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手紙(東野圭吾の小説)ネタバレ|結末で兄弟はどうなる?

手紙(東野圭吾の小説)ネタバレ|結末で兄弟はどうなる?

刑務所から月に一度届く、兄からの手紙。弟を気づかうその便りを、直貴はだんだん疎ましく感じるようになるんです。

『手紙』は、東野圭吾が2003年に発表した長編小説です。結末までのネタバレがあります。

『手紙』の結末は?刑務所の舞台で直貴の声が止まる

慰問コンサートで直貴が声を出せない終幕

原作のラストで、直貴は昔のバンド仲間・寺尾祐輔と刑務所の慰問コンサートに出演します。客席には、うつむいて胸の前で手を合わせる兄・剛志がいました。

直貴は「イマジン」を歌おうとして喉を詰まらせ、声を出せないまま原作の終幕を迎えます。

兄の強盗殺人で、直貴の進学と音楽の夢が変わる

剛志は弟の学費を盗もうとして人を殺す

両親を亡くした武島兄弟は、兄の剛志が働いて暮らしを支えていました。剛志は勉強のできる弟を大学へ進ませたかったのですが、身体を痛め、学費を工面できなくなります。

そこで狙ったのが、仕事で訪れたことのある緒方家です。金を盗んだ剛志は、直貴の好物だと思った天津甘栗まで持ち出そうとして、家にいた老婦人と鉢合わせしました。老婦人を殺害し、逮捕された剛志は刑務所に入ります。

一方の直貴も進学をいったん諦め、住み込みの仕事に就くことになります。兄の事件を知られるたびに、直貴は周囲から距離を置かれるようになるのです。

寺尾とのバンドは、直貴が自分で見つけた居場所だった

職場で出会った倉田の勉強する姿や、残された大学の通信教育の案内をきっかけに、直貴は働きながら学び始めます。その大学の仲間が寺尾でした。

寺尾はカラオケで直貴の歌声を聴き、バンドへ誘います。直貴が兄の犯罪を打ち明けても、仲間たちは歌う直貴を求めていました。寺尾、なかなか押しが強いです。でも、この強引さにはほっとしました!

直貴は「スペシウム」のボーカルとなり、練習とライブに夢中になります。やがて音楽レーベルから声がかかり、プロへの道が見えました。

ところが、レーベル側は殺人犯の弟である直貴の参加を問題にします。他のメンバーから脱退を求められ、直貴は仲間のデビューを妨げまいと身を引きました。

朝美との別れと、就職先で受ける差別

恋人との関係は、直貴自身の嘘でも傷つく

通信課程から通学課程へ移った直貴は、中条朝美と交際します。朝美は裕福な家の娘で、父親や親族は直貴との関係に反対しました。

直貴は兄のことを隠したまま、朝美との間に子どもができれば結婚を認めさせられると考え、避妊具に細工をします。それを朝美に知られ、二人の信頼も傷つきました。

この行動には、私は腹が立ちます。追い詰められた直貴が、今度は朝美の意思を押しのけてしまったからです。

朝美の父親は手切れ金を差し出し、娘との別れを迫ります。直貴は金を拒みましたが、最後は自分から朝美を突き放しました。

平野社長は、倉庫へ異動した直貴に会いに来る

大学を卒業した直貴は、新星電機に就職します。勤務する店で盗難事件が起き、その調査から兄の存在が周囲に知られました。同僚との関係が変わり、直貴は売り場から物流部へ異動になります。

倉庫にいる直貴を訪ねたのが、社長の平野です。平野は、人が犯罪から遠ざかろうとして、犯罪者の身内にも距離を置くことを自己防衛として説明します。さらに、罪を犯せば家族も苦しむ、その苦しみまで兄が自覚するべきだと語りました。

読んでいる私も口を挟みたくなります。社長、相談する側の心臓も少しは気づかってほしいところです。

平野は同時に、人とのつながりを少しずつ築く道を示します。そして、直貴を助けてほしいと訴える一通の手紙を見せました。差出人は、直貴を以前から支えてきた白石由実子です。

由実子と娘を守るため、直貴は絶縁を決める

娘への差別と被害から絶縁と転居に至る流れ

兄への返事を代わりに書いていた由実子

由実子のもとを訪れた直貴は、そこに届いていた剛志からの手紙を見つけます。由実子は直貴のふりをして、兄と文通を続けていたのでした。

兄から離れたがっていた直貴は怒ります。しかし、由実子にも父親の借金や自己破産で苦しみ、家族とのつながりを失った過去がありました。兄弟まで離ればなれになることを、彼女は恐れていたんです。

