子供たちが黙るのは、エスターの報復が怖いからです。ここを取り違えると、ケイトが一人で騒いでいるように見えてしまいます。
本当のことを話せない子供が二人、話しても信じてもらえない母親が一人。家族会議をしたいところですが、その家族会議が成り立ちません。
花束、骨折、車の事故が「ケイトの問題」にすり替わる
エスターは、ケイトが亡くしたジェシカをしのんで育てていた花を摘み、花束にして渡します。ケイトが怒って腕をつかむと、後で自分の腕を折り、ケイトに折られたように装いました。ジョンは妻を責め、夫婦の溝はさらに深くなります。
この家では、花束すら油断できません。贈り物の形をしているからこそ、怒ったケイトのほうがひどい母親に見える。エスターは人を傷つけ、その相手が怒った反応まで利用するんですね。
学校へ送る途中には、ケイトが車を離れた隙にブレーキを解除します。マックスを乗せた車が坂を下り、事故になりかけました。マックスは無事でしたが、ケイトの注意不足に見せかけるには十分な出来事です。
過去の飲酒の問題も、ケイトへの疑いを強めます。彼女はエスターの素性を調べ続けますが、ジョンは妻の状態を問題にし、二人で子供たちを守る方向へ動けません。ジョン、そこで一度、奥さんの話を聞いて! と言いたくなる展開です。
ダニエルを狙った火事が、母親を家から遠ざける
凶器を探したダニエルが、口封じの標的になる
マックスからアビゲイルの殺害を聞いたダニエルは、ツリーハウスの証拠を探そうとします。物を見つければ両親も信じてくれるはず、と考えた行動でした。
それを察したエスターは、ダニエルが中にいる小屋に火をつけます。証拠と、それを探す本人を一緒に消そうとしたんです。逃げようとしたダニエルは転落して重傷を負い、エスターはさらに襲おうとしますが、マックスが阻止しました。
ダニエルは病院へ運ばれます。小屋の火事は、単なる嫌がらせから明確な殺害の企てへ進んだ場面。それでもジョンは、ケイトの疑いを十分に信じられずにいました。
病院でも襲われるが、ダニエルは蘇生する
エスターは病院で家族のそばを離れ、ダニエルの病室へ向かいます。そこで枕を顔に押し当て、窒息させようとしました。心臓は一度止まりますが、医師たちの処置で蘇生します。
ダニエルは病院で死亡していません。火事と窒息の二度の襲撃を生き延びています。ダニエルは病院で医師の処置を受けて蘇生しました。
息子を襲ったのもエスターだと疑うケイトは、彼女を平手打ちします。病院ではケイトのほうが取り押さえられ、鎮静剤を打たれて残されました。危険を訴えていた母親が家を離れ、エスターはジョンに接近できる状況を得ます。
エスターの正体は33歳のリーナ・クラマー

孤児院だと思っていた施設は、精神医療施設だった
ケイトが過去を調べると、孤児院だと思っていたサールネが、エストニアの精神医療施設だと分かります。やがて病院にいるケイトへ、その施設の医師から電話がかかってきました。
医師が明かすのは、エスターがリーナ・クラマーという33歳の女性で、施設から逃げた人物だという事実。作中では、身体の成長を妨げるホルモンの疾患、下垂体機能低下症があると説明されます。
9歳にしては妙に大人びている、という違和感がここで逆転します。大人が子供を演じていたんです。首と手首のリボンは、施設で拘束されていたときの傷痕を隠すためでした。かわいい服のこだわりだと思っていた部分に、別の理由があったわけですね。
リーナは子供に見える化粧や義歯も使っています。ジョンに拒まれた後、化粧を落とし、義歯を外した姿が映り、少女として見せていた外見が崩れます。
リーナがジョンに求めていたのは、恋愛と性的な関係
リーナは養父となったジョンに、恋愛や性的な関係を求めていました。そのため、妻のケイトを家から追い出そうとし、二人の信用を壊していたんです。
医師は、養家の父親を誘惑し、拒絶されて殺人に至った過去も話します。ケイトは、家族を狙うリーナの危険を感じ取っていたんです。年齢を偽って家庭に入り込み、母親を孤立させる行動に、具体的な目的があったのです。
結末は凍った池へ――ジョンの死から最後の嘘まで

拒絶されたリーナがジョンを殺す
ケイトが病院に残された夜、リーナは大人の女性として着飾り、ジョンを誘惑します。ジョンはそれを拒みました。ここでようやく、妻が訴えていた異常を自分でも目にします。
リーナの部屋では、ブラックライトによって絵の別の姿が浮かびます。穏やかに見えた絵の中に、暴力的な光景や性的な絵が隠れていました。ジョンが見ていた「よい子」の姿も、こんなふうに表面だけだったんですね。
しかし、気づいた時点では遅すぎました。リーナはジョンを刃物で何度も刺して殺します。危険を知ったケイトが急いで帰宅したとき、夫はすでに亡くなっていました。
