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変な絵のネタバレ|小説の結末で分かる「一番愛する人」は誰?

変な絵のネタバレ|小説の結末で分かる「一番愛する人」は誰?

妊婦が描いた未来予想図に、白衣の老婆。赤ちゃんや父親の絵と並ぶと、そこだけ少し気になりますよね。

雨穴『変な絵』は、2022年10月に双葉社から刊行された全4章の小説です。

犯人と最後の場面まで、ネタバレがあります。

最後のブログ「一番愛する人へ」の宛先は、レンの母・今野直美です。妻との幸せな暮らしをつづっていた日記が、母の罪を知った息子の言葉に変わる。その間に、子どもの絵と山の殺人事件が、ひとつの家族を通してつながっていきます。

第一章の5枚の絵には、ユキが恐れた出産が隠れている

夫婦の日記なのに、ケーキが1切れ足りない

大学生の佐々木修平は、オカルトサークルの後輩・栗原から「七篠レン 心の日記」を教えられます。書き手のレンは、妻ユキとの日常や、生まれてくる子どもを楽しみにする気持ちをブログにつづっていました。

ところが、2012年の最後の投稿には、3枚の絵の秘密に気づいたこと、相手の罪を許せないこと、それでも愛し続けることが書かれています。幸せな日記と、この告白の間に何があったのでしょうか。

栗原が引っかかったのは、暮らしの細部でした。ケーキをレンが2切れ、ユキが1切れ食べ、残りは4切れという勘定です。合計すると7切れ。ホールケーキを七等分するのは、切る係にずいぶん厳しいですね。

八等分したうちの1切れを、もう一人が食べたと考えると、数が合います。その第三者が、同居していた直美でした。

番号の大きさをそろえると、風景がひっくり返る

ユキが描いた5枚は、赤ん坊、老婆、女性、少年、男性の絵です。それぞれに番号が付き、ブログへの掲載時に画像の大きさが変わっていました。

番号を同じ大きさに合わせ、同じ位置で重ねると、3枚の線が一つの光景になります。そこに現れるのは、横たわる妊婦から、老婆が逆子の赤ん坊を引き出す姿でした。風に吹かれて立っているように見えた女性の向きも、重ねた絵の中で意味が変わります。

この3枚は、ユキが自分の出産に向けられた殺意を絵に残したものです。別の2枚を組み合わせると、成長した子どもと父親が並ぶ姿になります。母親の死への恐れと、残る二人への願いが、同じ5枚に入っていたんですね。

絵の鑑賞をしていたはずが、縮尺まで合わせることになる。美術の時間に算数が混ざってきました! ただ、仕掛けが解けたときに分かるのは、ユキが命の危険を感じていたという、重い事実でした。

第二章の灰色の絵は、優太が会いたかった母につながる

墓を塗りつぶして描かれた灰色の絵

6歳の今野優太は、父を亡くし、直美と暮らしています。直美を「ママ」と呼び、二人は母子のように日々を送っていました。

保育園で優太が描いたのは、マンションと二人の人物の絵です。自分たちの部屋にあたる場所だけが灰色に塗られ、もやがかかったように見えます。保育士の春岡美穂は、この塗りつぶしに家庭での不安を疑いました。

そのころ直美は、見知らぬ男につきまとわれ、落ち着かない日々を送っていました。

けれども、優太が先に描いたのは、実母の墓でした。灰色の部分には、墓石の「今」という字の形が残っています。マンションの線は、その上から描き加えられたものでした。

優太の実母はユキで、直美は祖母です。母の日の絵を描く優太には、生きていた母の顔に代わって、墓の記憶がありました。優太は直美に叱られた反発から墓を描き始め、途中で気持ちを変えて塗りつぶしたんです。

やがて優太が姿を消し、絵は行き先を考える手がかりになります。優太が向かったのは、ユキの眠る墓地でした。一方、帰宅した直美の前には、尾行していた男が現れます。直美は男を刃物で刺し、物語は過去の殺人事件へさかのぼっていきました。

