鳴るおもちゃに、階段の釘。『クワイエット・プレイス』は、身近な小物まで怖くする映画です。観ている間のお菓子の袋も、ガサッと鳴らすのをためらいそうですよね。
結末のネタバレあり。『クワイエット・プレイス』は、ジョン・クラシンスキー監督の2018年の映画です。
音を立てると怪物が襲ってくる世界で、アボット家は子どもたちを育てています。その家に迫るのが、赤ちゃんの誕生。泣くのが当たり前の命を、どうやって守るのでしょうか。
音に追われるアボット家は、手話と砂の道で暮らす
人間を襲う怪物は目が見えず、鋭い聴覚で獲物を探します。音のした場所へ素早く向かい、硬い装甲で身を守る恐ろしい相手です。
父リー、母エヴリン、長女リーガン、長男マーカス、末っ子ボーの家族は、手話で会話し、砂を敷いた道を裸足で歩いています。足音を抑えるための工夫まで、毎日の暮らしに組み込まれていました。
リーガンには聴覚障害があり、家族にとって手話は彼女と話すための大切な言葉です。それが、声を出すと危険な世界でも家族をつないでいます。
大きな声で子どもを呼ぶことさえ命がけ。家の外で「ごはんですよー」と叫べる日常が、急にぜいたくに思えてきます。
音を立てずに暮らす家族を映した、Paramount Picturesの公式予告です。
末っ子ボーの死が、リーガンの心に残り続ける

冒頭、家族は物資を探しに町へ出ます。そこでボーが気に入ったのは、スペースシャトルのおもちゃでした。
音が出るため、父はおもちゃを置いていくようボーに言います。それでもリーガンは、弟を喜ばせようとおもちゃを渡してしまうんです。
帰り道でボーが動かすと、電子音が響きます。リーは駆け寄りますが、怪物のほうが早くボーに到達しました。ボーはこの襲撃で命を落とします。
弟におもちゃを返したことが、リーガンには重い後悔として残ります。自分を責め、父も自分のせいだと思っているのだと感じるようになりました。
一年あまりが過ぎ、エヴリンは新しい子を身ごもっています。家族が暮らしを続けるなかでも、リーガンとリーの間にはぎこちなさが残ったままです。
父娘のすれ違いと、滝のそばで交わした会話
リーは娘のために機器の改造を続けていた
リーはリーガンの聴覚を補助する機器を直し、改良を重ねています。うまく働くものを作ろうとしても、機器からは耳障りな高い音が出てしまう状態でした。
リーガンは失敗が続くことにいらだち、父の新しい機器にも反発します。リーがマーカスを連れて魚を取りに出かけると、自分も行きたかった彼女は、ひとりでボーを悼む場所へ向かうんです。
父は娘の役に立とうとしているのに、娘には拒まれているように感じられる。会話の手段を持つ家族にも、気持ちのすれ違いは起きるのですね。
滝のそばで、マーカスが父に尋ねたこと
リーとマーカスは、滝の音に声がかき消される場所へ行きます。そこでは大声を出しても怪物に居場所を知られず、ふたりは声で話せるんです。
マーカスは、リーガンがボーの死で自分を責めていることを父に話します。父が姉への愛情を認めると、本人にも伝えるよう促しました。
大人は「分かっているだろう」で済ませがちです。そこを息子に言われる場面が、妙に身にしみますよね。
帰り道、ふたりは森で叫び声を上げる老人に遭遇し、怪物が彼を殺すのを目の当たりにします。リーはマーカスを抱えて身を隠しました。
出産が始まり、エヴリンひとりの家に怪物が入る