直貴は由実子の思いを知り、やがて二人は結婚します。娘の実紀も生まれ、社宅で親子三人の生活が始まりました。

娘の仲間外れと、ひったくり事件が決断を促す

穏やかな暮らしは、兄の事情を知る先輩・町谷が近所に越してきたことで変わります。噂が広まり、実紀は公園などで他の子と遊べなくなりました。直貴と由実子は、その土地で踏ん張ろうとします。

そんなとき、由実子と実紀が乗る自転車がひったくりに遭い、転倒しました。実紀は頭を打ち、一命を取り留めますが額に傷が残ります。娘がけがをするこの事件で、直貴は犯罪の被害を受けた家族の立場にもなります。

逮捕されたひったくり犯の両親が、謝罪に訪れました。直貴は二人が頭を下げに来たことを重く受け止めます。同時に、娘の傷を思うと、その両親を前にしても怒りが湧きました。

そこで思い至るのが、自分は兄の被害者の遺族に、きちんと謝罪できずにいたという事実です。直貴は一度、緒方家まで行きながら、遺族の姿を見て立ち去っていました。

直貴は剛志へ、今後の郵便を受け取らず、出所後も家族に関わってほしくないと手紙を書きます。自分たちの苦しみを兄に知らせることも、兄が罪と向き合うためだと考えたのです。

直貴が絶縁で守ろうとしたのは、由実子と実紀の現在と将来でした。退職届も出し、遠くへ転居して小さな電器店で働き始めます。

緒方忠夫が見せた、剛志からの最後の手紙

剛志の最後の手紙を忠夫が直貴に見せる関係

新しい暮らしを始めた直貴のもとに、寺尾が訪れます。剛志のいる刑務所で慰問コンサートをするという誘いでした。

直貴は緒方家を訪ね、被害者の息子・忠夫と対面します。忠夫が見せたのは、剛志から毎月送られてきた手紙の束でした。

剛志は謝罪の中に、直貴の近況も書いていました。母を奪われた忠夫には、加害者が弟の暮らしを語る便りが苦痛だったのです。忠夫は、手紙に返事をせずにいました。

その忠夫が、事件に区切りをつけようと決心したきっかけが、剛志の最後の手紙です。

剛志は直貴の絶縁状を受け取り、自分の存在が弟を長年苦しめてきたことに気づきました。忠夫への謝罪では、自分の手紙が遺族にも苦痛を与えてきたと認めます。

直貴は示された手紙を読み、胸を揺さぶられます。兄は文通の中止を告げますが、直貴の中には、その便りを受け取りながら必死に生きてきた歳月があるんです。

この対面を経て、直貴は寺尾の誘いに応じることを決めました。

結末の考察――兄弟の情と、遺族の苦痛

直貴は兄を許したのか

私は、家族を守る決意と兄への情が、直貴の中に同時にある結末だと読みました。会う覚悟を決めた直貴にも、目の前の兄を見たときの反応までは準備できなかったのでしょう。

平野の言葉と忠夫の決心を、どう受け止めるか

平野の発言には、私は強い抵抗を覚えます。家族を苦しめることで犯罪者に罪の重さを教えるという考えでは、実紀の遊ぶ時間まで罰に使われてしまうからです。あの子が公園で背負わされたものの理不尽さは、直貴が父親になっていく流れの中で、いっそう生々しく感じました。

忠夫については、自分の暮らしを事件から取り戻そうとする決心だったと受け止めています。母親への思いを抱えた彼にも、これからの日々があります。兄弟の感動だけで読み終えようとすると、この人の時間が気になるんですよね。

読後に「イマジン」を聴き、小説を読み返すなら

「イマジン」は、国や宗教、所有などで人が隔てられる世界に、平和に生きる姿を想像するよう呼びかける歌です。私は、差別に向き合って疲れ切った直貴と、この歌の穏やかな願いの距離に切なさを感じます。

ジョン・レノン公式チャンネルの「イマジン」です。

読み返すなら、剛志が弟の幸せを喜ぶ便りと、直貴が兄へ近況を知らせなくなる時期が気になります。夢や恋人を失ったとき、自分なら、あの兄に何を書けるでしょうか。

原作の文庫本は、文春文庫『手紙』の書籍ページから書店の取り扱いへ進めます。読み直す一冊を探すとき、同じ題名の本が多いのは地味に困るところ。著者名は東野圭吾、ISBNは978-4-16-711011-6です。

FAQ

原作小説は何巻ありますか?

文春文庫版は全432ページに、本編を1冊で収めています。

『手紙』は直木賞の受賞作ですか?

『手紙』は第129回直木賞の候補作です。東野圭吾が第134回で受賞した作品は『容疑者Xの献身』でした。

まとめ

『手紙』の兄弟から感じるのは、家族を思う行動にも、相手を追い詰める怖さがあるということです。守りたい人がいるときほど、誰の気持ちを置き去りにしているのかが見えなくなる。私はあの兄弟を遠くの人として眺めていられません。

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