第三章の山の絵は、直美のアリバイを支え、犯人も指す

美術教師にしては線が震えている理由

1992年、美術教師の三浦義春が山中で殺されます。遺体のそばにあったのは、山並みを描いた小さな絵でした。美術を教えていた人の絵にしては、線がひどく不安定なんです。

3年後、その事件を追うのが三浦の教え子・岩田俊介と、新聞社の先輩である熊井勇です。岩田は熊井から当時の取材内容を聞いていました。

妻の直美、友人の豊川、教え子の亀戸が調査の対象になります。岩田は聞き取りを進め、三浦が殺されたころと同じ山に登り、当日の行動をたどることにしました。

山で眠った岩田は、寝袋ごと拘束された状態で目を覚まします。自分の置かれた状況から、三浦の絵が震えていた理由に気づきました。三浦も手の動きを制限され、紙を見ることもままならない状態で、記憶を頼りに線を引いていたんです。

犯人は、食べ物を無理に口へ入れるなどして、死亡推定時刻をずらそうとしていました。激しい遺体の損傷にも、時刻の判定を難しくする狙いがあったのです。岩田も同じ手口で命を奪われますが、最後に三浦と似た山の絵を残します。

なぜ犯人は、証拠になる絵を持ち去らなかったのか

三浦の絵には、朝の山並みが描かれていました。その場の景色を写した絵だと考えると、三浦は夜明けまで生きていたことになります。朝の時間帯にアリバイがある直美には、都合のよい証拠でした。

直美は、三浦が息子を一人にさせないために、自分をかばったのだと考えます。自分を殺そうとしている相手に、息子を託そうとする。あの震えた線には、そんな痛ましい選択まで重なっていました。

岩田の絵を受け取った熊井は、別の角度から考えます。二度も山の絵が残されているなら、犯人には、その絵を残す理由があるはずです。

山の絵によって犯行が朝だと思われると得をする人物が、直美でした。直美をかばうために働いた仕掛けを、岩田は犯人を絞る手がかりへ変えたんです。熊井は直美を追い続けることになります。

最終章でつながる直美の過去と、武司・ユキの家族

三浦・直美・武司・ユキ・優太の家族関係

文鳥を守った11歳の少女が、三浦の妻になる

直美は11歳のとき、実の母を殺しています。父を亡くしてから母に虐待され、父が買ってくれた文鳥のちっぴを心の支えにしていました。その文鳥を母が殺そうとしたことが、犯行のきっかけです。

事件後、施設で暮らす直美の絵を見た心理学者・萩尾登美子は、弱いものを守りたいという優しさに希望を見いだしていました。直美は成長し、助産師の資格を取り、美術教師となる三浦と結婚します。生まれた息子が武司でした。

ところが三浦は、内気な武司に厳しい教育を施し、体罰も加えます。直美は離婚で親権を失うことを恐れ、息子を守るために夫の殺害を選びました。文鳥を守るために人を殺した経験が、今度は息子を守るという理由で繰り返されるんです。

三浦殺害を目撃していた豊川は、秘密を材料に直美を脅し、性的な関係を強いていました。事件を調べる岩田が現れると、直美は口封じと隠蔽を重ねます。岩田を殺したあと、豊川にも手をかけ、三浦と岩田の殺害を告白する偽の遺書を残して、自殺に見せかけました。

「母親でいたい」が、ユキを死なせる計画になる

成長した武司は、三浦の教え子だった亀戸と結婚します。この女性がユキで、武司こそブログ主の七篠レンでした。大学生が調べた日記と、新聞記者が追った事件は、同じ家族の過去と現在だったんです。

ユキの妊娠を知った直美は、祖母になる自分に耐えがたい気持ちを抱きます。ユキがいなくなれば、生まれる子の母親として暮らせる。その願望を実行に移してしまいました。

助産師としてユキの出産に関わる直美は、サプリメントと偽った塩入りのカプセルを与え、高い血圧をさらに悪化させます。測定結果にも手を加え、危険な体調のまま出産に臨ませました。赤ん坊の優太は生まれ、ユキは命を落とします。

ユキの死には、孫を自分の子として育てようとした直美の意図的な介入があります。支えてくれるはずの義母と助産師が、同じ一人だった。ユキの孤立は、この関係だけでも息苦しく感じます。