マックスの救出と発砲で、母親も氷の下に落ちる
ケイトはジョンの遺体を見つけても、その場にとどまれません。家の中にいるマックスを探し、リーナの銃撃を受けながら娘を救おうとします。
マックスが隠れているのは、ガラス張りの温室。ケイトは屋根の上から娘を見つけ、リーナが迫るなか、屋根を突き破って落下し、彼女を下敷きにしました。その隙にマックスを連れて外へ逃げます。
ところが、リーナは再び襲いかかり、ケイトともみ合って凍った池の上へ。マックスは落ちていた銃を拾い、母親を助けようと発砲しますが、その一発で氷が割れました。ケイトとリーナは二人とも冷たい水の中へ落ちてしまいます。
マックスは、脅されて黙っていた子から、兄や母親を助けるために動く子へ変わっています。それでも、この一発は母親まで水中へ落とす結果に。助けたいのに、うまくいかない場面がつらいですね。
「ママ」に戻ろうとしても、ケイトは受け入れない
水中でも争いは続き、ケイトはようやく氷の上へはい上がろうとします。そこへリーナが足にしがみつき、ケイトを「ママ」と呼んで助けを求めました。
家族として迎えられたときと同じく、守ってもらう子供の立場に戻ろうとする呼びかけです。けれど、ケイトはもう彼女の正体を知り、夫も殺されています。
ケイトは自分は彼女の母親ではないと突き放し、顔を強く蹴ります。リーナは首が折れ、池に沈んで死亡。ケイトはマックスとともに警察に保護されます。劇場版は、リーナの死で決着します。
私は、この最後の拒絶を、母親としての優しさを利用され続けたケイトが、目の前のマックスを守り切る場面だと受け取りました。ジョンを失った痛みは残ります。それでも、リーナの「娘」の演技に付き合う時間は、ここで終わるんです。
| 人物 | 最後の状態 |
|---|---|
| エスター/リーナ | 池で首を折られ死亡 |
| ケイト | 負傷しながらマックスを救出、生存 |
| マックス | 母親と警察のもとへ、生存 |
| ダニエル | 病院で蘇生し、一命を取り留める |
| ジョン | 自宅でリーナに刺され死亡 |
| シスター・アビゲイル | エスターにハンマーで殺される |
一部のDVD・Blu-rayには別エンディングも収録
DVDやBlu-rayの一部には、削除シーンや「もうひとつのエンディング」が特典として収録されています。特典の別エンディングは、劇場版と異なる結末を描く映像です。別の結末として作られた映像です。
収録内容は商品によって異なり、商品ごとの特典一覧に載っています。同じ『エスター』でも、販売地域や商品によって収録内容が異なります。
また、『エスター ファースト・キル』は前日譚で、日本公開は2023年。2009年版より前の出来事を描いています。
エスターは家族それぞれに違う顔を見せる
エスターは、ジョン、ケイト、子供たちの前で態度を変えているんです。ジョンに守ってもらう場面、ケイトを怒らせる場面、子供たちを脅す場面を比べると、同じ人物が家族それぞれに違う役を演じているのが分かります。
リボンを外したがらない姿も、かわいらしい服の好みとは違って見えるはず。さらに、マックスが何を目撃し、どの場面で話せなくなるかを追うと、ケイトに真相が届かない理由まで見えてきます。
ジョンへの接近を知ってからは、母親を責めさせる一つひとつの行動も、家の中でケイトの居場所を奪う企てとしてつながります。正体を知った後でも、見直すと腹が立つ相手は増えそうです。エスターだけで済ませたいのに、ジョンにも一言言いたくなるんですよね。
よくある質問
エスターは幽霊や悪魔なの?
人間です。子供に見える成人女性が、年齢を偽って養子になっています。
首と手首のリボンには、どんな意味がある?
拘束で残った傷を覆うためのもの。リーナの過去を隠す役目があったんですね。
エスターはロシア出身? エストニア出身?
引き取られるときはロシア出身の少女として紹介されますが、終盤に明らかになるリーナの出身地はエストニア。最初の紹介と、本当の素性が違うんです。
後の作品があるなら、池で死んでいないのでは?
『ファースト・キル』は時間をさかのぼった作品です。ディスクの別エンディングは劇場版とは異なる結末で、2009年本編のリーナは池で亡くなります。
まとめ
『エスター』は、少女の年齢を知って驚く映画であると同時に、家族が互いを信じられなくなる怖さを描く映画です。リーナの策略は、ケイトへの疑いと子供たちの恐怖を利用して進みました。
2009年劇場版では、ジョンとアビゲイルの命は戻らず、ダニエルは救命され、ケイトとマックスが生き残ります。池の最後にケイトが拒んだのは、最後まで母親の愛情にすがろうとするリーナの演技。正体の判明と、この最後の拒絶までが『エスター』の結末なんですね。