階段の釘と、危険を知らせる赤い灯り
家族が外にいる間に、エヴリンの出産が始まります。地下へ向かう途中で階段の釘を踏み、衝撃で立てた物音が怪物を家へ引き寄せました。
足の痛みと陣痛をこらえながら、エヴリンは外の灯りを赤に切り替えます。赤い灯りは、離れた家族に危険を知らせる合図です。
さらにタイマーを鳴らして怪物の注意をそらし、浴室へ移動します。苦しいときに叫ぶことさえ危険なのが、この場面のつらさなんです。
怖がっていたマーカスの花火が母を助ける
帰ってきたリーとマーカスは、赤い灯りに気づきます。リーはマーカスに花火を上げさせ、自分は家へ急ぎました。
花火の大きな音が怪物を引きつけ、その間にエヴリンは浴槽で赤ちゃんを産みます。外に出ることを怖がっていたマーカスが、母と新しい命を助けたのです。
浴室へ駆けつけたリーは、隠れていたエヴリンと赤ちゃんを見つけました。
ここでやっと息を吐きたくなります! ただ、家族はまだ家と畑に散らばったままです。
水が入り込む避難場所と、姉弟をのみ込むサイロ
赤ちゃんの泣き声を抑える準備も、浸水で脅かされる
リーはエヴリンと赤ちゃんを、納屋の床下にある防音した避難場所へ移します。赤ちゃん用に酸素マスクと箱も用意してあり、泣き声を外へ漏らさない工夫でした。
エヴリンはリーに子どもたちを守るよう頼み、リーはリーガンとマーカスを探しに出ます。その間に、避難場所には水が入り込んできました。
母子のすぐ近くまで怪物が来て、エヴリンは赤ちゃんを抱いたまま水音の陰に身を隠します。出産を終えたばかりでも、次々に逃げ場を失っていく状況です。
リーガンとマーカスは互いを引き上げて生き延びる
家へ戻る途中、リーガンの背後に怪物が近づきます。機器の高い音で怪物は退きますが、彼女はその反応に気づかず、耳障りな音を機器の不調として受け止めるんです。
花火を見て戻ってきたリーガンは、畑でマーカスと合流します。ふたりは穀物をためるサイロの上に登り、火で父に居場所を知らせようとしました。
そこでマーカスが落下し、中のトウモロコシに沈んでいきます。リーガンが助けに飛び込みますが、今度は彼女が穀物にのみ込まれてしまうんです。
マーカスは姉を引き上げ、ふたりで危機を切り抜けます。
物音を聞きつけた怪物も、サイロへ迫ります。ところがリーガンの機器が高い音を発すると、怪物は苦しんで後退しました。ふたりはそこから逃げ出します。
リーは最後に娘へ愛情を伝え、叫んで子どもを救う

姉弟と再会したリーは、迫る怪物から逃がそうとします。子どもたちはトラックへ隠れ、リーは襲撃で負傷しました。
今度はトラックが狙われ、リーガンとマーカスが追い詰められます。立ち上がったリーは、娘と目を合わせ、愛していること、ずっと愛してきたことを手話で伝えるんです。
リーガンが抱えてきた「父に責められている」という思いに、父自身の言葉が届きます。ここまで気持ちを伝え合えなかったふたりの、最後の会話です。
リーは大声を上げて怪物を自分へ引きつけ、子どもたちを救うために命を落とします。姉弟はトラックを坂の下へ動かし、母のもとへ逃れました。
父の行動と、それを受け取る娘の表情が胸に刺さります。
怪物の弱点をつかみ、リーガンとエヴリンが反撃する

耳障りだった機器の音を、マイクで増幅する
エヴリン、リーガン、マーカス、赤ちゃんの4人は、家の地下室へ集まります。怪物が追ってくるなか、リーガンは父の作業場で、娘のために機器を直していた跡を目にするのです。
機器の異音に怪物が反応する様子を見て、リーガンは音と苦痛のつながりをつかみます。機器を耳元から外してマイクへ近づけ、スピーカーで音を大きくしました。
反撃を可能にしたのは、父が改造した機器の高いフィードバック音と、その増幅です。フィードバックは、ここで生じる耳障りな高いノイズのこと。怪物の鋭い聴覚を苦しめます。
装甲の下が露出し、エヴリンの弾が命中する
苦しんだ怪物は頭部の装甲が広がり、その下の弱い部分をさらします。エヴリンはそこをショットガンで撃ち、その場の1体を倒しました。
銃声を聞きつけたほかの怪物が近づく姿が、監視画面に映ります。エヴリンとリーガンは視線を交わし、エヴリンがショットガンをポンプ操作して構えるところで映画は終わるんです。
あの最後の銃の音が、なんとも頼もしい! 目の前の危険へ立ち向かう母の表情まで、ぐっと変わります。
子どもの死や出産中の痛みが苦手だとつらい
怖さの面では、幼い子どもの死亡に加え、足に刺さる釘や、出産中に浴槽へ広がる血もつらいところ。怪物の姿以上に、痛みをこらえる場面が苦手な人にはきつい映画でしょう。
静かな場面から急に音量が跳ね上がる演出もあり、突然の大きな音が苦手な人には刺激が強めです。
本編の字幕と音で、静かな世界を味わう
本編はU-NEXTの『クワイエット・プレイス』作品ページから視聴できます。
手話での会話には字幕が付きます。さらに、リーガンの感覚に沿って周囲の音が変わり、機器を切ると完全な静寂になる場面もあるんです。
台詞が少ないぶん、視線や手の動き、小さな音まで気になってきます。洗い物をしながらだと、蛇口の音がなかなかの強敵ですね。
FAQ
映画の長さは何分ですか?
上映時間は90分です。短めの作品でも、緊張が続くと長く感じますよね。
リーガン役の俳優にも聴覚障害があるのですか?
はい。リーガンを演じるミリセント・シモンズは、聴覚障害のある俳優です。声だけに頼らない豊かな表情にも目が向きます。
父親役は監督自身ですか?
リーを演じているのもジョン・クラシンスキーです。監督と出演に加え、脚本にも参加しました。
まとめ
大人に守られていた子どもが、家族のために判断する側へ回る。その成長まで感じられるから、恐怖をくぐり抜けた母娘の表情に希望を託したくなります。