出産から3年後、武司は妻の残した絵の意味を解きます。母の罪を知り、許せない気持ちと母を愛する気持ちを抱えたまま、自ら命を絶ちました。

最後の投稿がつらいのは、妻の無念を知っても、母への愛情が残っていることです。子どものころから守ってくれた母が、妻の命を奪っていた。武司にとって最も信じていた人と、罪を責める相手が重なったんですね。

結末は直美の逮捕へ――樹の絵の読み直しと、優太の焼きそば

直美・ユキ・武司・熊井それぞれの結末

熊井が自ら囮となり、逮捕のきっかけを作る

第二章で直美が刺した男の正体は、熊井です。直美の犯行を追っていた熊井は、自ら囮となって接近し、襲われる危険を引き受けていました。

直美は逮捕され、熊井は生きて病院へ運ばれます。息子と孫を守るという直美の言い分を、外から追い続ける人がいたんです。

文鳥を囲う枝は、外側へ尖っていた

少女時代の直美が描いたのが、冒頭から示されていた樹の絵でした。家、笑う少女、文鳥を囲う木。その枝先は、鋭く尖っています。

萩尾は当初、攻撃的な心の内側に、小さな命を守る優しさがあると考えていました。一連の事件を知ったあと、その関係を捉え直します。守る対象ができると、その外側にいる人を傷つけるために枝を尖らせるのかもしれない、と。

同じ絵でも、「優しさが攻撃性を和らげる」という期待が、「守る気持ちが攻撃を正当化する」という疑いに変わったんです。犯人を突き止めたあとに、最初の絵がもう一度怖くなります。

優太には、好みを聞いてくれる人たちが残る

入院中の熊井のもとには、ブログの謎を追っていた栗原が現れます。栗原はユキの死につながる情報と引き換えに、熊井に優太の面倒を見ることを求めました。熊井はその約束を引き受けます。

最後は、熊井と優太が米沢親子のバーベキューに招かれる場面です。友人の美羽は、優太が肉を苦手にしていることを父に伝えました。美羽の父は優太の好みに合わせ、焼きそばを作ることにします。

結末の考察:父の厳しいしつけと母の庇護に挟まれた武司の育ちを思うと、優太の好みが通る結末には、親が決めた生き方から離れる希望を感じます。あれだけ重い事件を経た物語の最後が、焼きそばを作ろうとする声なのがいいんですよね。

虐待や出産時の死が重なる、怖さの強い小説です

血のつながった家族からの虐待、出産時の死、自死、山中での激しい暴力がある作品です。謎解きの軽快さに引かれて読み始めると、人物の追い詰められ方に驚くかもしれません。

とくに、逃げ場を失った子どもや妊婦の立場がつらく響きます。気持ちが重くなるときは、読書を休めてもよいと思います。

5枚の絵の重なりを映像で追うなら、雨穴さんの公式動画

雨穴さんの公開動画『この絵の仕掛けが解けますか?「変な絵」第一章』です。

『変な絵』のネタバレでよくある質問

9枚の絵は、どう数えるのですか?

少女の絵が1枚、ユキの人物画が5枚、優太の絵が1枚、三浦と岩田の山の絵が各1枚で、合わせて9枚です。重ねてできる光景は、元の絵を組み合わせた結果にあたります。

「七篠レン 心の日記」は実際に読めますか?

「七篠レン 心の日記」はウェブ上で公開されています。日付や過去記事まで日記として作られた、小説につながるフィクションのブログです。昔の日常ブログそのものの見た目で、こういう手間にはつい感心してしまいます。怖いのに!

栗原の足のけがも、直美の仕業ですか?

病室の栗原は足にけがをしています。直美の犯行と結びつける読みは、読者の考察です。山での襲撃との似方から連想される説で、けがの原因には複数の解釈があります。

まとめ

『変な絵』で私に残ったのは、家族のためという言葉に、小さな声が押しつぶされていく怖さでした。線を重ねて謎が解ける面白さと、相手の望みを聞くことの難しさ。その両方を抱えたまま、優太のこれからを願いたくなる結末です。

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