鎌倉の洋館に集まった3人が、そろって魔法玉を持っていた。大人になってからこんな偶然に出会ったら、昔の好きなアニメの話も止まらなくなりますよね。
※結末のネタバレあり。
『魔女見習いをさがして』は、2020年公開のアニメ映画です。主人公は『おジャ魔女どれみ』を観て育ったソラ、ミレ、レイカ。懐かしい場所を巡る旅で、仕事や家族、恋の悩みが次々に顔を出します。
楽しい旅行の途中に、父親からの拒絶や失恋が待っている。その手厳しさがあるから、3人の選択にぐっとくるんです。
鎌倉のMAHO堂で出会うソラ・ミレ・レイカ

名古屋の大学4年生・長瀬ソラは、教師になる自信をなくしていました。教育実習中、作文の時間に絵を描く男の子への対応につまずいたのです。
東京の商社で働く吉月ミレは、海外生活が長い帰国子女。自分の考えをはっきり口にする性格で、上司たちとの衝突を抱えていました。力を注いできた仕事からも外され、自分の働く場所に疑問を感じています。
尾道のお好み焼き屋でアルバイトをする川谷レイカには、絵画修復士になる夢がありました。ところが恋人の久保聖也は、音楽で生きる夢を口にしながら彼女のお金を当てにする人。進学費用を貯める暮らしが、恋人の金の無心に邪魔されているんです。
そんな3人が訪れるのが、MAHO堂のモデルになったという鎌倉の洋館です。先に来ていたソラとレイカの前に、洋館の鍵を持ったミレが現れ、建物の中へ。『おジャ魔女どれみ』が好きだと分かると、たちまち話が弾みました。
夜の居酒屋では、それぞれの魔法玉まで登場します。年齢も住む場所も違うのに、昔から大切にしてきたものが同じ。初対面の自己紹介を何周もするより、好きなキャラクターの話のほうが早いこと、ありますよね!
連絡先を交換した3人は、離れて暮らしながら交流を続け、作品ゆかりの飛騨高山を旅することになります。
飛騨高山のネタバレ|レイカは父親に拒まれる
魔法玉を追った先は、父のいる病院
高山で観光や食事を楽しみ、泊まった先では互いの悩みを話す3人。レイカは、両親の離婚で離れ離れになった父に会いたいと打ち明けます。母はすでに亡くなっており、父への思いを抱え続けていました。
神社でミレが提案したのは、魔法玉に願いを込め、呪文を唱えてみることです。レイカが試すと、その後に人とぶつかって玉を落としてしまい、3人は転がる玉を追いかけます。
たどり着いたのは病院。そこでレイカは、入院している父と、新しい家族を見つけました。自分の名を告げた娘に、父は人違いだと答えます。
父に会いたいという願いの先で、レイカが受けたのは他人としての扱いでした。新しい妻と子を前にした父の返答は、再会を待っていた彼女にはあまりに冷たいものです。
ミレの率直さが、今度は友達を傷つける
病室を飛び出したレイカは、魔法を信じようと言ったミレへ怒りをぶつけます。ミレも、なぜ父にもっと強く自分のことを訴えなかったのかと責めてしまいました。傷ついた直後の相手に、その正論は厳しいですよね。
レイカは1人で尾道へ帰ってしまいます。ソラはミレに、思ったことを何でも言えばよいのかと問いかけました。職場でのミレの苦しさと、友達に向けた言葉の強さが、ここで重なるんです。
尾道で仲直り|ミレが謝り、レイカは聖也と別れる

ソラの家に泊まったミレは、どれみたちならどう仲直りするのかと考えます。そこでソラが用意したのが、『おジャ魔女どれみ』の映像。どれみとはづきのけんかと仲直りを観て、ミレは直接謝りに行こうと決めました。
大人のけんかの相談に、昔のアニメと夜行バスがそろう。なかなか頼もしい組み合わせです。
ミレは尾道へ向かい、レイカが働くお好み焼き屋を探して、住まいにたどり着きます。部屋に迎えられたミレは謝罪し、2人は仲直りしました。言い過ぎたミレが自分から会いに行ったことで、途切れた友情がつながります。
レイカの部屋には、父が描いた絵がありました。その絵を修復したいという思いも、夢の原点。父とのつながりは、彼女が学びたい仕事の中にも残っています。
そこへ聖也が現れ、またレイカにお金を求めました。ミレは彼に怒り、背負い投げまで決めます。言葉も行動も強い人ですが、このときはレイカを守るために動いたのです。
レイカは聖也との関係を終え、東京でミレと暮らすことを選びます。住む場所を変え、夢のために働く生活へ。父の返事を待ち続けていた彼女が、自分の都合で大きな決断をした場面でした。
京都・奈良での恋|ソラの告白に大宮が出した答え
次の旅で3人が知り合うのは、大学生の大宮竜一です。電車で見えたおんぷのキーホルダーから共通の話題が生まれ、大宮が京都・奈良の案内を買って出ます。
京都や奈良の名所を一緒に巡るうちに、ソラは大宮に惹かれていきました。ミレとレイカは彼のSNSを調べ、過去の炎上を心配します。それでもソラは、自分で接した相手への気持ちを大切にしようとしました。
旅の終わりが近づき、2人に後押しされたソラは、魔法玉を握って勇気を出します。そして嵐山で、大宮に交際を申し込むのです。
ソラの告白を、大宮は断ります。彼は過去のSNSでの炎上に触れ、人と長く付き合うと相手を傷つけてしまうという自分の悩みを話しました。
振られたソラは、大宮にも一緒にいたいと思う人が見つかると励ましの言葉をかけます。相手の事情を聞いたうえで、そんな言葉まで出てくるのがソラなんですよね。見守る側としては、少しくらい自分のために怒ってもいいのにと思うほどです。
その後はミレとレイカが、失恋したソラのそばにいます。ソラは、自分で決めて行動できたことと、うまくいかなかった悔しさを話しました。両親が教師だから自分も教師になると思ってきた彼女にとって、自分の気持ちで告白した経験には大きな意味があったのです。
公園で聞こえた声と、3人が考えた「魔法」
居酒屋からの帰り、3人は公園の芝生に寝転び、空を見上げます。魔法玉を手に、どれみにお礼を言いたいと願うと、聞き覚えのある声がしました。
声の主は、そばを通りかかった女の子。芝生に入った3人を注意する声が、どれみを思わせたのです。
そこでソラは、魔法に頼らず人のために行動してきたどれみを思い出します。誰かに寄り添ったり、勇気を出したりする力を、どれみは初めから持っていたのかもしれない。3人の「魔法」の話は、自分たちにも備わっている力へと向かいます。
結末で選んだ3つの道と、カフェMAHO堂の計画

ソラは男の子の絵を受け止め、自分の教育を見つける
ソラの進路を動かすのは、実習で出会った男の子との再会です。発達障害のある子どもたちが通う教室で、彼が描いた絵に向き合いました。
ソラは、彼の絵をもっと見たいと伝えます。男の子の興味から話が広がり、互いにやり取りができるようになるんです。
この交流を通じて、ソラは子どもに寄り添う教育の道を見つけました。周囲に合わせていた彼女に、どんなふうに子どもと関わりたいかという、自分の希望が生まれます。
ミレは商社を辞め、フェアトレードの雑貨を売るカフェへ
ミレは、自分が取引先との関係を築いてきたフェアトレード事業から外された会社に、辞表を出します。積み上げてきた経験を持って、働く場を変える決断でした。
次に考えたのは、フェアトレードの雑貨を扱うカフェです。会社員時代に大切にしていた仕事を、自分の店の計画へつなげていきます。長く取り組んだ仕事なら、会社を辞めるときにも、その仕事への思いは残りますよね。
また、彼女を慕う後輩の矢部隼人との交流も続きます。ミレの恋愛への鈍さは相変わらずで、彼の好意はレイカのほうが先に気づくほどです。
レイカは上京後も働き、絵画修復を学ぶ準備を続ける
東京に移ったレイカは、絵画修復を学べる海外の学校を探します。矢部に紹介されたガールズバーで働き、学費を貯める生活を始めました。
彼女の着地は、学ぶための場所とお金を自分で用意していく段階です。父との再会で傷ついた経験を抱えながらも、絵と関わって生きたい気持ちは持ち続けています。
最初の洋館が、3人のこれからの居場所になる
ミレが店の場所に選ぶのは、3人が出会った鎌倉の洋館です。店名はカフェMAHO堂。憧れの建物を訪ねた偶然が、今度は自分たちの店を作る計画へつながりました。
その建物で3人は、魔女見習いの服を着た幼い自分たちの姿を目にします。そこにいるのが、どれみ、はづき、あいこ、おんぷ、ももこ、ぽっぷ。
どれみは幼い彼女たちに、大きくなったら何になりたいかと尋ねます。大人の3人はその光景を見守り、最後にはどれみたちと子どもの3人がほうきで空を飛ぶ姿へ。物語の始まりにあった夢への問いが、再び届く終幕でした。
最後のどれみたちは何を意味する?演出の考察
ソラたちにとって『おジャ魔女どれみ』は、自分たちが観てきたアニメです。大人の生活を送る3人と、幼いころの姿が同じ洋館に重なるラストは、思い出と現在を一緒に見せる演出として受け取れます。
私はあの光景を、子どもの自分が好きだったものを、大人になった自分も大切にしてよいという場面だと感じました。
父がレイカを拒んだ理由や、大宮が人との関係を恐れる気持ちには、それぞれの重さがあります。友達ができたからといって、その痛みまで簡単に消えると考えると、私はかえって寂しくなります。
だからこそ印象に残るのは、ミレが謝りに出かけた足や、ソラが相手にかけた言葉です。幼いころに憧れた人のやり方を、今の自分の行動にしている。そんなふうに考えると、映画の題名にある「魔女見習い」が身近に感じられませんか。
3人の声と旅の雰囲気をFinal予告で確かめる
東映映画チャンネルのFinal予告(60秒)です。
3人の掛け合いや、旅先で表情が変わる様子は、声と動きがあるとまた楽しいんです。呪文を唱える声を耳にすると、口が先に覚えている感じもありますね。
予告やキャラクター映像は、映画公式サイトの映像ページにも並んでいます。
FAQ
主人公3人と大宮の声優は誰ですか?
ソラ役は森川葵さん、ミレ役は松井玲奈さん、レイカ役は百田夏菜子さん。大宮役を三浦翔平さんが演じます。
3人ともテレビ放送で『どれみ』を観ていたのですか?
作品に出会った方法も違います。ソラは『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』の放送をリアルタイムで視聴。ミレは海外で日本から届くDVDを観て、レイカは再放送や配信で親しんでいました。
まとめ
憧れた未来と、今の自分が少し違っている。そんな気持ちを抱えたときに、そばで悩みを聞き、失敗したら謝ってくれる友達がいることが、この映画のうれしさだと思います。
懐かしい呪文を大人が唱える姿も、ここまでの旅を経ると素直に応援したくなるんです。魔法玉を握っていたころの気持ちを連れて、明日の暮らしへ戻っていく。あの洋館には、そんな温かさが残りました。